アルダの巨大水棲生物たち
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本項では、ファンタジー作家J・R・R・トールキンの作品世界中つ国における地球、アルダの海洋に棲息する巨大な生物たちを紹介する。
概要
広大なアルダには非常に多くの動物や怪物たちが棲息しており、特に中つ国の外に悠々と広がる大洋 (Ekkaia[1])や湖沼、河川などには自由の民の到達できる圏外の部分も多く、未発見であったりほとんどの自由の民に知られることなく記録にも残らない存在が跋扈していたとされている。それらの中には、自由の民や善無垢なる者らへの害や脅威となりうる者々とそうでない者々が数多く混在していた。[2]原著にて記述が見られるのは数が少なく、以下はそれら特異な者らの中でも巨大な部類であったとされる生物群の一部を列挙したものである。
ウイン (Uin)
『Legendarium』初期稿および『Roverandom』に見られるクジラの神獣であり[3]、「鯨の祖」/「原初の鯨」または「グルマ(=ウルモ)の巨鯨」とされる巨大なセミクジラ[4]。ウルモの使役として様々な場面で活躍をしており、ウルモの乗る海上・海中航行用のソリの牽引役や要人の運搬者である。そのほか、トル・エレッセア(Tol Eressëa) の島を 大洋 Belegaer を渡り、不死の国として知られるアマンの首都ヴァリノールの沖まで運ぶ大役も担うなど、ウルモの被造物の中でも特に重要な存在であったことが見受けられる[5][6]。Uin とは、Gnomish Lexicon において「鯨」を意味する語であるが元は「波」の意であり、「鯨」を指す本来の単語は Uimoth (“波の羊”)である。"moth" は「羊」または「1,000」の意であるが、元は「群れ」の意であると思われる。[3]Uin 自身はマイアであるかは不明であるが、たとえば大鷲族のように、非人間型ながらもマイアの可能性が疑われる存在は中つ国上に多数見られる。
亀魚(Turtle-Fish)
とほうもない大きさを持つカメであり[2]、ほとんどの時間を海上に浮かんでいるという。その際、体の上部のみを水上に出して静止しており、またその大きさと様相から一見すると島に見えるため、知らずに陸地を求めて上陸した者らは後に災禍に見舞われるという。この種の最後の個体は Fastitocalon と名付けられ<[2]、これを詠った同名の一詩が『トム・ボンバディルの冒険』やビルボ・バギンズが記した「西境の赤表紙本」にも収録されている(詳細は英語版を参照)。これらの大亀がウルモの被造物であったか否かは判明していない。また、Fastitocalon と呼ばれる中つ国の神話に登場する巨大生物が本当に島亀であったという確証もないとされている。なお、中つ国世界において Fastitocalon の名は、上古のエルフ語にて「丸い盾/うろこを持つ亀」を意味する Aspido-chelōne [8] から派生した Astitocalon というシャイア・スピーチ[9]に由来する。[10]
おぞましい亀/フェル・タートル (Fell Turtles/ Festitycelyn)
上記の島亀の別呼称として扱われることがあるが、二次創作物に登場する存在であり[11][12]、体長は15.2m(50フィート)程度、海洋のほか大河や湖などにも棲息するとされる[2]。呼称の一つにつく「Fell」という表現は、ナズグルの騎乗の一であるおぞましい獣 (Fell-Beast) のと共通するものであり、これらの亀も危険な存在として見られていた。
龍の属であり、エルフ語の文献にのみ記録されている存在[13]。生態や出自のほとんど全てが謎に満ちた種族であり、モルゴスの被造物であったと明確に証明する資料、および グラウルング の子孫であったという証拠も存在しない。そのため、厳密な姿や能力、どれだけの眷属・種類がいたのかも判明していない。なお、上記の「島亀」や下記の「水中の監視者」もこれらと混同されたり関わりがあったのではないかとする説もある。また、仮にこれらが冥王の被造物であったとしても、一般的な龍やバルログなどの怪物を含まない闇の怪物の軍勢 Úvanimor には水上での活動を思わせる描写は登場していないため、これらに水龍たちが含まれたかは不明。原著における中つ国の正史に深くかかわることはないが、Middle-earth Role Playing などの二次創作物では普遍的に見られる存在である。
- 二次創作物では、主に大小二種類に類別される。 Aelinilóke または Rain-drakes (Lake-worms) と呼ばれる、淡水の湖沼のみに棲息する小型の者々と Lingwilóke または True Water-drakes (シーサーペント) と呼ばれ[11]淡水海水に分け隔てなく蔓延る大型の海龍である。「たての湖」にいた Séahmatha[15] という個体がとくに著名であった。[16]咥内に複数の歯列を持ち、六枚の鋭い爪をそなえた鰭があり、ソナーのような機能と獲物の弱点を探る機能を持つ臓器を持つという。攻撃は細長い体を使った締め付けや噛み付き、尻尾の一撃のほか、ウォーターボルトという名の強い水流を吐きつけたり、20ノットの速さながら音を立てない隠密水泳が出来るのでその衝撃を攻撃に使ったり出来る。そのほか、サンゴ礁の間や洞窟内をすり抜けられるように体を細めたりもできるが、強い陽光や火(松明を含む)、混乱や麻痺させられる攻撃などを嫌い、浅瀬にはめったに近づかず日中の行動も避けるという。
