高マグネシウム血症
高マグネシウム血症(こうまぐねしうむけっしょう)は腎不全患者がマグネシウムを含む胃腸薬や便秘薬を摂取している場合に発症することがある。血中のマグネシウム濃度が上昇する電解質代謝異常症である。
症状
- 精神症状:倦怠感、無関心、傾眠
- 筋肉障害:筋力低下、筋硬直
- 循環器症状:徐脈性不整脈、起立性低血圧
- 神経症状:腱反射低下、意識障害[1]
- 消化器症状:悪心、嘔吐
- その他:排尿障害、運動失調、構音障害[2](広義の言語障害のうち、意図した音が正しく発声できない状態)
このうち、最も致命的な症状は徐脈性不整脈による血圧低下である。重症の場合には死亡することもある。そのため、マグネシウム含有製剤の腎不全患者への投与は原則禁忌である。
診断
マグネシウム含有製剤または食品を摂取している腎不全患者に起こる。腎機能の正常な人に起こることはない。血液中のマグネシウム濃度3mg/dl以上で、診断が確定する[3]。
治療
自尿の保たれている腎不全患者で、症状が軽度の場合は、マグネシウム製剤の投与を停止し、生理食塩水や乳酸リンゲル液の輸液により尿中への排出を促す。透析患者など腎からの排泄が期待できない場合や、高度の徐脈性不整脈や意識障害を合併している場合は、グルコン酸カルシウム注射液(カルチコール)を投与した上で、人工透析を行う[4]。
その他
出典
- 羽根田俊、マグネシウム代謝異常 日本内科学会雑誌 Vol.88 (1999) No.7 P1201-1205
関連項目
脚注
- ^ 中司敦子ほか、高マグネシウム血症により意識障害をきたした慢性腎不全の2例 日本透析医学会雑誌 Vol.37 (2004) No.2 P163-168
- ^ 橋詰直孝、マグネシウム代謝異常 日本内科学会雑誌 Vol.86 (1997) No.10 P1857-1861
- ^ Q.3 電解質異常の自覚症状(初期症状) くまもとDIニュースNo.236(2000年4月号)
- ^ 高マグネシウム血症 (PDF)
- ^ 白澤祐一ほか、甲状腺機能低下症の関与が疑われた高マグネシウム血症の1例日本内科学会雑誌 Vol.94 (2005) No.5 P967-968
外部リンク
- マグネシウム: 電解質平衡 メルクマニュアル家庭版 2015年9月29日閲覧
- マグネシウム濃度の異常 メルクマニュアル 2015年9月29日閲覧
- 酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について 平成20年11月27日 平成20年度 医薬品・医療機器等安全性情報 (PDF)