アメリカ欧州軍
アメリカ軍における地域別統合軍
アメリカ欧州軍(アメリカおうしゅうぐん、英語:United States European Command、略称:USEUCOM)は、アメリカ軍の統合軍の一つ。司令部はドイツのシュトゥットガルト。現任司令官はカーチス・スカパロッティ陸軍大将(前・在韓米軍司令官、2016年 - )。
| アメリカ欧州軍 | |
|---|---|
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| 創設 | 1952年8月1日 |
| 所属政体 |
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| 所属組織 | アメリカ軍 |
| 編制単位 | 地域別統合軍 |
| 所在地 | ドイツ シュトゥットガルト |
| 特記事項 | USEUCOM |
概要
責任地域 (AOR, area of responsibility)には、ヨーロッパ諸国の全て、トルコ、グリーンランド、および旧ソ連諸国の大部分[1]が含まれている。それゆえに、欧州軍は冷戦期における主要な司令部であった。かつてはアフリカ大陸の西部・南部も担当地域であったがこれは2008年に設立されたアフリカ軍に移管された。
また近年のコソボ紛争へのアメリカの介入においても主要な役割を果たし、湾岸戦争とそれに引き続くノーザン・ウォッチ作戦においても、トルコのインジルリク空軍基地(en:Incirlik Air Base)から出撃する航空兵力の統制を行うなど重要な役割を果たした。
欧州軍の司令官はまたNATO軍の機構において、欧州連合軍最高司令官(en:Supreme Allied Commander, Europe, SACEUR)の役割をも務める。
編制
欧州軍は、陸・海・空軍および海兵隊、特殊作戦の5つの主要サブコマンドを基幹として編成されている。
- 在欧陸軍(USAREUR)
- 欧州軍の陸軍構成部隊。司令部はドイツ・フランクフルト・アム・マイン近郊のヴィースバーデン陸軍飛行場(Wiesbaden Army Airfield)に所在。
- 陸軍の野戦軍としては第7軍という番号を与えられており、冷戦期のほとんどの期間においては第3・第5の2個軍団 、計4個師団を指揮下においていたが、現在は2個旅団戦闘団基幹にまで縮小されている。
- 在欧海軍(USNAVEUR)
- 欧州軍の海軍構成部隊。司令部はイタリア・ナポリのナポリ海軍支援施設(NSA Naples)に所在。海軍の艦隊としては第6艦隊という番号を与えられており、ガエータを母港とする。地中海および大西洋東部を哨戒海域とし、NATOの周辺海域の防護に当たる。
- 現在では、ジブラルタル海峡とスエズ運河の間を通航する海上交通に対し、テロリズムからの防護を提供する任にもあたっている。通常は原子力空母を配備されておらず、水上戦闘群と両用即応群、潜水艦部隊などを隷下にもつ。
- 在欧空軍(USAFEUR)
- 欧州軍の空軍構成部隊。司令部はドイツ・カイザースラウテルン近郊のラムシュタイン空軍基地(Ramstein Air Base)に所在。
- 冷戦期のほとんどの期間においては、第3空軍および第16空軍の2個航空軍を有していたが、現在では第3空軍のみとなっている。このように、冷戦期の高水準の戦力からすると大幅に縮小されており、紛争地に航空戦力を派遣するにあたっても、合衆国本国から飛来する部隊があたる割合が大きくなっている。
- 在欧海兵隊(USMARFOREUR)
- 欧州軍の海兵隊構成部隊。司令部はドイツ・ベーブリンゲン(Panzer Kaserne)に所在。海兵隊総軍より兵力の提供を受け、欧州地域の陸上において海兵隊部隊を管轄する。
- 必要に応じて、海軍の第62任務部隊(揚陸部隊)および第68任務部隊(警備部隊)に部隊を派出するが、この際には、作戦統制の権限は海軍第6艦隊司令官、部隊管理の責任は大西洋艦隊海兵軍司令官に移譲される。
- 在欧特殊作戦軍(USSOCEUR)
- 欧州軍において特殊作戦を管轄する部隊。シュトゥットガルト‐ヴァーリンゲンのパッチ駐屯地(Patch Barracks)に司令部を置いている。
歴代司令官
欧州軍の指揮官は当初「最高司令官(Commander-in-chief)」と称されていたが、ドナルド・ラムズフェルド国防長官発令の2002年10月24日付の命令により、アメリカ合衆国軍内全ての「最高司令官」は「司令官」に改称され指揮序列の明確化が図られた。
また、欧州軍司令官はNATOの欧州連合軍最高司令官を兼務している。
| 代 | 写真 | 氏名 | 軍種 | 着任 | 離任 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 最高司令官(Commander-in-chief) | |||||||
| 1 | マシュー・リッジウェイ陸軍大将 Matthew Ridgway |
アメリカ陸軍 | 1952年5月30日 | 1953年7月11日 | |||
| 2 | アルフレッド・グランサー陸軍大将 en:Alfred Gruenther |
アメリカ陸軍 | 1953年7月1日 | 1956年11月20日 | |||
| 3 | ローリス・ノースタッド空軍大将 en:Lauris Norstad |
アメリカ空軍 | 1956年11月20日 | 1963年1月1日 | |||
| 4 | ライマン・レムニッツァー陸軍大将 Lyman Lemnitzer |
アメリカ陸軍 | 1963年1月1日 | 1969年7月1日 | |||
| 5 | アンドリュー・グッドパスター陸軍大将 en:Andrew Goodpaster |
アメリカ陸軍 | 1969年7月1日 | 1974年12月15日 | |||
| 6 | アレクサンダー・ヘイグ陸軍大将 Alexander Haig |
アメリカ陸軍 | 1974年12月15日 | 1979年7月1日 | |||
| 7 | バーナード・ロジャース (軍人)陸軍大将 en:Bernard W. Rogers |
アメリカ陸軍 | 1979年7月1日 | 1987年6月26日 | |||
| 8 | ジョン・ガルビン陸軍大将 en:John Galvin (soldier) |
アメリカ陸軍 | 1987年6月26日 | 1992年6月23日 | |||
| 9 | ジョン・シャリカシュヴィリ陸軍大将 John Shalikashvili |
アメリカ陸軍 | 1992年6月23日 | 1993年10月22日 | |||
| 10 | ジョージ・ジョルワン陸軍大将 en:George Joulwan |
アメリカ陸軍 | 1993年10月22日 | 1997年7月11日 | |||
| 11 | ウェズリー・クラーク陸軍大将 en:Wesley Clark |
アメリカ陸軍 | 1997年7月11日 | 2000年5月3日 | |||
| 司令官(Commander) | |||||||
| 12 | ジョセフ・ラルストン空軍大将 en:Joseph Ralston |
アメリカ空軍 | 2000年5月3日 | 2003年1月17日 | |||
| 13 | ジェームス・ジョーンズ海兵大将 en:James L. Jones |
アメリカ海兵隊 | 2003年1月17日 | 2006年12月7日 | |||
| 14 | バンツ・クラドック陸軍大将 en:Bantz J. Craddock |
アメリカ陸軍 | 2006年12月7日 | 2009年6月30日 | |||
| 15 | ジェームス・スタヴリディス海軍大将 en:James G. Stavridis |
アメリカ海軍 | 2009年6月30日 | 2013年5月10日 | |||
| 16 | フィリップ・ブリードラヴ空軍大将 | アメリカ空軍 | 2013年5月10日 | 2016年5月3日 | |||
| 17 | カーチス・スカパロッティ陸軍大将 | アメリカ陸軍 | 2016年5月3日 | ||||
注記
外部リンク
- USEUCOM Homepage …公式サイト