プルトニウム

原子番号94の元素

これはこのページの過去の版です。煮凝り (会話 | 投稿記録) による 2006年10月7日 (土) 13:39個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (en:Plutonium 04:59, 1 July 2006より翻訳)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

Np - プルトニウム - Am
Sm
Pu
  
 
 
一般特性
名称, 記号, 番号プルトニウム, Pu, 94
分類アクチノイド
, 周期, ブロック3, 7, f
密度, 硬度19,840 kg/m3, n/a
銀色
プルトニウム
原子特性
原子量239.05 amu
原子半径 (計測値)151 pm
共有結合半径データなし
VDW半径データなし
電子配置[Rn]5f6 7s2
電子殻
酸化数酸化物+3, +4, +5, +6
結晶構造##
物理特性
(__)
融点913 K
沸点3,503 K
モル体積12.30 10-6 m3/mol
気化熱2.8 kJ/mol
融解熱344 kJ/mol
蒸気圧ND Pa (1323 K)
音の伝わる速さND m/s (293.15 K)
その他
電気陰性度1.28 (ポーリング)
比熱容量130 J/(kg*K)
導電率150 μΩcm
熱伝導率6.74 W/(m*K)
第1イオン化エネルギー581.44 kJ/mol
(比較的)安定同位体
同位体NA半減期DMDE MeVDP
236Pu{syn.}2.86 α5.867232U
238Pu{syn.}87.7 年α5.593234U
239Pu{syn.}2.4110×104α5.245235U
240Pu{syn.}6,564 年α5.256236U
241Pu{syn.}14.4年 β--241Am
242Pu{syn.}3.733×105α4.984238U
244Pu{syn.}8.08×107α4.666240U
注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。

プルトニウム (Plutonium) は原子番号 94 の元素である。元素記号Puアクチノイド元素の一つ。ウラン鉱石中にわずかに含まれていることが知られる以前は、完全な人工元素と考えられていた。超ウラン元素で、放射性元素でもある。プルトニウム239、241その他いくつかの同位体が存在している。半減期はプルトニウム239の場合約2万4000年(アルファ崩壊による)。比重は、19.8 あり、大変重い金属である(結晶構造は単斜晶)。融点摂氏639.5℃、沸点は摂氏3230℃(沸点は若干異なる実験値あり)。硝酸濃硫酸には不動態となり溶けない。塩酸希硫酸などには溶ける。原子価は、3価~6価(4価が最も安定)。 プルトニウムおよびプルトニウム化合物は人体に非常に有害である。プルトニウムはアルファ線を放出するため、プルトニウムの粒子を吸込んだ時、強い発癌性を持つ。

原子炉において、ウラン238中性子を捕獲してウラン239となり、それがベータ崩壊してネプツニウム239になり、更にそれがベータ崩壊してプルトニウム239ができる(原子炉内では他のプルトニウム同位体も多数できる)。ウラン238は天然に存在するのでネプツニウム239とプルトニウム239は極微量ながら天然にも存在する。また半減期が約8000万年とプルトニウム同位体の中では最も長いプルトニウム244も極微量天然に存在する。なお、プルトニウム239および240とそれらの放射壊変物の飛沫の吸引はWHOの下部機関IARCより発癌性があると (Type1) 勧告されている。

プルトニウム238は原子力電池に利用される。


特性

プルトニウムは金属状態では銀色だが、酸化された状態では黄褐色となる。金属プルトニウムは温度が上がると収縮する。また、低対称性構造を有するので、時間経過と共に次第に脆くなる。

アルファ粒子の放出による熱のため、ある程度の量のプルトニウムは触ると暖かい。大きい量では水を沸騰させることもできる。

水溶液中では5種類のイオン価数を有する:

  • III価……Pu3+(青紫色)
  • IV価……Pu4+(黄褐色)
  • VI価……PuO22+。(ピンク、オレンジ色)
  • V価……PuO2+。(ピンク色と考えられている。V価のイオンは溶液中では不安定で、Pu4+とPuO2+不均化反応する。さらにそのPu4+はPuO2+をPuO22+に酸化し、自身はPu3+になる。こうしてプルトニウムの水溶液は時間が経過するとPu3+とPuO22+の混合物に変化する傾向がある。)
  • VII価……PuO52-(暗赤色)VII価のイオンは稀であり極端に酸化性雰囲気下でのみ生成する。

