ベーシックインカム
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ベーシックインカム(basic income)とは最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想[1][2][3]。基礎所得保障、基本所得保障、最低生活保障[4]、国民配当[5]とも、また頭文字をとってBIともいう。
概説
国民の最低限度の生活を保障するため、国民一人一人に現金を給付するという政策構想。生存権保証のための現金給付政策は、生活保護や失業保険の一部扶助、医療扶助、子育て養育給付などのかたちですでに多くの国で実施されているが、ベーシックインカムでは、これら個別対策的な保証ではなく包括的な国民生活の最低限度の収入(ベーシック・インカム)を補償することを目的とする。
包括的な現物給付の場合は配給制度であり、国民全員に無償で現金を給付するイメージから共産主義・社会主義的と批判されることがあるが、ベーシックインカムは自由主義・資本主義経済で行うことを前提にしている。
新自由主義論者からの積極的意図には、ベーシック・インカムを導入するかわりに、現行制度における行政担当者による恣意的運用に負託する要素が大きい生活保護・最低賃金・社会保障制度などに含まれる不公正や逆差別といった問題を解消し、問題の多い個別対処的福祉政策や労働法制を「廃止」しようという考えが含まれる。
一方で、この考え方・思想に対しては古代ローマにおけるパンとサーカスの連想から「国民精神の堕落」など倫理的な側面から批判されることがある。所得給付の額次第では給付総額は膨大なものになり、国庫収入と給付のアンバランスが論じられたり、税の不公平や企業の国際競争力の観点が論じられることもある。
日本で月8万円のベーシックインカムを導入するのに消費税で約54%、所得税だけで賄うなら全労働者均一に約51%ほどに増税して財源に充てる必要があるため賛否が別れている[6][7]。
思想史
賃金補助制度の歴史は、1597年のイギリスにおける救貧法にさかのぼる。人々から救貧税を徴収し、文字通り貧民を救済する制度である。1601年にはエリザベス救貧法が制定され、救貧は地方ごとに行うのではなく、国家単位で行われることになる。
1795年〜1834年にはスピーナムランド制が実施された。この制度は、一定基準以下の賃金労働者に、救貧税として徴収した額の中から生活補助金を支出するというものである。この制度の背景には、ナポレオン戦争と凶作によって農民の窮乏が深刻となったという事情があり、補助金の額は食料品(パン)の価格と家族の人数によって算定された。この制度は人道主義的な政策ではあったが、労働意欲を低下させ、救貧税負担を増大すなわち労働者の賃金下落を引き起こす結果となり、やがて廃止となった。
やがてBIの構想が18世紀末に出現した。BIの最初の提唱者は以下に挙げるトマス・ペインとトマス・スペンスの2人だと考えられる。
トマス・ペイン (1737-1809)はイングランドの哲学者である。彼は1796年の著書『土地配分の正義』において、人間が21歳時に 15ポンド を成人として生きていく元手として国から給付(ベーシック・キャピタル)、50歳以降の人々に対しては年金として年10ポンド給付するという案を発表した。その案では、土地を持つ人間に地代として相続税を課し、財源を賄うとされた。BIに類似しているものとしては世界最古の案と言えるだろう。彼の次に出てきたBIの提唱者はトマス・スペンス(1750-1814)で、イングランドの哲学者である。彼は1797年の著書『幼児の権利』において地域共同体ごとに、地代(税金)を集め、公務員の給料などの必要経費を差し引いた後の剰余を年4回老若男女に平等に分配するという案を発表した。これは純粋なBIとしては世界最古の案と言える。
彼ら二人が出現した後、19世紀にも断続的にBI構想が生じた。1848年に、ベルギーの思想家ジョセフ・シャルリエが、自著「自然法に基づき理性の説明によって先導される、社会問題の解決または人道主義的政体」において、地代を社会化・共有化しそれを財源するBIを構想した。また同年、J・S・ミルが自著「経済学原理」の中で、労働のできる人にもできない人にも、ともに一定の最小限度の生活資料を割り当てるという案を示した。
シャルリエやミルがBIを主張した40年後の1888年には、米国の作家であり社会主義者のエドワード・ベラミーが、自著「顧みれば」の中でベーシックインカムに近いシステムを描いた。その内容は伊藤(2011)によると、以下のようだったとされる。“私企業に代わり、国家があらゆる財の唯一の生産者となった未来(2000年)のユートピア社会のあり方として、毎年、国民の生産のうちの各人の分け前に相当するクレジットが公の帳簿に記入されるとともに、各人にそれに対応するクレジット・カードが発行され、それによって共同体社会の公営倉庫からなんでもほしいものを、いつでもほしいときに買うことができる様子を描いていた。”この中には引用部分の冒頭にあるように、社会主義的な発想も含まれているため、自由競争を否定しない制度であるBIと必ずしも一致しない側面もあるが、それぞれの人に富を分配するという点ではBIと共通する。また、その分配の方法として現金ではなく「クレジット・カード」を発想したことは極めて斬新であり、この発想はBIの実施方法を考えるうえで、現金給付特有の問題を排除したい場合 などに有用であると考えられる。
やがて20世紀になるとBI構想を考える研究者が多く出現した。一般的な知名度は高くないが、BI構想の歴史を語るうえで欠かせないのがC・H・ダグラス (1879-1952)である。彼は、自らの著書で社会信用論というシステムを発表し、月5ポンド の国民配当を提唱した。その財源は貨幣発行益である。当初、これに対して正統派の経済学者であるケインズ は否定的であったが、のちに肯定的な立場をとっている。
また、W・ベヴァリッジ(1879-1963)は『ベヴァリッジ報告』(1942年)で社会保険を中心としつつ、補足的なものとして公的扶助をおくモデルを提唱した。このモデルは、「稼得能力の喪失ないし稼得能力の不足に陥った時に所得を保障することによって、貧困を防止する」という彼の考えに基づいている。また、彼はケインズと共にケインズ=ベヴァリッジ型福祉国家 を提唱した。ケインズとベヴァリッジは、BIと直接の深い関係は無いが、社会保障の歴史を語るうえで欠かすことの出来ない二人であるので、ここに記した。
20世紀半ばにBIについて具体的な数値を用いて提唱したのが、ジュリエット・リズ=ウィリアムズ(1898-1964)であり、イギリスの女性作家であり経済学者である。彼女は『新しい社会契約』(1943年)で社会配当(basic allowance)と呼ばれるBIに極めて近いものを提唱した。給付額は、週1ポンド かつ扶養する子供一人当たりに週0.5ポンドとした。財源を税とし、ミーンズテストを行わない点でBIと類似するが、就労の意思が無く、かつ家事労働に従事していない人を給付対象外とした点ではBIと異なる。財源として比例所得税を主張した点と労働インセンティブを高めるべきという主張が、のちのフリードマンらが唱えた負の所得税という構想に影響を与えた。続いてジェイムズ・E・ミード (1907-1995)は、社会保障のシステムにおいて、ベヴァリッジが提唱した社会保険方式ではなく税方式を提唱した。そして社会配当という呼称でBIを提唱した。彼はBIにより有効需要を創出かつ労働需要を減少させ、社会保障・経済・完全雇用のサイクルを循環させるという考えを持った。 また著名な経済学者M・フリードマン(1912-2006)は、1962年の「資本主義と自由(Capitalism and Freedom)」で負の所得税を提唱した。先述のように、リズ=ウィリアムズの影響を受けたとされる。1986年には、BIEN(現・ベーシックインカム地球ネットワーク)が設立されベルギーの哲学者フィリップ・ヴァン・パレースがメンバーとなっている。
メリット
ベーシックインカムは、年金・雇用保険・生活保護などの社会保障制度、公共事業を縮小することにより、「小さな政府」を実現するのに役立つといわれている[8][9][10][1][2][11]。
