名古屋市交通局3000形電車 (鉄道)

名古屋市交通局の通勤形電車(1977 - 2023)

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名古屋市交通局3000形電車(なごやしこうつうきょく3000がたでんしゃ)は、1977年昭和52年)に名古屋市営地下鉄鶴舞線用として登場した名古屋市交通局通勤形電車

名古屋市営地下鉄3000形電車
3000形電車
(2013年8月14日 / 上小田井駅)
基本情報
運用者 名古屋市交通局
製造所 日本車輌製造
日立製作所笠戸事業所
製造年 1977年 - 1984年
製造数 23編成92両
運用開始 1977年3月18日
運用終了 2023年3月
投入先 鶴舞線
主要諸元
編成 4両編成(製造時)
6両編成(廃車直前)
軌間 1,067 mm(狭軌
電気方式 直流1,500 V(架空電車線方式
最高運転速度 75 km/h(鶴舞線)
100 km/h(名鉄線)
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 3 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4 km/h/s
車両定員 先頭車130人(48席)
中間車140人(54席)
自重 先頭車38.0 t・39.1 t
中間車36.4 t・37.9 t
長さ 20,000 mm
2,746 mm
高さ 先頭車4,128 mm
中間車4,023 mm
車体 ステンレス鋼製(内部は全鋼製)
台車 S形ミンデン空気ばね台車
住友[注釈 1]製FS394
主電動機 分割界磁式直流直巻電動機
主電動機出力 135 kW × 4
駆動方式 WNドライブ
編成出力 3,240 kW × 4
定格速度 49 km/h
制御装置 AVF式チョッパ制御
制動装置 電気指令式電空併用ブレーキ
回生ブレーキ付き
耐雪ブレーキ付き
保安装置 車内信号ATC
M式ATS
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鶴舞線のほか、名古屋鉄道犬山線豊田線三河線で使用される。ただし、三河線へは梅坪 - 豊田市間以外は営業運転内での直通は行われていない。

概要

1977年昭和52年)[注釈 2]伏見 - 八事間開業に際し、4両編成9本(36両)、1978年(昭和53年)の八事 - 赤池間開業に際し、4両編成4本(16両)、1981年(昭和56年)の伏見 - 浄心間開業に際し、4両編成4本(16両)、1984年(昭和59年)の浄心 - 庄内緑地公園間開業に際し、4両組成6本(24両)が導入された。

従来長さ15.5 m × 幅2.5 m × 高さ3.4 mが車両の標準寸法となっていた名古屋市営地下鉄で初めて大型車となり、冷房装置とAVF式チョッパ制御回生ブレーキが導入、セミステンレス構造と固定と2連窓と7人掛け座席が採用、荷物棚が設置、客用ドア付近につり革が増設された車両である。

両開きの客用ドアを片側あたり4箇所に配した標準的な20 m通勤形車両(全長19.3 m)であり、車体全高および室内高(平天井構造)の寸法も一般的なものとなっており、同じ目的で同時期に製造された名鉄100系よりも高い。全幅も外板間は2740 mm、最大幅当初は2805 mmで、地方鉄道車両定規を超えていた(現在は2746 mm)。全長がJRなどの20 m車よりも200 mm短い関係で、客用ドア間隔も50 mm短く、客用ドア間座席の1人当り占有幅は443 mmとなっている。これは桜通線6000形、3050形や名鉄100系についても同様である。また、運転台の平面窓ガラス構成のパノラミックウインドウや客室窓の天地が小さめで、幕板の広い側面見付けに名鉄の影響が伺えるほか、本形式からは、先頭車両前部上段に名古屋市営地下鉄のシンボルマークが入るようになった。

制御装置は1C8M方式で、容量1,800 kW、合成周波数486 Hzである。主電動機の定格値は端子電圧375 V、電流395 A、出力135 kW、定格回転数1,960 rpm(80%界磁)、最弱め界磁率39%である。最長編成をMT比6M2Tの8両編成と設定したため、大出力の主電動機を採用した。

名鉄豊田線(当時豊田新線)との相互直通運転のため、自動列車保安装置は鶴舞線内での車内信号ATCに加え、名鉄線内でのM式ATSも搭載している。

車内放送には自動放送装置を採用し、名鉄線内でも使用されている。また、名鉄線対応設備として中間車にも車掌スイッチを設置している。これは名鉄線内において車内を巡回する車掌が任意の車両においてドア扱いを行うために設置されていたが、同社の駅員無配置駅における出改札自動化(駅集中管理システム)の進展により、運用線区全線において原則的に車内改札を省略するようになったことから、豊田線区間での車内巡回以外では利用されていない。

