エル・カンターレ
概要
エル・カンターレ(El Cantare)とは、幸福の科学の本尊。幸福の科学ではこの用語は「うるわしき光の国、地球」という意味を持つ。また、幸福の科学の教義ではエル・カンターレの本体部分[1]が地上に下生したのが、大川隆法とされていることから、幸福の科学総裁の大川隆法のことも示す[2]。幸福の科学の信者は、エル・カンターレを体現した「現成の仏陀(悟りたる者)」であるとして大川隆法を信仰している。 祈りの言葉では「主エル・カンターレ」という呼称が用いられる[3]。
大川隆法は、最初の「御生誕祭」(1991年7月15日、東京ドーム)において自身がエル・カンターレであると宣言し[4]、自らが地上に降りて法を説く使命、全人類を救済し、新文明を建設する等の大乗の仏陀の使命を宣言した。この時の東京ドーム「御生誕祭」の集会の内容はテレビなどを通じて報道され[4]、「エル・カンターレ」という用語が一般にも知られるようになった[4]。また、その名を冠した「エル・カンターレ祭」という祭典が、1991年より毎年東京ドームなどで行なわれて、これもテレビなどを通じて報道されている。(次節「エル・カンターレ祭」参照)教団は、こうしたマスコミの影響力を利用して信仰対象の名称を知らしめるのに成功し急成長の一因となるとともに世間一般に対し挑発的な行動としてとらえられた[5]。
教義に基づく解説
幸福の科学の教義では、地球系霊団の最高大霊はエル・カンターレとされ、地球を中心にする霊系団においては、地上界に人類として生まれうる最高霊は、九次元宇宙界の九次元霊までであり(十次元霊は惑星意識)、エル・カンターレは10体の九次元霊の中で最高神であるとされる。地球を統べる九次元霊であるエル・カンターレは、多次元宇宙や人類の魂を創造した根本仏(造物主のような概念)であるエル・カンターレと一体のものであり、天上界にあっては神々の神、至高神であって、地上に送られた救世主たちを指導するとされる。例えば、イエス・キリストが、約2000年前に「わが父(アパ)」と呼んだ存在はエル・カンターレであり、旧約聖書において「エロヒム」として預言者たちを指導したという。また仏教においては華厳経に説かれる毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)を、より本源的存在とした大毘盧遮那仏という名の仏であるとされ[6]、奈良県の東大寺盧舎那仏像を指すという[7]。
エル・カンターレ意識の一部はインドに釈迦として生まれ、古代ギリシアではヘルメスとして生まれるなどした[8]。すなわち、過去において、エル・カンターレ意識の一部(分身)が、
として下生したとする。これら6回の転生を明らかにしたことは、ゴータマ・シッダールタ(釈迦)時代に説かれた、「過去七仏」の先例に符合している。
日本に降臨した大川隆法は、新文明建設、全人類救済のためにエル・カンターレ意識の本体部分が地上に下生した存在であるとされる[10]。エル・カンターレ意識の本体部分が地上に下生したのは1億5千万年ぶりで3度目であり、今後再び本体部分が地上に降臨することはないとされる[11]。なお、4度目の本体意識降臨について述べた東京正心館での法話もある。それによると、地球人類が滅亡する際の幕引きのための降臨だという。
幸福の科学では、単純な一神教信仰ではなく、またフラットな形の多神教でもない。「多様な価値観を包摂しながらも、融合させ調和させてゆく」という立場をとっている。「霊天上界には、神格、つまり高級神霊としての格を持った人が大勢いる」というのが事実であるとし、「神は一人だけ、あと他は全部間違いだ」という考えは明らかに事実に反するとしている。またその「格」の高低の違いについても「どれだけ多様な人々を救い・導きうるか」によって格付けが成されるとしている。そして至高神エル・カンターレの教えによって宗教間の対立問題は解決し、お互いの融和をもたらすことになるとしている[12] [13]。