また、最低限の生活を保障という点から、企業は雇用調整を簡単に行うことができるようになり、雇用の流動性が向上し[9][10]、新産業創出などの効果があるという意見がある[8][2][11]。
貧困対策
ベーシックインカムの基本的な目標は一定の所得を無条件で保障することで、すべての国民が最低限以上の生活を送れるようにすることである[12]。ワーキングプア問題への処方箋として期待する向きもある。ワーキングプアは、自己の年収が200万円を下回る貧困層の立場に置かれているものの、辛うじて生活保護を要するほど困窮した立場にはないとして、従来の社会保障制度では救済されない。ベーシックインカムを導入すれば、ワーキングプアにも社会保障を受ける機会を提供できるとされる。また生活保護のように、生活水準が著しく低下してから人々を救う「救貧」と異なり、「防貧」の側面がある。
少子化対策
ベーシックインカムは負の所得税と異なり、世帯ではなく個人を単位として給付される。子供を増やすことは世帯単位での所得増加に繋がるため、少子化対策となりうるという考えがある[13]。
地方の活性化
ベーシックインカムの給付額は生活に必要な最低限といわれることが多い。全国一律であると仮定した場合、物価の安い地方に生活する動機付けになるという意見がある。
社会保障制度の簡素化
現在ある複数の年金制度、ハンディキャップを負った人のための保障など種々の社会保障制度のうち、失業保険、生活保護、および基礎的な年金などベーシックインカムで代替できるものは一本化し、他を補助的に導入することで簡素化されると予想される[要出典]。これにより最近特に問題になっている生活保護の不正受給問題が解決できる[要出典]。
行政コストの削減
社会保障制度を簡素化できれば、それらの運用コストは簡素化に応じて削減される。これはベーシックインカムの導入目的の一つでもある。さらにベーシックインカム実現への課題の一つである財源問題を(他の手段によることなく)同時に解決可能との意見もある[14]。
また、現行の生活保護や雇用調整助成金では働かない状態を維持するため受給の条件に合わせる人がいる、負の動機付けや、交渉や制度の利用の得手、不得手から、適切な可否判断が難しいという意見がある。
労働意欲の向上
現在の年金や生活保護の制度には所得制限があり、働いて収入を得ると年金や生活保護の減額や支給停止が行われ収入が減少するため労働意欲の低下をまねいている。さらに働くより、働かず生活保護に頼るほうが収入が多くなる逆転現象が発生するため[15]、現在の年金や生活保護の制度は更なる労働意欲の低下をまねいている。
一方ベーシックインカムは所得制限がないため、働けば働くほど収入が増える。そのため労働意欲が向上するという意見がある[15]。
景気回復
ベーシックインカムは貨幣を国民に直接給付する形式の景気対策という考えもある[誰?]。税金を財源としたとき、高所得者より低所得層の方が財を購入する傾向が高いという仮定において、高所得者の貯蓄から消費に回される貨幣の割合を増やすことになる。
余暇の充実
ベーシックインカムにおいて、労働は、最低限度の生活を起始点として、必要な分だけ賃金を得る方式であるという考えがある。この前提では仕事と余暇の割り当てを自由に行えるという点から、多様な生き方を認めるという思想とも取れるという意見がある。
景気刺激策という観点では、余暇を楽しむ選択をした人々がさまざまな財を購入してくれる場合に、その効果は高いという意見がある。生産力の上昇を見込んだ上で、資本主義経済において、常に需要を確保する必要があると仮定すると、マクロ経済的にはよい状態になるという意見がある。
公共投資は景気刺激効果をもたらし[16]、GDP上昇に繋がる。ベーシックインカムはこれらの景気刺激効果と変わらなくても、国民総幸福のような指標では差が生じるという意見がある。#景気刺激策としての効果参照。
ワークシェアリングによって、同時に雇用の形式も多様化している方が制度的な整合性がよいという意見がある。
非正規雇用問題の緩和
正社員という制度が、同じ労働を行う非正社員との間の、賃金や社会保障における格差を生んでいるという考えがある。例えば、非正社員等のワーキングプアは正社員とは違って給与が比較的安い上、国民健康保険や住民税について、前年の年収に基づいた査定がなされて支払う金額が乱高下する。また、ワーキングプアの多くは雇用が不安定であることから、正社員のように給与所得控除など各種の減免措置を受ける機会が乏しい。そのため、比較的裕福な正社員に比べ、ワーキングプアの方がより高い税率で課税されかねない悲惨な現状がある。これを是正する方策として、ベーシックインカムの導入は有効である。また、企業の体力という視点から、現実的には雇用の流動性、生活保障という2つの側面を切り離し、ワークシェアリング、ベーシックインカムという形で組み合わせた場合、正規雇用を増やす政策よりも、企業の負担を軽減するという効果が期待されるという意見がある。確かに、企業側も社員の生活のための無理な雇用継続をする必要がなくなるために、企業の経営効率が良くなる。このことによって、職場環境や雇用環境が向上し、周りの労働者にも便益が生じる。
ブラック企業の矯正
仕事を辞めてもBI給付によって生活を送れるため、不本意な労働をしている人々が仕事を辞めることができる。それに伴い、劣悪な労働環境下で働く労働者に支えられてきた、いわゆるブラック企業が淘汰されていく。所得が保証されれば劣悪な労働環境で無理に働く必要がなくなるため、違法行為やグレーゾーンを含む劣悪な労働環境で労働者を働かせているブラック企業の悪しき企業文化を矯正できるという意見がある[誰?]。
産業空洞化の防止
所得が保証されれば最低賃金の必要が無くなるので、最低賃金制度を撤廃でき、その結果、海外の安い労働力にも対抗できるようになり、産業空洞化を防ぐ事ができるという意見がある[誰?]。
消費税の逆進性の解消
ベーシックインカムを導入することによって消費税の逆進性が解消される試算がある[誰?]。試算によると高所得者(年収1億円、年間支出2000万円)と低所得者(年収300万円、年間支出200万円)では高所得者から低所得者に年間90万円の所得移転がなされると同時に、ベーシックインカムを導入によって消費増税をしたにもかかわらず低所得者の所得が増えていることがわかる[17][信頼性要検証]。
失敗を恐れずに経済活動でき、学生が勉学に励むことができる
現在の社会制度の下では起業に失敗すると経済的に困難な状況に陥るが、ベーシックインカムが導入されていれば、もともと最低限の生活は保障されているため失敗を恐れる必要がなくなるという意見が有る。また学生が、生活していくためあるいは小遣い稼ぎのためにアルバイトにあてている時間を学問・研究に回すことにより学生の質を上げる。
犯罪の減少
生活苦による強盗などの犯罪が減少するという意見がある。
批判
BIを導入すれば政府の管理者・提供者としての側面が強くなり、人々の消費習慣までもが政府に管理・統制されてしまう可能性がある [18]。BIの権利を主張した者が給付された現金をギャンブル、タバコ、アルコールなどの必需品でないもの、または法律に反する物品を手に入れるために使用するような事態になれば、これを防ぐために政府が新たな規制を導入すると考えられる。これは政府が国民に対して「BIを使ってあれを買えこれを買え、それは買ってはダメだ」などと国民の消費生活に統制を加えることと同義である[18]。
BIを無条件で導入し社会保障を削減しない場合は、既存の社会保障制度(例えば低所得者層へのフードスタンプや住宅手当て)を利用して、企業が従業員の人件費を抑制する可能性がある。
経済学者ら[誰?]は言う。「賃金相場の底値は労働者の日々の生活にかかるコストで決まる。すなわち雇い主は、従業員に最低でもその従業員が食と住居を毎日得られる程度の給料を支払う[18]。」
この論理的帰結は、たしかにBIによって国はすべての人に最低限の生活を提供するが、労働は熟練労働であっても低賃金になる可能性があることだ。もし労働者が低賃金でも生活できるようになれば、国からの既存の社会保障に頼ることになり、企業は(人件費を抑制することで)収益を拡大させるだろう。これは本当に公衆が望むことだろうか。BIはユートピアに見えるのだが、国家と国民の関係を公衆にとって望ましいものにはしないだろう[18]。