註:ここで示したプルトニウム溶液の色は、酸化状態のほか陰イオンにも依存する。陰イオンの種類によりプルトニウムの錯体形成の度合いが変わるため。


利用

同位体239Puは、核分裂の起きやすさと合成の容易さのため、現代の核兵器における主要な核分裂性物質である。 反射体のない球状プルトニウムの臨界量は16kgだが、中性子を反射するタンパーを用いると核兵器中のプルトニウムピットは10kg(直径10cmの球に相当)まで減らすことができる。 1kgのプルトニウムが完全に反応したとすると、20キロトンのTNT相当の爆発を生むことができる。

プルトニウムは放射線兵器の製造や(特に致命的ではないが)毒物としても利用されうる。

同位体238Puは半減期87年のアルファ放射体である。これらの特性により、人間の寿命程度のタイムスケールで直接保守することなく機能する必要がある機器の電力源に適している。そのため、宇宙探査機ガリレオやカッシーニの電源として同位体電池に持ちいられた。同様の技術が、アポロ月面探査計画における地震実験にも用いられた。

238Puは人工心臓のペースメーカーの電源にも用いられ、手術を繰り返すリスクを避けるのに役立っていた。近年ではほとんどが誘導電流で充電可能なリチウム電池に置き換わってきているが、2003年時点では50から100個程度のプルトニウム電源のペースメーカーが患者に埋め込まれている。 (訳註:日本では放射性同位体の規制のためプルトニウム電源のペースメーカーは使用されていない)


環境中のプルトニウム

大部分のプルトニウムは人工的に合成されるが、極めてわずかな痕跡量のプルトニウムがウラン鉱石中に自然に発生する。 これらは、238U原子核が中性子を捕獲して239になり、その後二回のベータ崩壊により239Puになる。 この過程は原子炉中でプルトニウムを生産するのと同様である。

244Puの痕跡が、超新星爆発から太陽系の誕生以来残っている。 この核種の半減期が相当に長い(8千万年)からである。

1972年にガボン共和国オクロにある天然原子炉で比較的高濃度の天然プルトニウムが発見された。

1945年以来、約10トンのプルトニウムが、核実験を通じて地球上に放出された。 核実験のフォールアウトのために、既に世界中の人体中に1~2ピコキュリーのプルトニウムが入っている。[4] フォールアウト起源のプルトニウムが地表面の土壌に0.01~0.1 pCi/g存在する。[5] このほか、原子力施設等の事故により局地的な汚染が存在する。

環境中のプルトニウムはほとんど二酸化プルトニウムの化学形で存在しているが、これは非常に水に溶けにくい。[6] 100万klの純水にプルトニウム原子1個が溶ける程度であるといわれている。

いったん高温で焼き締めた二酸化プルトニウムは硝酸にも難溶となるが、フッ酸を加えると溶ける。[8]


化合物

プルトニウムは酸素と容易に反応し、PuO、PuO2を産する。 また、その中間の酸化物も生成する。 また、ハロゲンとも反応し、PuX3の形の化合物を作る。 Xはフッ素、塩素、臭素またはよう素である。 PuF4およびPuF6も見られる。 PuOCl、PuOBrおよびPuOIのようなオキシハライドも見られる。

炭素と反応してPuC、窒素と反応してPuN、またケイ素と反応してPuSi2を形成する。

プルトニウムは他のアクチニド元素と同様、二酸化プルトニル(PuO2)を形成するが、 自然環境中では炭酸など酸素を含む錯イオン(OH-、NO2-、NO3-およびSO42-)と電荷のある錯体を作る。 こうしてできた錯体は土との親和性が低く容易に移動する:

  • PuO2(CO3)2-
  • PuO2(CO3)24-
  • PuO2(CO3)36-

強い硝酸酸性溶液を中和して作ったPuO2は、錯体にならないPuO2重合体を生成しやすい。 プルトニウムはまた価数が3、4、5、6価の間で変化しやすい。 ある溶液のなかでこれら全ての価数で平衡して存在することも珍しくない。


同素体

常圧下でもプルトニウムはさまざまな同素体を持つ。 これらの同素体は、結晶構造や密度が大きく異なる。 α相とδ相では密度は25%以上も違うのだ。

さまざまな同素体を持つということが、プルトニウムの機械加工を非常に難しいものにしている。 相が非常に容易に変わってしまうからである。 このような複雑な相変化をする理由は完全には解明されていない。 最近の研究では、相変化の精密なコンピュータモデルに着目している。

兵器への利用においては、相の安定性を増し作業性と取り扱いを容易にする狙いで、プルトニウムはしばしばほかの金属と合金にして用いられる。 例えば、δ相に数パーセントのガリウムを加えるなど。 核分裂兵器においては、プルトニウムのコアを爆縮するための爆発の衝撃波も相変化の原因になる。 このとき通常のδ相からより密度の高いα相に変化するので、超臨界を達成するのに大いに助けになる。


同位体

人類の利用の観点で重要な同位体はPu-239(核兵器と原子炉燃料に適)およびPu-238(原子力電池に適)である。 同位体Pu-240は、Pu-239が中性子に照射されると発生するが、これは非常に容易に自発核分裂を起こす。 Pu-240そのものはほとんど役に立たないが、核兵器で使用されるプルトニウム中での不純物として重大な役割を果たす。 Pu-240は自発核分裂により中性子をランダムに放出するので、ある希望の瞬間に正確に連鎖反応を始めることを難しくする。 こうしてその爆弾の信頼度および出力を減少させる。

Pu-239の中に1%の不純物としてPu-240が含まれると、ガンバレル型核兵器の中で分裂連鎖反応が受容しがたいほど早く始まり、その材料がほとんど核分裂しない間にその兵器をばらばらに吹き飛ばしてしまうだろう。 Pu-240の混入が避けられないことが、プルトニウム武器ではインプロージョン方式の設計にしなければならない理由である。 理論的には100%純粋なPu-239ならばガンバレル型装置を構築することができるかもしれないが、このレベルの純度は現実には達成し得ないほど困難である。 Pu-240の混入は兵器設計家にとってはメリットでもありデメリットでもあった。 混入問題のためにインプロージョン技術を開発する必要が生じ、マンハッタン・プロジェクトに遅れと障害をもたらした一方で、同じくその障害は現在では核拡散に対する障壁になったのである。 Pu-239の同位対比が約90%を越えるプルトニウムは兵器級プルトニウムと呼ばれ、一方、一般的な商用原子炉から得られたプルトニウムは少なくとも20%のPu-240を含んでおり、原子炉級プルトニウムと呼ばれる。


取り扱い上の注意

プルトニウムの同位体および化合物はすべて有毒で放射性である。 プルトニウムは、しばしば「人に知られているうちで最も強い有毒物質」としてメディアに報じられるが、この分野の専門家の間ではそれは正しくないというのがコンセンサスである。

2006年の時点で、(プルトニウムによる臨界事故を除くと)プルトニウム自体への接触による起因する死亡事例は公式には存在しない。 自然に存在するラジウムはプルトニウムの約200倍の放射性毒性をもっている。 経口摂取した場合では、プルトニウムはカフェインアセトアミノフェン、いくつかのビタミン塩酸プソイドエフェドリンを含むいくつかのありきたりの物質、およびいくつかの植物と菌類ほど有毒ではない(癌を引き起こす危険を除いて)。 特にボツリヌス毒素は、プルトニウムが顕著な癌リスクをもたらす量よりはるかに少ない300pg/kgの致死量を持っている。 恐らく純粋なエタノールよりいくぶん有毒であるが、タバコやその他多くの違法ドラッグよりは少ない。