大川の著書『太陽の法』(幸福の科学出版刊)の第1章8節によれば、「エル・カンターレ」とは、約6億5000年前に金星から地球に移住したエル・ミオーレが、約4億年前に改名したときからの名前であり、その意味は、「うるわしき光の国、地球」である[14]。「エル」は霊界において「光」を意味する言葉で、「カンターレ」は、霊界において「地球」という意味で使われてきた言葉であるとしている。また第6章11節によれば、エル・カンターレの使命は「仏法の流布による一切の衆生の救済」であり、愛と慈悲、信仰を象徴する阿弥陀如来的側面(救世主的部分)と、悟りと修行、霊界の秘義を象徴する大日如来的側面(仏陀の本質的側面)を役割として併せ持つ「釈迦大如来」がエル・カンターレであるとされる。前者が先鋭化すれば「大救世主」であり、後者が象徴化されると華厳経や大日経でいう毘盧遮那仏の本源的存在である「大毘慮遮那仏」であるという。
幸福の科学の教義では、エル・カンターレ意識は、「光の大指導霊」の頂点に立つ仏(人格神でもある)として、「仏の七色光線」の根源となる存在とされている。光の大指導霊とは、九次元大霊(地球系霊団の最上段階にあたる九次元宇宙界という世界にいる霊)と呼ばれる存在で、以下の10名で構成されるとする[15]。
- エル・カンターレ(ヘルメス、釈迦、トート(アトランティスのトス))
- アモール(イエス・キリスト、クリシュナ[16])
- セラビム(孔子、オシリス[17])
- アケメーネ(マヌ)
- オルゴン(マイトレーヤー如来(弥勒菩薩とは別人)、インドラ[18])
- カイトロン(アルキメデス、ニュートン、クートフーミ)
- セオリヤ(ゼウス)
- サマトリヤ(ゾロアスター、マニ)
- モーリヤ(モーセ)
- エンリル(エンリル、サナト・クマーラ)
大川の著書『愛、無限』によれば、エル・カンターレ意識を中心に、右下にイエスの意識やゾロアスターという魂があり、左下に孔子、マヌ、マイトレーヤー、ゼウスといった魂があるとされる。エル・カンターレの魂を地上の人間が肉眼で見たとしたら、直径10kmほどの円盤状の大きな黄金色の光に見えるという。
仏陀の黄金光線(教義では「神」の光)は、以下の七色に分けられる。
- 黄色:真理の体系、法の光線。仏教系統など。
- 白色:愛の光線。イエス・キリストの系統、医療など。
- 赤色:リーダーシップを司る光線。政治・軍事など。
- 青色:思想、思考の抽象性などを司る光線。哲学など。
- 緑色:自然、環境、大調和を司る光線。老荘思想の無為自然の道など。
- 紫色:秩序、慣習、儀式、道徳などを司る光線。孔子の系統、神道系など。
- 銀色:物理、医学、数学、化学などの科学を司る光線。
ここでの「色」という言葉は、絵具の色や照明の光の色のことを指しているわけではなく、霊的な意味合いで使用しているという。
『宗教選択の時代』第6章3節では、旧約聖書に出てくるエロヒム(エローヒム)を、エル・カンターレのことであるとしている。また、ヘルメスが、エジプトにおいてトート神(アトランティスのトス)と習合したヘルメス・トリスメギストス(三倍偉大なヘルメス)とは、エル・カンターレの本体のことを指すとしている。
エル・カンターレ祭
この信仰の本尊の名を冠した「エル・カンターレ祭」という祭典が、毎年12月に教団にて挙行されている。7月の「御生誕祭」と合わせて二大祭典とされている。この祭典の目的は、主エル・カンターレに1年間の感謝をささげるという名目であるが、この時に行われる大川隆法の法話が、その1年の世情の総括と翌年の予言的情報を含み、これを目当てに会員・信者以外の参加者もある[19]。
第一回目は1991年12月26日東京ドームで行われ、「新世界建設」の題名で大川隆法の法話が話された。この時は多くの報道陣が取材に訪れ、この内容は翌日12月27日のテレビの朝のワイドショー等で放映された[20]。
この祭典は毎年行われており、2012年では12月5日東京国際フォーラムにて、法話「地球的正義とは何か」の内容で行われ[21][22][23][24]、その後全国各地のテレビ・ラジオで放送された[25][26]。
東京ドームで行われた祭典「エル・カンターレ祭」と「御生誕祭」は、現在まで10回あるが、このうち7回にて、霊天上界でのエル・カンターレの姿を再現するとして、総裁 大川隆法は特殊な法衣をまとった姿で現れ、講演・法話を行った[27]。この法衣姿の一部が後の「エル・カンターレ像」の原型となった。
エル・カンターレ像