その他、財源の確保[9][19]や、「はたらかない生き方」を許容できるのか[10]といった課題があげられている[20][21][1]
財源の不安
ベーシックインカムはその莫大な財源をどこに求めるのかという点がつねに議論の的となる。これについては#財源案を参照。
精神論的なもの
- 勤労美徳
- 一つは、労働は対価だけではなく成長や学習の場で、そこに参加しない動機付けを与えるのはよくないという考え(これについては「生きがいの喪失・閉塞感」も参照)。また聖書からよく意味をすり替えて引用される「働かざる者食うべからず」[注釈 1]という労働の対価以外の所得を否定する考えで、定額給付金、子供手当て、または各種配当金などの不労所得を否定する考え方に収斂するという意見もある。
- 財源との関係での精神論
- 財源の種類については#財源案参照。
- 財源を#税収でおこなう場合、労働と貨幣の給付が非常に強く結びついている人に対し、納めた税金を働かない人間が消費することへの同意を得る事は難しいという意見と、その一方で、人権思想に基づいた考えや、#景気刺激策としての効果としての側面から同意が得られる可能性があるという意見がある。また、財源を#貨幣発行益で実行する場合、納税された税金以外の大量の貨幣を政府が発行することに違和感を覚える人が現れるという意見もある。
- 犯罪の増加
- 刑務所に入ったあとでも生活の維持が容易になるため、刑罰による犯罪の抑止効果が減少するという意見がある。
- 生きがいの喪失・閉塞感
- 勤労美徳と関係するが、労働は対価だけを目的とするのではなく生きがいを提供するという機能も持つため、目標を喪失する個人が大量に現れるという意見がある[要出典]。逆に、ベーシックインカムは働くことを抑制するわけではなく、今まで通り働くのも選択肢の一つだという考えがある[要出典]。
- #余暇の充実も参照。
- 非労働者の海外脱出
- 包括的な所得保障は年齢を問わず労働放棄を招き、また給付が国籍や居住証明を対象とした恩給型給付である場合、書類上の給付条件を満たした労働放棄者が物価の安い海外へと離散することを助長する可能性がある。
使用方法に関連するもの
- 消費者金融の担保になる
- ベーシックインカムが消費者金融からの借金や賭博に使われ[12]、貧しい人がさらに借金を膨らませるという意見がある。
- 資金の国外流出
- 将来への不安から外資系の保険会社へ支払うことによる流出、宣伝や知名度に秀でた大企業の製品に消費が集中し、国際的な経済の中央集権化が進行するという意見がある。
- 但しこの指摘は、地域通貨で解決するのではないかと云う意見もある。
- 地球資源・環境の破壊
- 人々がより多くのお金を手にすることで、家電などの買い換えサイクルが加速し、資源の枯渇、環境破壊が進むという意見がある。
- 詐欺
- 近年問題となっている年金詐欺(家族の死亡を隠し年金を騙し取る犯罪)と同種の詐欺があらゆる年齢で発生する懸念がある。
- 反社会的勢力の資金源
- 暴力団等、反社会的勢力の構成員にも給付されれば、それらの資金源となる恐れがある。
経済学的なもの
- 経費膨張の法則[22]
- 国家の経費はつねに膨張の圧力にさらされており、歳費削減問題は国庫の恒常問題である。主権者は国庫からの恩恵よりも国庫に対する義務をつねに過大に感じており、このことが財政需要を拡大させる。17世紀イギリスのウィリアム・ペティの時代から、国家経費の膨張あるいは冗費節減が指摘されてきた。アドルフ・ワーグナーによれば、戦争や大不況、大災害など社会的動乱により「人々は平時には容認できないと考えていた租税水準と収入増加の方法を危機時には認めるようになり、この容認は動乱自体が収束しても存続する。」その結果、動乱が過ぎると支出は下落しているのにも関わらず政府はこれまで必要とされながらも増税をしてまでは行わなかった諸政策の実施を図るようになり、結果として高い水準での財政支出構造が維持される(転移効果)とする。
- 所得の海外移転
- 外国との交易を前提にベーシックインカムを導入した場合、安くて品質の確かな海外製品の購入に一部の所得給付が向かうことで、内需の海外移転が発生し国内景気の刺激効果が低減する。この場合、日本政府の税収入を利用することで海外の雇用を維持していることになる。
- これは一国だけでベーシックインカムを導入することの難しさを示唆しており、他国との税制との関係をみながら調整する必要がある。消費税(売上税)を税源としてベーシックインカムをおこなう場合、所得の海外移転については中立的である。
- 最低限必要な労働や労働の効率性
- 過酷な条件下での労働に関して就労人口が極端に減ってしまい社会が崩壊する、また、厳しい労働条件を強制できないことが社会全体の効率性を落とすという考えがある。反対に、ベーシックインカムは市場原理が働く前提下での制度のため、過酷な条件でも必要な仕事であれば賃金が増すため、賃金を目当てにその仕事をおこなう人が現れるという意見がある。
- 勤労意欲の低下
- 労働者の勤労意欲が低下し、無責任になる動機付けが起こるという考えがある[23]。また、経営者が安易に解雇を行う、ベーシックインカムの分だけ給与を減額するという意見があり、一方で雇用の流動性の上昇から労働者が流出するのを防ぐため給与水準は維持、もしくは上昇するという考えもある。
- #非正規雇用問題の緩和、#景気刺激策としての効果も参照
- 信用取引の限度枠の低下
- 銀行や信販企業が提供するクレジットカードやローンの限度枠は、利用者の年収や信用情報を参考にして決定されるが、ベーシック・インカム導入によって利用者がいつ雇用先から解雇されるかわからない状態になったとすれば、限度枠の査定に影響が出る可能性がある。
- ベーシックインカムは安定した収入と見なせる一方で、低い収入は限度枠を下げかねない。限度枠が下がった場合、残額の一括返済を求められたり、新規のローンが組めなくなる事態もあり得る。住宅ローンや教育ローンなど抱えている家庭がある中、ベーシックインカムが個人の信用や負債に与える影響に対する議論は不十分である。
現行制度との兼合い
- ベーシックインカムによる生活保護や公的扶助など福祉水準の低下
- ベーシックインカムによって形式的に最低限の収入を保証された場合、それ以上の公的扶助を行うことは困難になる。必要に応じて更なる扶助も行えなくなることから、福祉水準の低下を危ぶむ見方もある。収入状況や保有資産の状況に関係なく平等に現金が給付されるため公的分配の平等性は確保されるが、制度設計によっては健康状態や困窮状態に関わらず給付が一律となるため社会的公正はかえって阻害される可能性がある。一方で行政コストは低下することが期待できるため全体での給付水準は上昇する可能性がある。
- また、生活保護では級地制度など柔軟な対応が出来るが、原則一律に実施されるベーシックインカムではそれが不可能で地域によっては生活水準を下げてしまうという批判もある。
- 在日外国人や特別永住者など日本国籍を持たない住民の取扱い
- ベーシックインカムの給付対象について日本国民に限定しない場合、国庫収支が十分に計算できない状態で日本国内に移民が殺到し、国庫財政が破綻するという意見がある。
- 反対に、日本国民(日本国籍保有者)のみを対象とした場合、非対象者には納税義務だけが存在しベーシックインカムを受けられないことが問題になるという意見がある。これに対しては、それにも関わらず日本にきて就労する外国籍労働者がいるならば納得づくであり問題がないとの反論もある。他方、特別永住者にはこうした反論が成り立たず人道上の政治問題あるいは在日特権とみなされる逆差別的な優遇が生じるという見方も存在する。
財源案
山崎元の試算によれば年金・生活保護・雇用保険・児童手当や各種控除をベーシックインカムに置き換えることで、1円も増税することなく日本国民全員に毎月に4万6000円のベーシックインカムを支給することが可能であるとする。具体的には日本の社会保障給付費は平成21年度で総額99兆8500億円であり、ここから医療の30兆8400億円を差し引くと69兆円となる、これを人口を1億2500万人として単純に割ると月額4万6000円となる[24]。小沢修司も月額5万円程度のベーシックインカム支給ならば増税せずに現行の税制のままで可能と試算している[25]。