リシン河豚毒ボツリヌストキシンおよび破傷風毒素等の物質は1ミリグラム未満(ものによってはミリグラムよりはるかに少ない)服用量で致命的である。 また、他のもの(神経ガステングタケの毒素)は数ミリグラムの範囲にある。 よって、プルトニウムの毒性の面で飛びぬけて異常なわけではない。 さらに、これらの物質は数時間ないし数日で死に至るのに対し、プルトニウム(または他の癌を引き起こす放射性物質)はその後数十年間病気の確率が増加する。 もし相当に大量のプルトニウムを嚥下または吸入したならば、急性放射線障害および死を引き起こすかもしれないが、これまでのところ人間がプルトニウムの吸入または嚥下のために直ちに死亡した例は知られていない。 また、多くの人々が彼らの体内に測定可能な量のプルトニウムを持っている。


  • 経口摂取の毒性の比較
    • ソーセージ中毒……0.000001g以下
    • ヒ酸鉛……約0.1g
    • 酸化セレン……約0.3g
    • 青酸カリ……約0.7g
    • 塩化第二水銀……約0.8g
    • カフェイン……14g
    • 原子炉級プルトニウム……1.15g(発ガンによるリスク)


純粋に化学的見地からは、鉛およびその他の重金属とほぼ同じくらい有毒である。 当然ながら、プルトニウムは金属っぽい味がする。[1]

プルトニウムは、不適正に扱われるならば非常に危険なのは疑う余地が無い。 プルトニウムが放射するアルファ放射線は皮膚を透過しないが、プルトニウムが吸入されるか嚥下される場合、内臓が照射されることになる。 特にリスクが高いのは(骨表面に吸収されやすい)および肝臓であり、これらはプルトニウムが集まり濃縮しやすい箇所である。 骨髄に吸収された量にしておよそ0.008マイクロキュリーが最大許容量であり、これを越える量は有害であると考えられる。 もし吸入されれば、プルトニウムの極微小なマイクログラムオーダーの微粒子は肺癌を引き起こすことができる。

プルトニウムと人体

プルトニウムを嚥下し消化管に入った場合、そのおよそ0.05%程度が吸収され、残りは排泄される。[6] 吸収されたプルトニウムは、骨と肝臓にほぼ半々の割合で移行しそこに留まる。 皮膚との接触については、傷の無い皮膚からは吸収されない。

最も重要な取り込み経路は、空気中に粒子状になったプルトニウムの吸入である。 気道から吸入された微粒子は、大部分が気道の粘液によって食道へ送り出されるが、残り(4分の1程度)が肺に沈着する。 沈着した粒子は肺に留まるか、胸のリンパ節に取り込まれるか、あるいは血管を経由して骨と肝臓に沈着する。[7]

プルトニウムはひとたび吸収すると体外へ排出されにくいのが特徴である。 生物学的半減期はウランやラジウムと比べてもずっと長く、骨と肝臓についてそれぞれ20年と50年である。 吸収線量あたりの有害さは核種や同位体によらずラジウム等と同程度であるが、プルトニウムの扱いに特に注意が必要なのは、まさに排出されにくいという特徴によるものである。

プルトニウムの化学的毒性については実験的に確かめられていない。 化学毒性が現れるであろう量よりも少ない量でも放射線のために死亡すると予想されるため、化学毒性だけを取り出した評価は無い。 化学毒性については、ウランと同様に腎臓への障害が予想され、その大きさは鉛と同程度と推定される。 (鉛はプルトニウムよりも人類に馴染みのある元素だが相当に有害な物質でもある。詳しくはまたは四エチル鉛を見よ。) また、ランタニド元素とアクチニド元素の同じ順番にある元素は互いに似ている傾向があることから、プルトニウムはランタニドで同じ順番にあるサマリウムと似ていると考えられている。

プルトニウムは人体には全く不必要な元素である。プルトニウム同様毒性の強いヒ素は必須ミネラルであり微量は人体にとっても必要であるが、プルトニウムは必須ミネラルでさえない。その点においてはやはり人体に全く不必要な(単体は弱い毒性を持ち、化合物は強い毒性を持つ)と共通しているといえる。

