一力遼
一力 遼(いちりき りょう、1997年6月10日 - )は、日本棋院東京本院所属の囲碁棋士。宮城県仙台市青葉区出身。宋光復九段門下。東北放送・河北新報社を経営する一力家出身。
| 一力遼 八段 | |
|---|---|
| 名前 | 一力遼 |
| 生年月日 | 1997年6月10日(28歳) |
| プロ入り年 | 2010年 |
| 出身地 | 宮城県 |
| 所属 | 日本棋院東京本院 |
| 師匠 | 宋光復 |
| 段位 | 八段 |
| 概要 | |
| タイトル獲得合計 | 5 |
| 七大タイトル | |
| 棋聖 | 挑戦者(2018) |
| 王座 | 挑戦者(2017) |
| 天元 | 挑戦者(2016・17) |
| 世界タイトル | |
| グロービス杯 | 優勝 (2014) |
第42期棋聖戦挑戦者。天元戦挑戦者2回。第65期王座戦挑戦者。NHK杯準優勝2回。2014年グロービス杯世界囲碁U-20優勝。
人物
父は河北新報社代表取締役社長の一力雅彦、祖父は元河北新報社社主の一力一夫[1]、叔父に東北放送代表取締役社長の一力敦彦を持つ、一力一族の御曹司。
棋界にある最年少記録を次々に塗り替えていき、井山裕太を追う次世代の最右翼に挙げられている、若手棋士の筆頭候補。
一人っ子のため、将来的に家業を継がなければならず、一線級の囲碁棋士としては非常に珍しく、プロ入り後に早稲田大学へ入学している[2]。
経歴
父の手ほどきによって5歳で囲碁を覚えた。
2005年、仙台市立片平丁小学校2年の時に少年少女囲碁大会全国大会に出場。3位となる後の院生に敗れ、2勝1敗でリーグ敗退[3]。その後、院生となり院生研修のあった週末は仙台から上京していた[4]。
2008年、5年生の時「もっと碁を学びたい」と母と共に都内に転居[5]。冬季採用試験では、稲葉貴宇・安達利昌らに次ぐ12位で入段は出来なかった[6]。
2009年、冬季棋士採用試験に臨むが、竹内康祐・沼舘沙輝哉らに次ぐ4位で入段は出来なかった[7]。
2010年、東京都立白鴎高校付属中学1年時、夏季棋士採用で6月の院生順位1位により入段を果たす[8][9][10]。同年9月1日に初段。
2011年、第8回中野杯U20選手権3位、第21期竜星戦本戦に出場、第37期新人王戦本戦入り、同年12月22日に棋聖戦最終予選に進む。
2012年1月1日、二段(賞金ランキング)。 同年3月19日に第3回おかげ杯本戦入り、同年10月28日に第9回中野杯U20選手権優勝。同年11月18日に第7回若鯉戦準優勝。
2013年1月1日、 三段(賞金ランキング)。 同年5月16日、第4回おかげ杯で安斎伸彰を降し、優勝。同年8月19日に第20期阿含・桐山杯準決勝進出。同年9月26日に16歳3カ月16日で第52期十段戦本戦入り。これは十段戦本戦入りの最年少記録。以前の記録は、趙治勲と井山裕太の18歳[11]。同年11月18日に第8回若鯉戦で富士田明彦新人王を降し、初の公式戦優勝。文藝春秋の企画「人材はここにいる」にて、各界の逸材108人を選んだ中、囲碁界からただ一人選出。「タイトル歴のあるベテラン棋士が、彼に見解を聞きに来る」という逸話が紹介された。
2014年1月1日、四段(賞金ランキング)。 同年3月21日 第39回棋聖戦リーグ入りを果たし、規定により七段昇段。これは井山裕太の17歳10カ月(2007年棋聖戦リーグ)を抜き、三大リーグ入りの最年少記録となった(16歳9カ月)[12](0勝5敗で陥落)。同年5月11日 、第1回グロービス杯世界囲碁U-20において、韓国の羅玄、中国の連笑といった次世代最強と目される棋士を立て続けに下し、決勝で日本(台湾出身)の許家元を破り、国際棋戦優勝を飾った[13]。同年5月16日、第5回おかげ杯決勝で瀬戸大樹を降し、二連覇。同年8月21日、第40期天元戦本戦初出場で準決勝進出、挑戦者となる高尾紳路に敗れる。同年9月25日、第39期新人王戦で志田達哉を2-1で降し、17歳3カ月で史上最年少新人王となった[14]。 同年11月11日、第1回イベロジャパン杯 (非公式戦)で許家元を降し、優勝。