ベーシックインカムの支給額は日本では月額5万〜10万円程度で議論されることが多く、様々な財源案が提起されている。一方で多くの提案の背景には租税徴収確保主義("集めれば良い")があり、民主主義と財産権の観点から課税の正当性を記述する必要がある(目的税)。
たとえば受益が課税の正当性の根拠だと安直に短絡している議論もあり、公的分配の背景に財産権の公的侵害があるばあい、公平・公正の観点から、慎重かつ明確に政策目的とその限界が記述されるべきものである(租税法律主義・租税公平主義)。かつてウィリアムズが唱えたような部分的BIとも呼ばれる少額のBIを考えるとする。純粋な5万円の支給のみでは無収入者の場合は最低限の生活は困難であろうが、政府が無収入者・低収入者に住居を無料ないし低額で提供すれば十分生活は可能である、という見解もある。この際、ミーンズテストは行わず、希望者全員に住居を提供するという形でよい。日本では、特に過疎地域の住居の空き家が増加してきているという現状があり、そういった住居を国が買い取り、無収入者・低収入者に提供すれば良い、という見解もある。[要出典]
また、5万円という額の支給があれば失業手当が無くとも、給付額でスーツを購入でき交通費も賄えるため就職活動が十分可能となり、何らかの資格取得の費用も調達できる。このように、「働く以前の問題」を解消するだけで、新たに職に就ける人々も多い。「より多くの収入を得たい人に平等のチャンスが与えられる」という点は、部分的BIの大きな存在意義の一つであろう、という見解もある。そして何より、5万円という低い額に支給額を設定することにより、BI実施による就労のインセンティブの低下は抑えられるであろう、という見解もある。ここでもう一つ考えなければならないのは、疾病や障害を抱えている人の中には就職するという選択肢がない場合もある、ということである。すなわち彼らが問題なく生活を送っていくために何らかの考慮をする必要がある。これについては疾病や障害の度合いに応じて、BI給付額を増額 ないし医療や介護などにかかる費用を減免あるいは免除するなどして現物給付面を充実させるなどして対応することが望ましい、と言う見解もある。[要出典]
税収
「所得税」、「消費税」、「環境税」、「相続税」などが挙げられる。ゲッツ・W・ヴェルナーは、ベーシックインカムを導入するとともに所得税や法人税を廃止し、消費税に一本化すべきと主張している。BIの財源を消費税のみで賄おうとする場合、現行の消費税率8%を27.8%引き上げた35.8%にする必要がある。これは諸外国で高い税率を課しているハンガリー、アイスランド、スウェーデン各国それぞれの消費税率27%、25.5%、25%よりはるかに高く、やはり消費税のみで財源を賄うことは非現実的である。
消費税の引き上げだけでなく、他の税の増税も組み合わせて考えた場合を考える。例えば、相続税の税率 を100%に引き上げた場合を考える。国税庁によると2011年の相続税の課税価格は10兆7,299億円であり、税額(税収)は現在1兆2,520億円である。税率を100%にした場合すなわち、課税価格と税額がイコールとなった状態では、当然税額は10兆7,299億円である。この額と消費税増税分でBIの財源を賄うとすると、先述の計算方法のように試算すると消費税率は5%から約26%引き上げた31%で済む。しかしながらこの税率の設定は現行の税制においては非現実的である。なぜなら、相続税率だけをむやみに上昇させる場合、生前の贈与いわゆる節税が何らかの形で横行することが予想されるからである。すなわち、相続税率を引き上げ、税収を増加させるには贈与税率も同時に引き上げる必要がある。しかし贈与税収の上昇を図ろうとする場合、贈与の実態をすべて把握できるとは限らないため、安定的な税収増は望めない。その際監視を強化する手段もあるが、それに伴い監視のコストがかさむこととなり、行政コストを削減するというBI本来の存在意義に反する。そのため、相続税をBIの主たる財源とするのは非現実的であり望ましくない。
所得税率を現行より引き上げた場合、壮年層から税収は得られても退職した高齢者からは税収は得られない。日本が少子高齢化の国家である以上、安定した税収を目指す場合、高齢者から税収を得られにくい所得税の税率引き上げは望ましくない。なぜなら税収増の効果が薄いうえに、今後も少子高齢化が進み、所得税による税収確保がますます難しくなるからである。
次に法人税の場合を考える。法人税をBIの財源と考える場合、経営者たちの合意を得る必要があるが、BIが労働意欲の減退を招き、労働供給が減少する可能性がある以上、経営者たちにとってBI導入にはデメリットが伴う。したがって、財源までをも経営側に要求するのは非現実的である。仮に要求する場合は、社会保険の法人負担部分を免除するなど、経営側への配慮が必須となるであろう。ただ、経営側の理解を得られたとしても、法人税率を引き上げることは望ましくない。なぜなら、日本は他国に比べ、法人税率が既に高い水準にある からである。その状態で税率を更に引き上げると、日本の企業が拠点を海外に移し、産業の空洞化に陥るため、経済成長に負の影響を及ぼしてしまう。またよく言われているように、法人税は、景気変動の影響を受けるため、安定した税収が望めない。やはり法人税をBIの財源として考えるのは、様々な理由で困難を伴う。
ベーシックインカムの導入は納税者番号制度(あるいはSocial Security number)を前提としており、従来の家計単位での所得申告方式ではなく個人単位での包括的な所得把握が前提となる。税務上、あるいは福祉給付の観点では、データ処理が一元化され非常に扱いやすく制度の簡素化をもたらす。この際に税制の方の簡素化も同時に唱えられることがある。
消費税(売上税)については課税の逆進性が最大の論点であり、所得税や相続税については最高税率にいたるまでの税率の高さの略奪性が論点となる。一般に消費税は年間所得額の少ない中低額所得者に高額所得者と同じ税率を求めるため担税応分が多くなる。一方で年間所得については所得税の段階で高額所得者との間ですでに社会的再分配や社会的公正の議論が達成されているとも言える。
高額所得者の場合、消費性向が低所得者より低いとされ、日本の2002年の総務省「家計調査」にもとづく勤労者世帯の所得階級別消費税負担率と所得税負担率の計測によれば、所得がもっとも低い分類階層においては所得の2.8%にあたる消費税を負担しており、これは最高所得分類階層のそれが2.1%であったことから逆進性の存在が確認できる。所得税については負担率が4%に対し最高所得階層では12%であり累進的である。もっともこの種の議論は一時点での所得を念頭にしていることが多く、少子化時代における税負担の衡平性を考えるさいにはとくに生涯所得に対する負担の公平性に気を配る必要があり、引退して勤労所得がない人の担税能力が勤労世帯より貧しいとは限らず、消費税を社会保障財源として考えるさいには逆進性を一時点の所得水準で計測することには問題があるともいえる[26]。
資産への課税を考える。その手段として例えば貯蓄税 の創設を考える。課税対象は個人の貯蓄すなわち個人金融資産である。日本銀行の資料によると2013年6月末の個人金融資産残高は1590兆円である。これに税率1%の貯蓄税を課税した場合、15.9兆円である。この分と先ほどの相続税増税分、消費税増税分をBIの財源にあてるとすると、消費税率は25%で済む。また、貯蓄税率を2%にした場合は消費税率19%、3%にした場合は12%でそれぞれ賄える。そして、貯蓄税率を4%にした場合は消費税率5%と、現行のままでよい。すなわちBIの財源への消費税増税による拠出が不要となる。ただ、これはあくまで表面的な計算であり、貯蓄税を課税する場合、課税対象である個人金融資産の額の減少が予想されるために、上記のような計算は必ずしも成り立たない。もっとも、貯蓄税の目的の一つとして貯蓄の減少すなわち消費の拡大による景気の刺激があるため、個人金融資産の減少はむしろ歓迎すべきことであるとも言える。