ホットスポット仮説

臨界管理

毒性の問題を別にしても、特にプルトニウムの臨界量がウラニウム-235のそれの3分の1しかないので、臨界量に近い量のプルトニウムが蓄積しないように注意しなければならない。 形状が重要である。すなわち球体のようなコンパクトな形にしてはならないのである。 溶液状のプルトニウムは固体より少ない量で臨界量に達する。 それが単に溶けるか破片になるのではなく爆発するためには超臨界を大きく越える量を必要とするので、兵器級の核爆発は偶然に生じることは有りえない。 しかしながら、ひとたび臨界量達すれば致死量の放射線を発生するし、実際に過去にいくつかそうしたことがあった。

臨界事故は過去に何度か起きており、それらのうちのいくつかで死者を出している。 1945年8月21日、ロスアラモスで致死量の放射線を発生させた事故は、6.2kgの球状プルトニウムを囲んだタングステン炭化物レンガの不注意な取り扱いに起因していた。 このとき科学者ハリーDaghlianは推定510 rem(5.1Sv)の被曝をし4週間後に死んだ。 その9か月後に、別のロスアラモスの科学者ルイスSlotinは、ベリリウムの反射材、および以前にDaghlianの生命を奪ったのとまさに同じプルトニウムコア(いわゆる「デーモンコア」)による同様の事故で死んだ。 これらの出来事は、1989年の映画「ファットマンとリトルボーイ」でかなり正確に描写された。 1958年には、ロスアラモスのプルトニウム精製工程で、混合容器の中で臨界量が形成され、クレーン操作員が死亡した。 この種の他の事故が、ソ連、日本および他の多くの国々で起こった (原子力事故を見よ)。 1986年のチェルノブイリの事故は、大量のプルトニウムの放出を引き起こした。

さらに、金属プルトニウムには発火の危険がある。特に素材が微粒子に分割されている場合が危険である。 金属プルトニウムはは酸素および水と化学反応し、水素化プルトニウム、ピロリン酸化合物が蓄積するかもしれないが、これらは室温の空気中で発火する物質である。 プルトニウムが酸化しこうしてその容器を壊すとともに、プルトニウムが相当に拡散する。 燃えている物質の放射能が危険を増す。 酸化マグネシウムの砂は、プルトニウム火災を消火するための最も有効な素材である。 それはヒートシンクとしてはたらき燃えている物質を冷やし、同時に酸素を遮断する。

1969年にコロラド州ボールダーの近くにあるロッキーフラッツ工場でプルトニウムが主な発火源になった火災があった。[2] これらの問題を回避するために、どんな形態であれプルトニウムを保管・取り扱う場合は特別の特別の警戒が必要である。 一般的に、乾燥した不活性ガスが必要である。[3]

余剰兵器の解体で発生するプルトニウム

ラジウムあるいは炭素-14のような自然に生じるアイソトープとは対照的に、プルトニウムは冷戦中に兵器製造のために大量に(何百メートルトン)濃縮・製造・分離されたことはされたことは注目すべきである。 1944年から1994年までの期間にアメリカ合衆国だけで、110メートルトンのプルトニウムを分離し、今なお100メートルトンを保有している。 化学兵器生物兵器と異なり、化学過程ではそれらを破壊することができないので、これらの備蓄は、武器形式であるかどうかに関わらず重大な問題を提起する。 余剰の兵器級プルトニウムを処分する1つの提案はそれを高レベルの放射性同位体(例えば使用済み原子炉燃料)と混合することである。 こうして潜在的な盗取、あるいはテロリストによる取り扱いを防止する。 別の手段としては、ウランとそれを混合し原子炉用燃料(混合酸化物すなわちMOXアプローチ)として消費することである。 これはPu-239の多くを核分裂により破壊するだけでなく、また、残りのかなりの部分を 核兵器を役立たなくするPu-240およびより重い同位体に変化させることができる。[4]

規制

日本では、プルトニウムの全ての同位体は 核燃料物質、核原料物質及び原子炉の規制に関する法律 で、その保管、取り扱いを厳しく規制されているとともに、 外国為替法 の中で国際規制物資として輸出入が規制されている。