製造時期による差異

  • 1976年度末 - 1978年度初頭竣工の3101編成 - 3113編成はHゴム支持による固定窓で、1981年度竣工の3114編成以降は約半数が金属支持によるバス窓に変更され、客室窓が異なる。
  • 1976年度末 - 1981年度竣工の3101編成 - 3117編成はHゴム支持で、1984年度竣工の3118編成以降は金属支持に変更され、客用ドアの窓ガラス押さえが異なる。
  • 1976年度末 - 1981年度竣工の3101編成 - 3117編成はHゴム支持で、1984年度竣工の3118編成以降は金属支持に変更され、乗務員室前面の窓ガラス押さえが異なる。

車体

  • 1976年度末竣工の3101編成 - 3109編成は曲線で、1978年度初頭竣工の3110編成以降は直線に変更され、乗務員室扉のバス窓枠下部の角形状が異なる。
  • 1976年度末 - 1978年度初頭竣工の3101編成 - 3113編成はHゴム支持で、1981年度竣工の3114編成以降は金属支持に変更され、窓枠が異なる。
  • 1976年度末 - 1978年度初頭竣工の3101編成 - 3113編成はポリエステルコーティングで、1981年度竣工の3114編成以降はポリ塩化ビニル屋根に変更され、屋根の絶縁体が異なる。
  • 1976年度末 - 1978年度初頭竣工の3101編成 - 3113編成はキーストーンプレートで、1981年度竣工の3114編成以降はステンレス鋼に変更され、床板が異なる。
  • 1976年度末 - 1981年度竣工の3101編成 - 3117編成はHゴム支持で、1984年度竣工の3118編成以降は金属支持に変更され、方向幕の窓ガラス押さえが異なる。
  • 1978年度初頭竣工の3110編成以降は正面貫通路部の厚みが減少している。
  • 1981年度竣工の3114編成以降は標識灯兼尾灯カバーが大型化、助士側乗務員室扉右側の手すりの長さが短縮されている。

車内

  • 1976年度末 - 1981年度竣工の3101編成 - 3117編成と1984年度竣工の3118編成以降では客用ドア床面の滑り止めの形状が異なる。
  • 1978年度初頭竣工の3110編成以降は車端部妻面に掲出されている禁煙プレートが若干小型化され、角が若干丸くなっている。

乗務員室

  • 1976年度末竣工の3101編成 - 3109編成は運転席背後で、1978年度初頭竣工の3110編成以降は乗務員室扉横に変更され、車掌スイッチの位置が異なる。
  • 1976年度末竣工の3101編成 - 3109編成は上開きで、1978年度初頭竣工の3110編成以降は下開きに変更され、前面方向幕蓋、1976年度末 - 1981年度竣工の3101編成 - 3117編成は前面方向幕蓋で、1984年度竣工の3118編成以降は正面方向幕蓋下部に変更され、覗き窓の位置が異なり、1978年度初頭竣工の3110編成以降は前面方向幕蓋の覗き窓が拡大、1981年度竣工の3114編成以降は前面方向幕蓋が大型化されている。
  • 1976年度末竣工の3101編成 - 3109編成と1978年度初頭竣工の3110編成以降では前面貫通扉のガラスの位置が異なる。
  • 1976年度末 - 1978年度初頭竣工の3101編成 - 3113編成と1981年度竣工の3114編成以降では乗務員室扉下部の構造が異なる。

編成

6両編成時代

4両の中間に3100形と3200形を組み込んだパターン
形式
← 豊田市・赤池
上小田井・犬山 →
3100
(Mc1)
3200
(M2)
3100A
(M1)
3200
(M2)
3700
(M1)
3800
(Mc2)
車両番号 3101 3201 3104 3204 3701 3801
3107 3207 3105 3205 3707 3807
3111 3211 3103 3203 3711 3811
3112 3212 3106 3206 3712 3812
3113 3213 3109 3209 3713 3813
3114 3214 3119 3219 3714 3814
3118 3218 3117 3217 3718 3818
3122 3222 3121 3221 3722 3822
4両の中間に3700形と3800形を組み込んだパターン
形式
← 豊田市・赤池
上小田井・犬山 →
3100
(Mc1)
3200
(M2)
3700
(M1)
3800A
(M2)
3700
(M1)
3800
(Mc2)
車両番号 3102 3202 3703 3803 3702 3802
3108 3208 3705 3805 3708 3808
3110 3210 3704 3804 3710 3810
3115 3215 3709 3809 3715 3815
3116 3216 3717 3817 3716 3816
3120 3220 3719 3819 3720 3820
3123 3223 3721 3821 3723 3823
3159編成
形式
← 豊田市・赤池
上小田井・犬山 →
3150
(Mc)
3250
(T1)
3700
(M1)
3800A
(M2)
3750
(M)
3850
(Tc)
車両番号 3159 3259 3706 3806 3759 3859