富裕層の貯蓄投資にかかわる別途収入については収入の問題であり消費税の議論とは無関係である。また不動産取得税や株式・債券などからの配当や賃料など、あるいは売買差益に対する課税により補正されている。日本の場合、譲渡益税や配当課税については総合課税方式が本則(所得扱いとして累進税率が適用される)であるが、対象により20%の分離課税も可能であり、また上場株式(持分量による)や公募株式投信などの場合さらに軽減税率が適用されている。高額受贈者や相続人には贈与税・相続税が課せられる。
資産格差の是正を目的に相続・贈与税の極端な強化がしばしば提言されるが[27]、現在の社会経済体制を前提とすれば、公平性のあくなき貫徹というだけではなく他の税との差はあれども効率性その他の要因を配慮する余地がある。 とくに自営業の再生産が維持できるインセンティブは必要である[28]。社会主義では遺贈が法的に存在していないかのような誤解があるが旧ソビエト、ベトナム、中国でも相続権は存在しており、土地所有形態や課税体系と税率の問題である。とくに中国では2012年現在でも相続税(遺産税)は存在しない。課税についてはさまざまな節税策や租税回避、脱税行為などが不公正としてしばしば論じられる。
政府紙幣
中央銀行とは別に政府紙幣を発行する案。いわゆるヘリコプターマネーの一種。通貨は本来、市中の要請に対して中央銀行が貸し出しているものであり、貸し出し残高が市中流通量、また通貨の価値は「借り手側の信用」(すなわち市中の信用力)により保証されている。政府紙幣は「政府の信用」(徴税権や国庫財産)を担保として政府みずからが紙幣を作り使用するものである。これをベーシックインカムの財源に充てよとする主張である。
事例としては軍票など過去に事例があり、徴税権や国庫財産に見合う程度の流通量を適切に管理できれば問題ないが、消費や投資に回らない場合、景気刺激効果は通常の通貨発行と同等となってしまうため、使用期限付き政府紙幣の提案などが行われている。歴史上しばしば発行された軍票は戦争の終結とともに必ず現金通貨で回収されており、恒常的な財源として政府紙幣の継続的な発行政策が成功した歴史的事例はない[注釈 2]。しかしながら、通貨のもつ本質的な機能の一部(貯蓄性)を巧妙に回避し消費を刺激するために「期限付き紙幣」を導入することは経済学的に魅力的な提案と評価されている
主な反論としては、結局のところ長期国債の日銀引受(財政法5条違反)を巧妙に回避しているにすぎず、税収と給付の本質的なアンバランスの解決になっていないとするものがある。
通貨発行益
また、貨幣発行益を財源としベーシックインカムを実施せよとの主張もある。これは1920年代のC.H.ダグラスによる「社会信用論」を起源とし、現在の日本では関曠野や白崎一裕が提唱している。この主張は文字通り、信用の裏づけなく政府紙幣を発行し所得給付に充てよとするものである。
貨幣発行益を財源としてベーシックインカムを実施する場合、新たな増税が必要ないという考えであり、また同時にインフレーションが起こるという意見である(インフレーション税)。インフレーション税の場合わざわざ政府紙幣を発行する必要はなく、恒常的に長期国債を累積的に発行し、それを中央銀行に引き受けさせても良い。
国宗浩三によれば[29]、通貨発行益の増大を行政府がはかったばあい、誘惑に負けて巨額の貨幣発行を行うことの経済的帰結は明らかであり、インフレの発生、インフレ率の高騰、それに伴う経済社会の混乱である。またインフレは貨幣需要をへらすため(通貨保有による「課税」を逃れるため)、結局は通貨発行益を減らすことになるとする。
一方で、とくに開発途上など持続的な経済成長をともなく経済においては、経済の成長に伴う貨幣需要に見合っただけの通貨を追加的に供給することにおいては、通貨発行はインフレの要因にはならず税源としての通貨発行益が期待できるとする。経済にはタダ飯(フリーランチ)は無いのが普通であるが、経済成長に伴う通貨発行益は数少ない例外であり、通貨発行益を主な財源としてあてにするのは大きな間違いであるが、経済成長が続くかぎり(とくに発展途上国にとっては)安定的な補助的財源としては優秀なものだとする。
中国の経済構造はこの点で特筆すべきものがあり、中国政府の財政における通貨発行益は非常に高く、GDP比5%を超えている。しかしインフレ税に頼る比率は約3割にすぎず、7割は成長にともなう果実としての通貨発行益である。ただしこれが今後も続くかどうかと言う点については慎重であるべきで、経済システムが成熟するにしたがって貨幣選好は低下し相対的な貨幣発行益は減少する可能性がある。
振り替え案
無税国家論
松下幸之助の提唱した無税国家方式。現行の財政予算使いきり方式ではなく各年度「貯蓄」してゆき、その貯蓄運用により税を補填するとするもの。たとえば政府系ファンド方式はこれにあたる。マクロ経済の観点では他国(外部)利害を前提としており、国益論における貿易黒字政策にあたる。また外部を想定しない経済においては課税方式の「名づけ方」の差異であって、例えば議会が企業の株式を40%取得することと、同企業に対して純利益の40%に法人税を課することは純利益の分配の観点からは同値である。この場合、「税率が高い国(領域)が豊かである」との命題と同等の主張を含んでいる可能性がある。また基金の市中での運用が成功することを前提とした議論であり、公的年金基金や外国為替資金特別会計などの運用状況から課題が容易ではないことが推測される。
天然資源
景気刺激策としての効果
ベーシックインカムの導入による景気刺激効果が期待できるという意見がある。
高所得層よりも低所得層の方が消費性向が高く、所得を消費に回す率が高いため国民経済全体としての消費需要が高まり、景気が活性化するとする。累進課税方式の場合は、所得の再分配機能から高所得層から低所得層への所得移転が起きるため、この効果はより大きくなる。売上税(消費税)を財源とする場合、各所得階層間の再分配機能はより緩やかになり、消費性向による刺激効果も限定的となる。このため所得制限つきベーシックインカム論や品目別売上税率の設定などが提案されている。前者については制限水準近傍での勤労者のモラルハザードが発生する可能性がある。
貨幣発行益が財源の場合、高所得層も低所得層も所得が増大するので、どちらの消費需要も高まるという意見がある。しかし日本のように高度に金融資本の発展した経済ではインフレ税(信用の裏づけの無い通貨による景気刺激策)そのものは荒唐無稽な思考実験に近い論述であり、一部の論者の経済学的思考実験にとどまっている。インフレ税採用の宣言により従来の発行済み国債の価値は経時的に低減してゆくことになるため、信用秩序に与える影響は予測できない。インフレ税導入論の背後には日本経済破局論や根拠のない略奪税(租税徴収確保主義)の主張が含まれている可能性がある。
ただし、類似の論調としては、政府短期証券を累次発行し為替介入を続け、円売り外債買いをつづけることで恒常的な通貨売り(インフレ)をもたらし、かつ外債運用益を財源にすべしとの案も提案されている(政府系ファンド論)。もっとも2009年現在での外貨準備運用はせいぜい年2.9兆円程度[30]であり、しかも受け取りは外貨建てであり財源として期待できる規模は限定的である。また恒常的な自国通貨売りは典型的な近隣窮乏化策であるため、IMFを始めとする従来の国際自由貿易体制に許容される可能性は低い(ないしは対象国から対抗介入され無効化される可能性がある)。
ケインズ経済学の知見では、技術進歩や資本蓄積によって、生産力が十分に高まった先進国の経済では、潜在的な供給量が常に過剰であり、需要不足ゆえの失業が常に生じる[16]。この場合、消費の呼び水となるベーシックインカムは雇用拡大の有力な手段に成りうる。
日本における動向
日本でベーシックインカム導入をマニフェストに盛り込んでいる政党は自由党、緑の党グリーンズジャパン、新党日本である[31][32][15]。
現存する政党