保障措置と核物質防護

歴史

最初はウォルター・ラッセルによって存在が予想されていたが、ウラン-238に中性子を照射してプルトニウムとネプツニウムを合成することは、1940年に二つのチームが互いに独立に予想した:カリフォルニア大学バークレー放射線研究所のエドウィン・M・マクミランとフィリップ・アベルソン、そしてケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のノーマン・フェザーとイーゴン・ブレッチャーだった。偶然にも、両チームともが、外惑星の並びに似せて、ウランに続く同じ名前を提案していた。

最初に合成・分離したのは1941年2月23日、アメリカの化学者グレン・T・シーボーグ博士、エドウィン・M・マクミラン、J・W・ケネディー、およびA・C・ワールで、バークレーの60インチサイクロトロンを使ってウランに重水素を衝突させる方法による。 この発見は戦時下だったため秘匿された。 原子番号92のウラン、93のネプツニウムがそれぞれ太陽系惑星天王星海王星にちなんで命名されていたため、これに倣って当時海王星の次の惑星と考えられていた冥王星 (Pluto)から命名された。 シーボーグは冗談で元素記号にPuの文字を選んだが、特に問題にならずに周期表に採用された。 マンハッタン計画で、最初のプルトニウム生産炉がオークリッジに建設された。後にプルトニウム生産のための大型の炉がワシントン州ハンフォードに建造されたが、このプルトニウムは最初の原子爆弾に使用され、ニューメキシコ州ホワイトサンドのトリニティー実験場で核実験に使われた。 また、ここのプルトニウムがプルトニウムの発見からわずか5年後、第二次世界大戦末の1945年原子爆弾として長崎市に投下された。

冷戦時代を通じて、ソビエト連邦とアメリカ合衆国の双方で厖大な量のプルトニウムの備蓄が蓄積された。 1982年までに推定30万キログラムのプルトニウムが蓄積していた。 冷戦の終了とともに、こうしたプルトニウムの備蓄が、核拡散の恐れの焦点となった。 2002年にアメリカ合衆国エネルギー省は、同国防省から34メートルトンの余剰の兵器級プルトニウムの所有権を譲り受けた。 2003年初頭の時点で、合衆国内にあるいくつかの原子力発電所において、プルトニウムの在庫を焼却する手段として濃縮ウラン燃料からMOX燃料へ転換することを検討している。

プルトニウムが発見されてから数年の間、その生物学的・物理的特性はほとんど知られていなかった。 そこで、合衆国政府およびその代理として活動する私的組織によって一連の放射線人体実験が行われた。 第二次世界大戦の間から戦後に渡り、マンハッタン計画やその他の核兵器研究プロジェクト に従事した科学者が、実験動物や人体へのプルトニウムの影響を調べる研究を行った。 人体に関しては、末期患者あるいは高齢や慢性病のため余命10年未満の入院患者に対し、(典型的には)5マイクログラムのプルトニウムを含む溶液を注射することにより実施された。 この注射は、こうした患者のインフォームドコンセント無しに行われた。


関連項目

参考文献

  1. Lawrence Livermore National Laboratory (2006). Scientists resolve 60-year-old plutonium questions. Retrieved on 2006-06-06.
  2. Crooks, William J. (2002). Nuclear Criticality Safety Engineering Training Module 10 - Criticality Safety in Material Processing Operations, Part 1. Retrieved on 2006-02-15.
  3. Matlack, George: A Plutonium Primer: An Introduction to Plutonium Chemistry and It's Radioactivity (LA-UR-02-6594)
  4. National Academy of Sciences, Committee on International Security and Arms Control (1994). Management and Disposition of Excess Weapons Plutonium.
  5. 松岡理 「Plutonium」1993年1月第一号 原子燃料政策委員会発行
  6. Human Health Fact Sheet アルゴンヌ国立研究所 2001年10月
  7. 松岡理 「プルトニウム物語」
  8. The Chemistry of Actinide Elements Argonne National Laboratory
  9. The Myth of Plutonium Toxicity Bernard L. Cohen