水中の監視者 (Watcher in the water)
多数の触手と牙を持つ怪物で、詳細不明の時期ににびしろ川 (Greyflood/ Hoarwell)、別名ミスエイセル(Mitheithel) を遡上しシランノン(Sirannon) または 門の川 (Gate-stream) に侵入、その後モリアの西門周辺に何者かによって造られたダム湖に定着した。 第三紀にドワーフ族のオインの命を奪い、一つの指輪の運搬をしていた旅の仲間が遭遇したことでも有名。この怪物の出自や指輪戦争以後の動向は確認されていない。なお、ピーター・ジャクソン監督による実写映像作品『ロード・オブ・ザ・リングシリーズ』・「二つの塔」のコンセプト[17]およびホビット[18]にても触れられた、中つ国史上最も謎に満ちた古き存在[19]の一つである「名前も持たぬ者たち」(Nameless Things)の一部[20][21]、は、この水中の監視者に似たような姿をしていたのではないかとされ、水中の監視者もこれらの一種である可能性が挙げられている。なお、記録上では最後のバルログである「ドゥリンの禍」は、モリアの坑内に縦横無尽に走る、これら謎の者々が造ったとされるトンネルの数々を熟知しており、坑内から外に出ようとバルログがトンネルを使った際に交戦中であったガンダルフも尾行したのでモリアの坑から脱出できた。
脚注
- ^ 「取り囲む海」や「外の海(大洋)」とも呼ばれる。
- ^ a b c d J.R.R.トールキン, 『トム・ボンバディルの冒険』, 「Fastitocalon」, 2014年12月10日閲覧
- ^ a b J.R.R.トールキン, 1983, 『失われし物語』第一部一章, 2014年12月6日閲覧
- ^ J.R.R.トールキン, Christina Scul, Wayne G. Hammond, 『Roverandom』第四章, 2014年12月10日閲覧
- ^ ウルモと共同で島を運んだとする文献とウインだけでやり遂げたとする文献が存在するが、島を海床から切り離す際にウルモが力を発揮したことは判明している。
- ^ a b Drout.C.D.M., 2006, 『J.R.R.Tolkien Encyclopedia: Scholarship and Critical Assessment』, 73項, 2014年12月6日閲覧
- ^ J.R.R.トールキン, クリストファー・トールキン, 1983, 『失われし物語』第二部四章, 第154項「The Fall of Gondolin」, 2014年12月10日閲覧
- ^ ギリシャ語に由来する。
- ^ この場合、ホビット庄で使われる言語であり英語に由来する。
- ^ a b J.R.R. トールキン, Humphrey Carpenter, クリストファー・トールキン, 『The Letters of J.R.R. Tolkien』, Letter 255 および 「Letter to Eileen Elgar」, 2014年12月10日閲覧
- ^ a b Ruth Sochard Pitt, Jeff O'Hare, Peter C. Fenlon, Jr., 1994, 「Creatures of Middle-earth」第二版, 2014年12月10日閲覧
- ^ Randy Maxwell, 1997, 「The Northern Waste」, 2014年12月10日閲覧
- ^ a b J.R.R.トールキン, クリストファー・トールキン, 1983, 『The Lost Road and Other Writings』第三部, 第370項「The Etymologies」, 2014年12月10日閲覧
- ^ シンダリン語では「lhimlug」。
- ^ 北方人の言葉で「湖の大蛇」を意味する。
- ^ Zachariah Woolf, 1995, Lake-town (#2016), 第121-128項. 2014年12月10日閲覧
- ^ ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(アートブック), 2014年12月10日閲覧
- ^ ゴブリン町にゴブリンたちが住み着く以前の居住者として「Nameless Things」の一派が言及されている。
- ^ 少なくともサウロンよりも古く、トム・ボンバディルやウンゴリアントなどといった存在と同種族の可能性もあると言われる。
- ^ 「名前も持たぬ者たち」の正体は依然として謎になっており、その姿・種族も多様なものであったとされている。彼らの誕生はアイヌアの唱の一部に組み込まれていた可能性がある。
- ^ J.R.R.トールキン, クリストファー・トールキン, 1983, 『シルマリルの物語』「アイヌダーレ:アイヌアのうた」, 2014年12月10日閲覧