宗教法人・幸福の科学では、信仰の対象であるエル・カンターレを象徴するものとして代理本尊を設けている。代理本尊にはエル・カンターレ像や家庭用本尊等がある。1997年1月1日には、総本山・正心館でエル・カンターレ像の開眼式が執り行われた。さらに、大悟記念日の1981年3月23日から数えて7777日目にあたる2002年7月7日には、総本山・正心館の礼拝堂に「大エル・カンターレ像」が開眼した。家庭用本尊は、1992年12月以降、一部の信者に下賜されている[28]。家庭用本尊には、幾つかの形と大小のサイズがあり、3万円から100万円[29]などのお布施奉納目安で下賜されている。家庭用の「布教所エル・カンターレ像」も下賜されている[30]。この像の原型は、1992年7月東京ドーム「御生誕祭」での総裁 大川隆法の法衣姿である。
他宗教での「エル・カンターレ」
宗教社会学の沼田健哉の研究によると「エル・カンターレ」の用語の使用は、幸福の科学が発足するより10年以上前のことで、GLA創始者の高橋信次が、1976年の3月21-23日、和歌山での講演『魂の仕組みと正法』において「釈迦の生命体」の名称として用いた[31]。 しかし高橋は、その直後「エル」の部分を外して「カンターレ」との呼称に替えている。ただし「エル・カンターレの土地」「エル・カンターレの居る所」を意味する「'エル・カンタラー」(語尾の変化形)では、「エル」の部分を外さずにそのまま用いていた。この流れから、GLA系諸教団の幾つかで「エル・カンターレ」の用語を用いていた[32][33]が、その内容・意味する事柄は、それぞれ異なっている[34]。
1997年(平成9年)8月22日に、幸福の科学は「エル・カンターレ(El Cantare )」を商標登録しているため、この時期以降、他の宗教では公にこの用語を使用できなくなっている。
参考文献
- 『ポストモダンの新宗教―現代日本の精神状況の底流』島薗進 著、東京堂出版、2001年9月、ISBN 978-4490204476
- 『宗教と科学のネオパラダイム』沼田健哉 著、創元社、1995年1月20日発行、ISBN 4-422-14019-1
- 『現代日本の新宗教―情報化社会における神々の再生』沼田健哉 著、創元社、1988年1月、ISBN 978-4422140155
- 『大川隆法大救世主仮説』栫井 邦彦 著、出版社:トラ研、2011年11月3日発刊、ISBN 978-4904176030
- 『太陽の法 ―エル・カンターレへの道』(大川隆法著、幸福の科学出版、1997年7月)ISBN 4-87688-321-1
- 『黄金の法 ―エル・カンターレの歴史観』(大川隆法著、幸福の科学出版、1997年7月) ISBN 4-87688-322-X
- 『永遠の法 ―エル・カンターレの世界観』(大川隆法著、幸福の科学出版、1997年7月)ISBN 4-87688-320-3
- 『宗教選択の時代』(大川隆法著、幸福の科学出版、1995年1月)ISBN 4-87688-229-0
- 『愛、無限』(大川隆法著、宗教法人幸福の科学経典部、1996年9月)ISBN 4-87753-000-2
関連項目
- 幸福の科学は「エル・カンターレ(El Cantare )」を商標登録している。
脚注
- ^ 本体部分 - 幸福の科学の教義では、人間の心の構造として、過去世の魂とあわせて6世(6回分の転生輪廻)の魂で1個の人間の心を構成してるとしている。その6世のなかで全体を統括している中核部分を「本体」としている。
- ^ 沼田健哉『宗教と科学のネオパラダイム』創元社、1995年、195、235頁。ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 『宗教と科学のネオパラダイム』沼田健哉 著、創元社、1995年1月20日発行、ISBN 4-422-14019-1。
- ^ a b c 沼田健哉『宗教と科学のネオパラダイム』創元社、1995年、196頁。ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 島薗進『ポストモダンの新宗教―現代日本の精神状況の底流』東京堂出版、2001年、230頁。ISBN 978-4490204476。
- ^ 大毘盧遮那仏、『太陽の法』より
- ^ 沼田健哉『宗教と科学のネオパラダイム』創元社、1995年、202、235頁。ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 島薗進『ポストモダンの新宗教―現代日本の精神状況の底流』東京堂出版、2001年、207頁。ISBN 978-4490204476。