2015年、第62回NHK杯決勝で、伊田篤史に敗れて準優勝。ちなみに、この決勝はどちらが優勝しても最年少記録であった。同年10月20-22日、第17回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦の第1-3戦で、依田紀基以来10年ぶりとなる3連勝を達成。
2016年4月、早稲田大学社会科学部に入学。同年9月2日、第42期天元戦の本戦決勝で山下敬吾を下し、井山裕太天元への挑戦権を獲得。現行の七大タイトル戦史上、10代の挑戦者は2008年の名人戦に19歳で登場した井山に続き2人目[15]。同年9月26日、第26期竜星戦の決勝で井山裕太を下し、優勝する。同年9月27日、第18回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦の第1戦、棋界の第一人者・李世乭を撃破する快挙を成し遂げた[16]。
2017年、中国の団体戦「中国囲棋甲級リーグ戦」に重慶チームのメンバーとして参加[17]。8月25日、第65期王座戦本戦決勝で芝野虎丸七段に勝利し挑戦権獲得。続いて8月31日、第43期天元戦本戦決勝で山下敬吾九段を破り2年連続で挑戦権を獲得。王座・天元ともにタイトルホルダーは井山裕太七冠なので挑戦手合計10番勝負を行うことになった[18]。9月7日、第42期棋聖戦Sリーグで1位になり挑戦者決定トーナメント進出。11月9日、棋聖位挑戦者決定戦で山下敬吾九段に勝利しアドバンテージの1勝を合わせて2勝となり挑戦権獲得。20歳7カ月での棋聖位挑戦は井山の21歳7カ月を更新し史上最年少記録[19]。これで王座戦・天元戦も続き3戦連続の挑戦手合となり、棋聖位も井山裕太なので史上初の3棋戦連続同一カード「十七番勝負」となった[20]。10日、三大タイトルの挑戦権獲得にて規定により八段に昇段[21]。
棋風
早見え早打ちの天才肌。優れた大局観と柔軟な発想を持ち、序盤から意欲的に勝負を仕かけていく力戦型。早碁に強く、日本勢が総じて苦戦している国際棋戦で、1人気を吐いている。
タイトル戦決勝進出結果
優勝5回
- 公式戦のみ
- 囲碁のタイトル在位者一覧も参照
| 棋戦 |
| 三大タイトル (-) |
| 他・七大タイトル (0-1) |
| 世界タイトル (1-0) |
| 結果 | 数 | 棋戦 | 期・回 | 決着日 | 勝敗 | 相手 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 準優勝 | 1 | 若鯉戦 | 第7回 | 2012年11月18日 | 0-1 | 鈴木伸二三段 |
| 優勝 | 1 | 若鯉戦 | 第8回 | 2013年11月17日 | 1-0 | 富士田明彦新人王 |
| 優勝 | 2 | グロービス杯U-20 | 第1回 | 2014年5月11日 | 1-0 | 許家元二段 |
| 優勝 | 3 | 新人王戦 | 第39期 | 2014年9月25日 | 2-1 | 志田達哉七段 |
| 準優勝 | 2 | NHK杯 | 第62回 | 2015年3月15日 | 0-1 | 伊田篤史八段 |
| 優勝 | 4 | 竜星戦 | 第25期 | 2016年9月26日 | 1-0 | 井山裕太棋聖 |
| 優勝 | 5 | 若鯉戦 | 第11回 | 2016年11月27日 | 1-0 | 本木克弥七段 |
| 挑戦 | 3 | 天元戦 | 第42期 | 2016年12月12日 | 1-3 | 井山裕太天元 |
| 準優勝 | 4 | NHK杯 | 第64回 | 2017年3月19日 | 0-1 | 井山裕太棋聖 |
| ? | 王座戦 | 第65期 | 2017年 | 井山裕太王座 | ||
| ? | 天元戦 | 第43期 | 2017年 | 井山裕太天元 | ||
| 棋聖戦 | 第42期 | 2018年 | 井山裕太棋聖 |
昇段・良績
記録
- 最年少十段戦本戦入り 16歳3カ月。
- 最年少リーグ入り 棋聖戦リーグ 16歳9カ月。
- 最年少新人王 17歳3カ月(当時)。
- 最年少竜星 19歳3ヵ月。
- 最年少天元戦挑戦者 19歳4ヵ月。
- 最年少王座戦挑戦者 20歳4ヵ月。
- 最年少棋聖戦挑戦者 20歳7ヶ月。
- 3棋戦連続同一カード(2016年王座戦~2017年棋聖戦)
タイトル・棋戦優勝歴・良績
国際棋戦