自由党は2016年参院選公約にて「最低保障年金のあり方を含め、生活をしっかり支えるベーシックインカム制度の導入を進めます」と記載している[33]。また2013年参院選公約にて「税財源の最低保障年金と社会保険の所得比例年金の構築により、年金制度一元化を図る」「社会保障制度を見直し、公平・公正な所得再分配を行い、貧困、低所得層への給付を適切化する。また、ベーシックインカム制度の導入を検討する」と記載している[31]。また前身政党である旧国民の生活が第一は2012年11月25日に発表した第2次基本政策検討案にて「ベーシックインカムの導入を検討する」としていた[34]。
緑の党グリーンズジャパンは2013年参院選公約にて「最低賃金・生活保護・基礎年金の拡充で年間200万円の最低所得保障を実現し、将来的なベーシック・インカムの導入に向けた制度設計に取り組む」と記載している[32]。
新党日本はベーシックインカム導入を公約にしている[15]。なお新党日本はベーシックインカムに関する公約の量が多いため詳細は新党日本#ベーシックインカムを参照。
民進党は基礎控除、配偶者控除、扶養控除の3つの所得控除を税額控除に変え、税額控除しきれない税額分がある低所得者には、その人が負担しなければいけない年金保険料や医療保険の保険料など社会保険料の負担軽減に充てるとしこれを「日本型ベーシックインカム」と呼んでいる。民進党の「日本型ベーシックインカム」では「現金を給付することは考えていない」としている為、本項で解説するベーシックインカムとは大きく異なる[35]。
解党した政党
維新の党は基本政策にて「給付付き税額控除制度の導入を通じた最低生活保障(ミニマムインカム)の実現。」と記している[36]。また維新の党に合流した旧結いの党は主要政策にて「「給付付き税額控除」によりミニマムインカム(最低生活保障)を担保。」と記されており旧結いの党の主張が概ね維新の党に引き継がれた形となっている[37]。また関連政党である大阪維新の会は維新八策の最終案にて「ベーシックインカム的な考え方」の検討と記されておりベーシックインカムそのものの導入ではなく「資産・所得制限のある年金制度」と「現物支給中心の生活保護」を導入するとしている[38][39]。橋下代表も「現金を一律に給付するわけではない」と明言しており本項で解説するベーシックインカムと大阪維新の会のベーシックインカムは大きく異なっているため注意が必要である[40]。なお関連政党である旧日本維新の会の2013年参院選公約にはベーシックインカムに関する記述はない[41]。
みんなの党は2013年参院選公約にて「年金は積立方式への移行を検討」「低所得者層への給付つき税額控除方式を導入。また生活保護制度の不備・不公平、年金制度との不整合等の問題を段階的に解消し、最終的には基礎年金と生活保護を統合したミニマムインカムを創設する」と記載しているが、このミニマムインカムはベーシックインカムとは異なり全国民に無条件で現金を支給することが記載されていない[42]。みんなの党所属議員も「ミニマムインカムとベーシックインカムは違います」と述べている[43]。
2010年参院選政党所属候補者に対する意識調査
2010年の第22回参議院議員通常選挙に立候補した候補者に対して、ベーシックインカムに関する意識調査が行われた[44]。
この調査から同じ政党にベーシックインカム賛成派と反対派の両方が所属していることがわかる。
| 政党名 | ベーシックインカムに賛成 | ベーシックインカムに反対 | どちらともいえない |
|---|---|---|---|
| 民主党 | 9人 | 5人 | 11人 |
| 自由民主党 | 4人 | 14人 | 2人 |
| 公明党 | 4人 | 2人 | 1人 |
| みんなの党 | 12人 | 1人 | 1人 |
| 日本共産党 | 11人 | 7人 | 28人 |
| 社会民主党 | 7人 | 2人 | 0人 |
| 国民新党 | 1人 | 1人 | 1人 |
| たちあがれ日本 | 2人 | 4人 | 0人 |
| 新党改革 | 0人 | 1人 | 0人 |
| 合計 | 50人 | 37人 | 44人 |
民主党と共産党は検討中などの理由でどちらともいえないと回答する候補者が多い。
選挙結果はベーシックインカム賛成派が16人当選(うち民主党5人、自民党2人、公明党4人、みんなの党3人、社民党1人、たちあがれ日本1人)、反対派が18人当選(うち民主党4人、自民党12人、公明党1人、みんなの党1人)となりほぼ同数となった。
どちらともいえないと回答した候補者は11人当選(うち民主党7人、公明党1人、みんなの党1人、共産党2人)した。
新党日本はこの選挙には参加していないため今回の調査対象となっていない。元新党日本副代表で、民主党比例代表で立候補し1位当選となった有田芳生は以前からのベーシックインカム推進論者である。
世界における動向
スイスの所得制限のあるベーシックインカム導入を問う国民投票
- スイスにて成人国民に月額2500スイスフラン(約28万円)、未成年者には月額625スイスフラン(約7万円)のベーシックインカムを給付するかどうかを決める国民投票が2016年6月5日に行われる予定。制度に必要な費用の大半が税金によってまかなわれる。制度導入に伴って年金や失業手当などの社会保障制度の一部を打ち切りベーシックインカムに一本化する。国民投票が可決されると、収入が月額2500スイスフラン未満の人にベーシックインカムが支給されることになるが、政府や経済界は猛反対している。支給額は国民投票が可決された後に法律で決めるため、実際に成人28万円、未成年7万円となるかは不透明[45][4]。
- スイスで提案されているベーシックインカムは本項で解説するベーシックインカムとは異なり所得制限が存在する。具体的には就労による収入が月額2500スイスフランに満たない国民に月額2500スイスフランまで給付する制度である。そのため収入が月額2500スイスフラン以上ある人はベーシックインカムがもらえず、また収入が月額2500スイスフラン未満でも就労収入がある人はベーシックインカムが減額されるため、高所得者や中間層の支持を得にくい制度であり、事前の世論調査では反対派が賛成派を上回っている[46]。
- 2016年6月5日、ベーシックインカム導入の是非を問う国民投票がスイスで行われ、投票率46.3%、賛成23.1%、反対76.9%で否決となった。連邦政府は、制度導入に係る巨額税源不足と経済競争力低下の懸念を表明しており、国民の支持も広がらなかった[47]。
| 就労による収入 | ベーシックインカム給付額 | 最終的な収入 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 0 | 2500 | 2500 | 就労せずに収入が2500スイスフランとなるためメリットが大きい |
| 500 | 2000 | 2500 | 就労してもベーシックインカムが減額されるため、最終的な収入が2500スイスフランとなり変わらないため就労意欲が減る |
| 1000 | 1500 | 2500 | |
| 1500 | 1000 | 2500 | |
| 2000 | 500 | 2500 | |
| 2500 | 0 | 2500 | 就労収入が2500スイスフラン以上の人はベーシックインカムがもらえない |
| 3000 | 0 | 3000 | |
| 3500 | 0 | 3500 | |
| 4000 | 0 | 4000 | |
| 4500 | 0 | 4500 | |
| 5000 | 0 | 5000 |
| 就労による収入 | ベーシックインカム給付額 | 最終的な収入 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 0 | 2500 | 2500 | 所得にかかわらずベーシックインカムがもらえる。就労している人にも2500スイスフラン給付されるため、働いたら働いただけ所得が増えるため、労働意欲が減らない |
| 500 | 2500 | 3000 | |
| 1000 | 2500 | 3500 | |
| 1500 | 2500 | 4000 | |
| 2000 | 2500 | 4500 | |
| 2500 | 2500 | 5000 | |
| 3000 | 2500 | 5500 | |
| 3500 | 2500 | 6000 | |
| 4000 | 2500 | 6500 | |
| 4500 | 2500 | 7000 | |
