熊農場
熊農場(くまのうじょう)とは、クマを家畜として養殖する畜産場。中国などアジアにある熊胆採取、又は胆汁採取を目的としたものがしられる。日本などの「クマ牧場」とは異なり、動物園ではない。
中国の熊農場
中国などでは古来よりクマの胆汁が漢方薬として重宝されており、この胆汁をとる目的で1980年代から、熊の飼育を行う農場(Bear farm、bear bile farm)が開設された。熊農場とクマの胆汁を採取する技術は、北朝鮮より中国北部の吉林省へ1980年代初期に導入され、黒龍江省、遼寧省、四川省および雲南省へと急速に広がったという[1]。
動物園である日本の「クマ牧場」とは異なり、これは胆汁を採取する為の畜産であり、熊胆の製薬会社では養殖しているクマからカテーテルなどで胆汁を繰り返し採取し、熊胆商品の原材料としている。中国国家林業局の統計によると、漢方薬メーカーなど68社が熊農場を運営している[2][3](動物園施設が併設され、観光ルートになっていることもある)。
熊農場には1万頭以上のクマが養殖されていたが、2007年現在、徐々に減っているという[4]。
中国国内でも「熊農場」(熊胆農場)は、熊胆に対する文化が関係するため賛否があるが、実態は生産量の約9割を外国(韓国・日本)に輸出する供給国となっている面もある。
韓国の熊農場
韓国政府が、熊胆や革などによる農家の所得増大の為、熊を飼うことを推奨したのがきっかけで[5]、中国、日本および東南アジアからクマを輸入し、そのクマを繁殖させて他の国に輸出することを目的とする繁殖事業が1980年代に始まった。しかし、輸出に関する長期計画がなかったために、5年間に輸入された500頭のクマは韓国内部に分散してしまった。2006年には、国際的なクマの輸入と移送を禁止する厳しい法律と規制ができ、人工繁殖で生まれた2000頭のクマが、約100ヶ所の繁殖施設で育てられていた。[6]
2012年現在、韓国で飼育されている熊は約1000頭、全国の約50ヵ所でクマが飼育されているという[5]。
東南アジアの熊農場
ベトナムでは2005年にクマ製品の商業取引を禁止し、熊農場も禁止となったが、2007年現在もベトナム国内で少なくとも4000頭が捕獲され、おりに入れられたままになっており、クマの胆汁抽出が続けられているという[7][8][9]。
脚注
- ^ 第13章 中国のクマ類の現状 「アジアのクマ達-その現状と未来-」 日本クマネットワーク著、2007年、ISBN :4-9903230-1-7
- ^ クマの胆汁採取、中国で論争 朝日新聞デジタル、2012年2月24日
- ^ チャイナ・なう「クマの胆汁採取事件」 TOKYO MX 「チェックタイム」、2012年4月10日放送
- ^ 残虐な「熊牧場」をなくそうIFAW(動物愛護団体) - 牧場と農場を訳し間違えた例でもある。
- ^ a b 私は「死刑囚」の熊です東亜日報 2012年7月21日
- ^ 第14 章 朝鮮(韓)半島におけるクマ類の現状とツキノワグマの回復計画「アジアのクマ達-その現状と未来-」,日本クマネットワーク,2007,ISBN 9784990323011
- ^ ベトナムのクマを救え、残虐な違法取引阻止を目指すセンター開設 AFPBB News、2007年10月5日
- ^ 胆汁抽出用の飼育施設からクマ救出、ベトナム AFPBB News、2010年1月19日
- ^ 第8章 ベトナムにおけるクマ類の生息状況と保全 「アジアのクマ達-その現状と未来-」 日本クマネットワーク著、2007年、ISBN :4-9903230-1-7