- グロービス杯世界囲碁U-20 1回(2014年・第1回)
- 農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦
- 第16回(○卞相壹、●柁嘉熹)
- 第17回(○白賛僖、○范蘊若、○閔詳然、鄔光亜●)
- 第18回(○李世乭、●范廷鈺)
国内棋戦
非公式戦
主要な良績
受賞履歴
- 国際賞 1回(2014年・第48回)
- 新人賞 1回(2013年・第47回)
- 勝率第1位賞 1回(2013年・第47回)
脚注
- ^ “かわら版NIPPON 49号” (PDF). 日本製紙株式会社新聞営業本部 (2011年1月1日). 2014年7月22日閲覧。
- ^ “一力遼七段、早稲田の杜へ「文碁両道」まっしぐら”. 産経ニュース. (2016年5月23日) 2017年7月18日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “第26回少年少女囲碁大会”. 日本棋院 2014年7月21日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 「次世代人 囲碁棋士 一力遼さん 13 王子が始動 まず一勝」『読売新聞夕刊』2010年8月7日
- ^ 「顔 若手棋戦で優勝した高校棋士 一力遼さん」『読売新聞』2013年5月25日
- ^ 平成21年度冬季棋士採用試験本戦
- ^ 平成22年度冬季棋士採用試験本戦
- ^ 産経新聞 解答乱麻 2010年10月3日閲覧
- ^ “夏季採用棋士決定”. 日本棋院. (2010年7月2日) 2014年7月21日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “中1一力君、囲碁のプロ棋士に 仙台出身”. 共同通信. (2010年6月27日) 2014年7月21日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 産経新聞 2013年10月23日囲碁欄
- ^ “一力四段、棋聖戦リーグ入り 史上最年少の16歳9カ月”. 共同通信. (2014年3月21日) 2014年7月21日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “世界囲碁、一力が初代優勝者に 若手棋士のグロービス杯”. 共同通信. (2014年5月11日) 2014年7月21日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “一力が新人王獲得!【第39期新人王戦決勝三番勝負第3局】”. 日本棋院. (2014年9月25日) 2014年12月31日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 囲碁天元戦、19歳の一力七段が挑戦権 井山天元に挑む
- ^ 日本棋院
- ^ 一力七段、甲級リーグへ参戦(日本棋院)
- ^ <一力七段 2タイトル戦に挑む>天下分け目の10番勝負
- ^ <囲碁>一力七段、棋聖への挑戦権/決定戦 山下九段に勝利
- ^ 井山・一力「十七番勝負」に 初の3棋戦連続同一カード
- ^ a b 【昇段】一力 遼八段に昇段
- ^ “一力が新人王獲得!【第39期新人王戦決勝三番勝負第3局】”. 日本棋院. (2014年9月25日) 2014年12月31日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “一力七段、初優勝 囲碁・グランドチャンピオン戦”. 朝日新聞デジタル. (2017年3月23日) 2017年7月18日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “一力七段が初優勝 囲碁グランドチャンピオン戦”. 河北新報. (2017年3月19日) 2017年7月18日閲覧。
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著書
監修
- 洪道場編 一力遼、藤沢里菜監修 『洪道場秘伝問題集 (囲碁人ブックス)』 マイナビ出版、2015年。ISBN 4839957207