ゼルボーニ音楽出版社
略歴
1907年にフランツ・レハールのオペレッタを販売するために出来上がった。ドナトーニ、ダッラピッコラ、ベリオ、カスティリオーニ、クレメンティ、デル・コルノ、タッカーニ、モスカなど20世紀のイタリア現代音楽がまとめてここから出版され、イタリアの拠点として君臨している。現代音楽を出版することには難色を示していたフランスやドイツの出版社よりもとにかく積極的に版権を取得し、安価で入手が可能にした功績は今も尚大きい。松平頼則がイタリアの国際作曲コンクールに入賞したのがきっかけとなり、下山一二三、伊東英直、松平頼暁、松平頼則、南広明の作品も出版する事が可能だった。またダッラピッコラ作曲賞の副賞が楽譜出版であり、西村朗のオーケストラ作品もここから販売された。
順風満帆か、と思われていた1970年代末頃イタリアが経済破綻を迎え、楽譜出版社は多くの作曲家との契約を破棄しなければならなくなった。ゼルボーニ社は断腸の思いで、多くの作曲家の新規契約を打ち切り、確実に収益の上がる作曲家のみを販売しなければならなかった事があった。これが「ゼルボーニ内紛」と呼ばれるスキャンダルだった。ライバルのリコルディ社は、まっていたとばかりに打ち切られた作曲家たちを救済した。この打ち切りでドナトーニがリコルディへ移籍したことは特に有名である。
2000年前後に、今度はリコルディがゼルボーニと同じように若手作曲家の版権取得に躍起になっている頃経営破綻を迎え、リコルディにいた作曲家がゼルボーニに救済を求めるという全く逆の結果を迎えた。この打ち切りでステファーノ・ジェルヴァゾーニがゼルボーニへ移籍。
現在も多くの軋轢を乗り越え、なんとか多くの作曲家を抱えることには成功している。また、楽譜出版だけではなく、「現代のハープ(Bova)」、「16世紀の対位法(Zanolini)」、「バッハ時代の対位法(Zanolini)」、「木管楽器の新しい音(Bartolozzi)」などの教科書、理論書の販売も世界各国から評価が高い。マリー・シェーファーやパウル・ヒンデミットの著書もゼルボーニから翻訳出版された。「国際作曲コンクールの副賞」(最近はcamillo togniコンクールがそうしている)としての楽譜出版も未だに途絶えていない。
参考文献
- ExMusica vol.0;musicscape発行;192-193ページ