| 5000 | 2500 | 7500 |
ベーシックインカム導入実験
- オランダのユトレヒトで2016年1月から試験的に導入する[48]。
- フィンランドの2015年総選挙でベーシックインカムを公約とする中央党が第一党になり、中央党、フィン人党、国民連合党による保守・中道右派連立政権が誕生しベーシックインカム導入実験の実施に向けた準備が進んでいる。実験内容はまだ確定していないが、都市、農村、さまざまな経済状況を反映した複数の候補地を選び、大規模な実験を行う可能性が高く、2017年に実施し、期間は1〜3年程度、給付額は月額800ユーロ(日本円で約10万6400円)との情報がある[49]。
- カナダのオンタリオ州は2016年度の州予算案により法案の提出準備入りを発表した[50]。
ベーシックインカムに近い制度の導入例
ベーシックインカムに類似した給付を実施している国は少数だが存在する。ただし、そのいずれも天然資源の輸出による外貨収入を配分・給付するものであり、勤労所得で財政収支を均衡させている先進国および中進国で恒常的に制度化している例はない。以下の制度は年齢制限があったり、支給される金額が多すぎるまたは少なすぎるなど新党日本や緑の党グリーンズジャパンのベーシックインカムと異なる点があるが、ベーシックインカムに近い制度が実際に導入されている。
- 日本の定額給付金。2009年自民党の麻生政権で実施。原則給付対象者1人につき12,000円の給付を一回限り行うもの。ただし「選挙の票目的のバラマキ」と批判され単回の実施に留まる。
- 日本の2010年6月から2011年9月までの子ども手当。(2011年10月以降の子ども手当は民主党・自民党・公明党の3党合意により、ベーシックインカム的な要素が少なくなっている。さらに2012年6月以降はこれに所得制限が加わりベーシックインカムとはかけ離れた制度になる[51])
- 日本の民間企業が行っている来店ポイント。無償でポイントがもらえ、現金と同様に買い物時に利用できる[52][53]。
- ナミビアのOtjivero-Omitara村の60歳以下の住人930人が対象。
- ブラジルのサンパウロ州のカチンガ・ヴェーニョという100人程度の農村。
- カナダのマニトバ州ドーフィンで1974年から1979年にかけて行われた「en:MINCOME」と呼ばれる実験が行われた。
以下の4つの制度は天然資源を財源にしているため持続可能性は低い。そのため資源の枯渇と同時に制度の維持が困難になる。
ベーシックインカムを支持している政党
グローバルグリーンズに加盟している環境政党がベーシックインカムを支持していることが多い。日本の緑の党グリーンズジャパンもグローバルグリーンズに加盟している。
各国の海賊党がベーシックインカムを支持していることが多い。
韓国では民主労総、進歩新党、旧社会党、旧民主労働党などの左派勢力がベーシックインカムを支持している。これは日本の連合、日本共産党、社民党などの左派勢力がベーシックインカムに反対していることとは対照的である。
日本の政党の動向は
- 日本 - 自由党[31]
- 日本 - 緑の党グリーンズジャパン[32]
- 日本 - 新党日本[15]
- アメリカ合衆国 - アメリカ緑の党
- イギリス - イングランド・ウェールズ緑の党
- イギリス - スコットランド緑の党
- イタリア - 五つ星運動[55]
- オーストリア - オーストリア海賊党[56](液体民主主義によると82%がベーシックインカムに賛成している)[57]
- オーストリア - オーストリア共産党[58]
- オーストリア - 緑の党-緑の選択肢
- オランダ - The Greens
- オランダ - GreenLeft
- カナダ - カナダ海賊党
- カナダ - ケベック連帯
- カナダ - カナダ自由党
- カナダ - プリンスエドワード島新民主党
- カナダ - カナダ緑の党
- 韓国 - 進歩新党[59](進歩新党と合党した旧社会党もベーシックインカムを支持していた)
- ギリシャ - 急進左派連合(現物給付つきベーシックインカムを提唱している)[60]
- スイス - スイス緑の党(2016年のベーシックインカム導入を問う国民投票で賛成するよう呼びかけている)[61]
- スウェーデン - 環境党緑(スウェーデンは世界一福祉が充実した国として知られるが、従来型の福祉では先端部門での雇用確保ができず福祉が機能不全に陥るとして環境党緑はベーシックインカムを提唱している)[62]
- スペイン - ポデモス[63]
- ドイツ - ドイツ海賊党[64](党大会でベーシックインカムを2013年ドイツ連邦議会選挙のマニフェストに取り入れるべきか採決を行い、その結果66.9%の賛成票を得た)[65]
- ドイツ - 左翼党[64]
- ドイツ - 社会主義平等党
- ドイツ - 自由民主党[64]
- ドイツ - 自由民主党-社会自由主義者-
- ドイツ - 同盟90/緑の党[64]
- ドイツ - ドイツ民主党
- ドイツ - 紫の党
- ドイツ - 山の党
- ニュージーランド - ニュージーランド労働党(二大政党の片翼であり次の総選挙で政権公約として掲げるかの検討に着手した)[66]
- フランス - 海賊党(フランス)(2012年フランス議会総選挙の任意政策にて積極的連帯手当・家族手当・住宅手当・失業給付を統合しベーシックインカムに置き換えるとし、年齢や身分に関係なくすべての国民に最低限の生活を送るのに必要な金額を毎月支給するとしており本項で解説しているベーシックインカムに忠実な内容である)[67][68]
- フランス - 共和国連帯[69](2012年フランス大統領選挙にベーシックインカムを提案する候補者が出馬予定であったが推薦人が集まらず出馬を断念)
- フランス - キリスト教民主党(フランス)[69](2012年フランス大統領選挙にベーシックインカムを提案する候補者が出馬予定であったが現職のサルコジ大統領支持を表明し出馬を撤回)
- フランス - ユーロップ・エコロジー・緑の党[69](2012年フランス大統領選挙にベーシックインカムを提案するエヴァ・ジョリが出馬した)
- ブラジル - 労働者党
- ベルギー - Vivant
- ニュージーランド - New Zealand Democratic Party for Social Credit
- ノルウェー - 赤
- ノルウェー - ノルウェー自由党
- ノルウェー - 環境党緑
類似した制度
負の所得税
負の所得税もベーシックインカムと似たような効果を持つ政策であり、実施に当たっては単位が個人ではなく、世帯ごとと構想されることが多い。所得を低く申告して給付を受けようとするインセンティブが働くため、所得申告の際の不正行為を防がなければならない分、行政コストはより掛かるという意見がある[誰?]。
給付付き税額控除
低所得者に税の還付をする制度。負の所得税から派生した所得再分配政策とも言える。給付付き税額控除は、負の所得税と違い、勤労所得がゼロの場合、全く金銭を得ることが出来ない。もう一つの違いは給付付き税額控除は、所得ゼロの状態から勤労収入を得た場合に、ある程度まで、手取り額が負の所得税に比べ大きく増えていく点である。米国においてEITC(Earned Income Tax Credit)という名称で実施されている。また、EITCという制度は25 歳以上 65 歳未満の勤労者を対象とし、就労のインセンティブを促進するため、勤労所得の増加に合わせて税額控除が逓増する部分を設定し賃金を補助する仕組みである。例えば、子供が2人の勤労者の場合、所得$12,570までは所得が1ドル増えるごとに0.4ドル税額控除額が増加する。その後、税額控除額は所得$16,420まで一定額$5,028で、それ以上の収入に対しては、収入1ドルの上昇につき 0.21ドルだけ税額控除が減少し、収入が $40,295 になった時点で税額控除はゼロになるという算出方法である。低所得の人々に優しく、実現が現実的な制度とも言える。
ミニマムインカム