4両編成時代

形式
← 豊田市・赤池
庄内緑地公園 →
竣工年度
3100
(Mc1)
3200
(M2)
3700
(M1)
3800
(Mc2)
車両番号 3101 3201 3701 3801 1976年
3109 3209 3709 3809
3110 3210 3710 3810 1978年
3113 3213 3713 3813
3114 3214 3714 3814 1981年
3117 3217 3717 3817
3118 3218 3718 3818 1984年
3123 3223 3723 3823

記念ステッカー

2005年日本国際博覧会(愛知万博)開催期間中は車体に愛知万博の記念ステッカーが掲出された車両もある。

改造

発車予告ベルから発車予告ブザーへの交換

当初は発車予告ベルだったが、後に発車予告ブザーに交換された。そのため、他形式とは発車予告音が大きく異なる。

中間車化

全線開業および名鉄犬山線との相互直通運転開始に際し、1993年8月12日に4両編成23本が2両ずつ分割され、うち先頭車16両に中間車化が行われた。

組成変更
 
新造の3050形(3159編成)に組み込まれた2両
(2006年2月2日 / 岩倉駅

当時、先頭車だった16両は中間車化の際、うち14両は4両編成15本と編成を組み合わせ、6両編成15本に組成変更した。なお、現行編成によって車番下2桁(さらに一部は客室窓や窓枠)が異なる。また、余剰となった2両は新造の3050形(3159編成)に組み込まれた。

車体前面の前照灯および尾灯撤去

2003年から2004年にかけて全編成に車体連結部の転落防止幌設置が行われた際、中間車化改造が行われた先頭車16両は転落防止幌を設置するスペースの関係で、車体前面の前照灯および尾灯撤去が行われた[注釈 3]

パンタグラフの撤去

離線による回生失効対策のため、2004年から2008年にかけて全編成のMc車・M車に1両当たり2基設置されていたパンタグラフの内、豊田市・赤池寄りの1両当たり1基が撤去された。

車内信号式ATC更新

走行機器の老朽化対策のため、2009年から2011年にかけて後期車で構成される6編成に車内信号式ATC更新が行われた。

省令対応改造

2012年には、後期車で構成される6編成に省令対応改造が行われた。

客用ドア横の路線ステッカー更新

2015年8月から10月にかけて一部編成に客用ドア横の路線ステッカー更新が行われた。

省令対応追加改造

2016年6月の省令対応期限に間に合わせるため、4月から5月にかけて3110編成・3113編成に省令対応追加改造が限定的に行われた。

車内のWi-Fiアンテナ設置

2017年1月から2月にかけて後期車で構成される6編成と3159編成中間車に車内のWi-Fiアンテナ設置が行われた。

乗務員室内の旧式非常はしご撤去および手すり付き非常はしご追加搭載

2018年2月には、後期車で構成される6編成に乗務員室内の旧式非常はしご撤去および手すり付き非常はしご追加搭載が行われ、専用カバーが掛けられた。

営業終了・廃車

開業時から現在も第一線で活躍を続けており、竣工から約30年が経過するなど、車体や走行機器の老朽化が進行しているため、当初は3050形の再増備に伴い、2007年から2010年にかけて廃車されることが決定していたが、東山線5000形も廃車される必要があり、予算制約の関係上、東山線N1000形の導入が優先された。なお、予定は2011年に延期、計画はN3000形の導入に変更されたことに伴い、2012年3月30日付で1次車1編成と4両の中間に組み込まれた1次車2両の計6両が初の廃車となり、2014年5月31日付で1次車のみで構成される4編成が消滅し、2015年6月1日付で2次車1編成、2016年6月25日付で3次車1編成の計8両が両次車初の廃車となり、2017年9月8日付で2次車、2019年9月26日付で4両の中間に組み込まれた1次車が消滅した[注釈 4]。また、2019年8月1日からは、後期車で構成される6編成の廃車が開始され、2023年3月を最後に営業運転を終了し、形式消滅する予定。2015年8月28日には、すでに東山線5000形が営業運転を終了しており、名古屋市営地下鉄の非VVVF車は消滅し、全車両がVVVF車となる予定。

営業区間

脚注

注釈

  1. ^ 現・日鉄
  2. ^ 実際には第一陣の落成は1976年内で、鉄道趣味誌では12月に運用開始した名鉄6000系と同じ号で紹介されている。
  3. ^ 3159編成中間車も同時期に行われた。
  4. ^ 一方、鶴舞線に乗り入れている名鉄100系抵抗制御車は中間に組み込まれたGTO-VVVF車2両を除き、2020年時点で経年が約40年を超えているが、処遇は発表されておらず、またIGBT-VVVF化されたため、当面運用され続けると思われる。

出典

参考文献

  • 電気学会「チョッパ制御ハンドブック(第2版)」1980年1月15日発行

関連項目

鶴舞線開業の5日前に開業した他事業者において冷房装置とAVF式チョッパ制御と回生ブレーキが導入された例を示す。

外部リンク