- ^ 沼田健哉『宗教と科学のネオパラダイム』創元社、1995年、206頁。ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 沼田健哉『宗教と科学のネオパラダイム』創元社、1995年、235頁。ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 経典『黄金の法』で著者の大川は約2800年後に再び下生すると予言しているが、それはエル・カンターレ意識の分身であると解釈される。簡単に説明すれば、幸福の科学の理論においては、人の魂は一個体で生まれ変わるのではなく、特に九次元霊(人間の霊界で最高位の次元の霊)のような巨大な意識体では、意識体全部が人体に宿ることはなく、意識体を分割した一部が魂として人体に宿り、地上に誕生すると考える。大川隆法は、釈迦やヘルメス等の魂として分割して生まれた、元の意識体と同一意識体であり、その同一意識体の中心の存在とされている。また、経典『悟りの極致とは何か』によれば、本体意識は「もはや人間の姿をとって出ることはない」としている。
- ^ 『救世の法』p157
- ^ 島薗進『ポストモダンの新宗教―現代日本の精神状況の底流』東京堂出版、2001年、210 - 215頁。ISBN 978-4490204476。
- ^ 大川隆法『太陽の法』(幸福の科学出版刊)55ページ
- ^ 沼田健哉『宗教と科学のネオパラダイム』創元社、1995年、208 - 209項、215項頁。ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 大川隆法『黄金の法』(幸福の科学出版刊)
- ^ 大川隆法『永遠の法』(幸福の科学出版刊)。アトランティスにおける指導者であり、のちにエジプトで信仰されたとされる。
- ^ 大川隆法『宗教の挑戦』(幸福の科学出版刊)
- ^ 『宗教と科学のネオパラダイム』沼田健哉 著、創元社、1995年1月20日発行、ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 1991年12月27日、フジテレビ - おはよう!ナイスデイ、TBSテレビ - 「モーニングEye」等で放送された。
- ^ 獏 論 [幸福の科学アラカルト
- ^ NEWSポストセブン|幸福の科学最大のイベントは全世界3500か所に衛星中継された
- ^ 月刊雑誌『SAPIO』2013年3月号、小学館、p108
- ^ エル・カンターレ祭大講演会「地球的正義とは何か」レポート | 幸福の科学 Happy Science 公式サイト
- ^ 2012年「エル・カンターレ祭」の放送、テレビ - 岐阜放送 12月22日、テレビ和歌山 2013年1月26日、三重テレビ放送 2013年1月28日、群馬テレビ 2013年1月27日。ラジオ - ラジオ福島 2012年12月29日、エフエム京都12月30日、和歌山放送12月30日、ラジオ大阪12月31日。
- ^ 「地球的正義とは何か」がテレビ・ラジオ放送 | 幸福の科学 Happy Science 公式サイト
- ^ 『宗教と科学のネオパラダイム』沼田健哉 著、創元社、1995年1月20日発行、ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 『宗教と科学のネオパラダイム』沼田健哉 著、創元社、1995年1月20日発行、ISBN 4-422-14019-1。
- ^ 「宗教とカネ」『週刊ダイヤモンド』第98巻第46号、ダイヤモンド社、2010年11月13日、28-101頁、2013年3月23日閲覧。
- ^ 獏 論 幸福の科学アラカルト エル・カンターレ像(家庭用)
- ^ 沼田健哉『現代日本の新宗教―情報化社会における神々の再生』創元社、1988年。ISBN 978-4422140155。
- ^ 松本泰徳『天上の光 地上の愛』文芸社、1999年。ISBN 4-88737-262-0。
- ^ 千乃裕子『天国の扉』ジェイアイ出版、1977年、49頁。
- ^ 沼田健哉『現代日本の新宗教―情報化社会における神々の再生』創元社、1988年。ISBN 978-4422140155。
- ^ 高橋信次『心の発見〔神理篇〕』(三宝出版刊)
- ^ 高橋信次の講演「新復活」(1976年(昭和51年)6月4日)」