みんなの党のアジェンダに記載されている政策で具体的な内容はアジェンダには全く記載されていないが、みんなの党衆議院議員の柿沢未途の発言によると「最低生活費をまず算定し、収入との差額を給付する形」「無条件での一律の現金支給であるべきではない」としており生活保護や負の所得税に近い主張をしている[42][70]。
2013年秋、スイスでベーシックインカムの導入を訴える10万人の署名が集まり、その可否を問う国民投票が行われる予定であると報道されたが[71]、その一連の報道の中ではミニマムインカムとベーシックインカムは同じ意味で用いられた。
しかし結いの党ではミニマムインカムと給付付き税額控除を同じ意味で用いられておりミニマムインカムがどのような政策を指すかは定まっていない[37]。
ベーシックインカムと他の現金支給型の制度との比較
下の表はベーシックインカムとの類似点を緑色、相違点を赤色で表記している。子ども手当が次第にベーシックインカムからかけ離れた制度になっていく様子がわかる。なお表のベーシックインカムは新党日本および緑の党グリーンズジャパンの公約、ミニマムインカムはみんなの党の公約の内容である。
| ベーシックインカム (新党日本および緑の党グリーンズジャパンの公約) |
ミニマムインカム (みんなの党の公約) |
負の所得税 | 給付付き税額控除 | 定額給付金 | 子ども手当 2010年6月〜2011年9月の制度 |
子ども手当 2011年10月〜2012年5月の制度 |
児童手当 2012年6月以降の制度 |
年金 | 生活保護 | 失業保険 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 支給単位 | 個人 | 不明 | 世帯 | 世帯 | 個人 | 個人と世帯、両方に解釈できる。(金額の計算は個人単位であるが支給先は子供の親・監護者である) | 世帯 (世帯の構成で支給額が異なる・支給先は子供の親・監護者である) |
世帯 (世帯の構成で支給額が異なる・支給先は子供の親・監護者である) |
世帯 (世帯の構成で支給額が異なる) |
世帯 (世帯の構成で支給額が異なる) |
世帯 (世帯の構成で支給額が異なる) |
| 所得制限 資力調査 |
なし | 不明(※あり) | あり | あり | なし | なし | なし | あり | あり | あり | あり |
| 年齢制限 | なし | 不明 | なし | なし | あり (年齢によって給付額が異なる) |
あり | あり (年齢制限がさらに強化されている) |
あり (年齢制限がさらに強化されている) |
あり | あり | あり (年齢によって給付額が異なる) |
| 職種制限 | なし | 不明 | なし | なし | なし | なし | なし | なし | あり(職業によって給付額が異なる) | なし | あり(非正規雇用の場合は 条件によって支給されない) |
| 保険料の支払 | なし | 不明 | なし | なし | なし | なし | なし | なし | あり | なし | あり |
| 支給時期 | 定期的(毎月や毎日など) | 不明 | 確定申告の事後、年に1回 | 確定申告の事後、年に1回 | 1回しか支給されない | 定期的(4ヶ月ごと) | 定期的(4ヶ月ごと) | 定期的(4ヶ月ごと) | 定期的 | 定期的 | 一定の期間しか支給されない |
| 支給額の一律性 | 一律(大金持ちも低所得者も同額) | 不明(※一律ではない (所得が少ないほど支給額が多い・働くと支給額が減らされる)) |
一律ではない (所得が少ないほど支給額が多い・働くと支給額が減らされる) |
一律ではない (所得ごとに複雑に支給額を設定する) |
一律ではない | 一律(大金持ちも低所得者も同額) | 一律ではない | 一律ではない | 一律ではない | 一律ではない | 一律ではない |
| 労働と収入の逆転現象の有無 | なし (働けば働くほど収入が増える) |
不明 | なし (働けば働くほど収入が増える) |
あり (働くと逆に収入が減る場合がある) |
なし (働けば働くほど収入が増える) |
なし (働けば働くほど収入が増える) |
なし (働けば働くほど収入が増える) |
あり (働くと逆に収入が減る場合がある) |
あり (働くと逆に収入が減る場合がある) |
あり (働くと逆に収入が減る場合がある) |
あり (働くと逆に収入が減る場合がある) |
| 裁量行政の有無 | なし | 不明 | なし | なし | なし | なし | なし | なし | あり (第三者委員会の裁量によって消された年金の照合結果が異なる) |
あり (支給するかどうかは職員の裁量に任されている) |
あり (詳細な支給内容は職員の裁量に任される場合がある) |
社会思想との関係
自由主義
基本的人権、生存権といった自然権がベーシックインカム配布の根拠とされる。たとえば経済的自由主義者のフリードリヒ・ハイエクは「組織化されたコミュニティの内部で自らを養うことができない人々に助力の手を差し伸べることは、全員の道徳的義務と感じられるかもしれない。最低所得がなんらかの理由で市場で十分な生活費を稼げなかった人々すべてに対して【市場外】から提供される場合、これは自由の制限にいたることもないし、法の支配と対立することもない。」とし法の支配との整合性の観点から最低限度の生活保障を提唱した。ハイエクは具体的な市場過程への政府の介入については終始一貫して拒絶し続けたが、市場過程の前提となるノモスの法(部族社会的な法)型のルール設計についてはその晩年において許容するようになった[74]。
右派と左派の呉越同舟
ベーシックインカム賛成者には一般的に中道右派政党が主張する新自由主義派と中道左派政党が主張する福祉重視派の両者がおり、右派と左派の両方にベーシックインカム賛成者がいる[75]。
実際に、日本の2010年の参院選において、最右派政党であるたちあがれ日本の議員や右派政党である自民党の議員、左派政党の社民党の議員がベーシックインカム賛成派として右派左派関係なく当選している[44]。
功利主義
社会学者の大澤真幸によれば、ベーシックインカムは「修正版功利主義」を体現する原理とみなすことができるという。功利主義とは、「最大多数の最大幸福」を目標として社会設計を行う思想であるが、「最大多数」と「最大幸福」という2つを同時に達成しようとすると「幸福の総和さえ大きくなれば個人の権利は軽視される」という難点が生じる。そこで目標を「最大多数の一定幸福」というように切り替えた修正版の功利主義を考えれば、最低限の生活水準をおくれるだけの資金(=一定幸福)を無条件に国民全員へ(=最大多数)給付するベーシックインカムの思想と結びつくことになる。[76]
ワークシェアリング
ワークシェアリングは人々の間で労働を分け合う制度であるが、ベーシックインカムとワークシェアリングを組み合わせる提案も見られる。個人から見ると働き方の自由化、企業から見ると雇用の多様化を実現できる。個人(雇われる側)がワークシェアリングに反対する理由は主に収入である[77]。仕事をシェアすることで労働時間は減るが、それだけ一人一人の収入も減ることになる。しかし、ベーシックインカムで収入が下支えされれば、仕事をシェアしてもよいと考える人は増えるであろう。一方、企業(雇う側)の反対理由の一つは、雇用者を増やすことで社会保障費がかさむことである[78]。これもベーシックインカムによりクリアできる可能性がある[注釈 3]。ワークシェアリングを社会全体に普及させるには法による制度化が必要であるが、制度を適用するに当たっては個人の意思を尊重すべきである。できるだけ多くの人に仕事を分け与えようとフルタイムで働きたい者にまでワークシェアリングを強制される可能性もある。ベーシックインカムは自由主義・資本主義経済の下で行うことを前提としている。
脚注
注釈
出典
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関連項目
外部リンク
- BIEN Home
- ベーシックインカム・実現を探る会
- ベーシックインカムとは何か?に関する簡潔で十分な解説 - Philippe Van Parijsの著作(2004)について齊藤拓による翻訳(20100824)
- ベーシックインカム(BI)に関する日本での議論