S-TRAIN
S-TRAIN(エストレイン)は、西武鉄道(西武)、東京地下鉄(東京メトロ)、東急電鉄(東急)、横浜高速鉄道が運行する座席指定制の有料列車である。Sトレインと表記される場合もある[1]。
- 本項では上り/下りの記述について、特記なき限り西武線内を基準(元町・中華街方面を上り)とする[注 1]。
| S-TRAIN | |||
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「S-TRAIN」ロゴマークと、「S-TRAIN」に使用される西武40000系 | |||
| 概要 | |||
| 国 |
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| 種類 | 座席指定制列車(平日・土休日運行) | ||
| 現況 | 運行中 | ||
| 地域 |
東京都 埼玉県 神奈川県 | ||
| 運行開始 | 2017年3月25日 | ||
| 運営者 |
西武鉄道 東京地下鉄 東急電鉄 横浜高速鉄道 | ||
| 路線 | |||
| 起点 |
豊洲駅(平日) 元町・中華街駅(土休日) | ||
| 終点 |
小手指駅(平日) 西武秩父駅(土休日) | ||
| 使用路線 |
横浜高速鉄道みなとみらい線 東急東横線 東京メトロ有楽町線・副都心線 西武有楽町線・池袋線・西武秩父線 | ||
| 車内サービス | |||
| クラス | 普通車(全車指定席) | ||
| 技術 | |||
| 車両 | 西武40000系電車 | ||
| 軌間 | 1067 mm | ||
| 電化 | 直流1,500V | ||
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概要
2016年6月16日に4社の共同リリースにより運行予定が明らかにされ[2]2017年1月10日に詳細が発表、2017年3月25日から運行を開始した[3]。西武鉄道が主体となって運行しており、車両も同社の40000系のみが使用される(後述)。4社のうち東急電鉄と横浜高速鉄道では初となる座席指定制の列車となる[4]。
平日と土日で運行パターンが異なり、平日は通勤目的のために東京メトロ有楽町線に乗り入れ、土休日は観光輸送のために東京メトロ副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線及び西武秩父線の西武秩父駅に直通する。東京メトロ有楽町線に直通する系統は、都心方面への通勤輸送に特化しているため、ターミナル駅の池袋駅を通過する。
「S-TRAIN」の名称は、
- 通勤・通学・お出かけなど様々なシーン「Scene」に使える
- 指定席による快適な座席「Seat」
- 直通運転による乗り換え無し「Seamless」
これらの共通となる頭文字「S」に由来している。ロゴマークの「S」の上部は秩父沿線の緑、下部はみなとみらいの青、「S-TRAIN」のグレーは渋谷と豊洲のアーバンを意味する[3]。2016年11月21日に西武・東急・東京メトロ・横浜高速鉄道の4社名義で商標が出願され、2017年4月21日に商標登録された(第5941839号)。
西武と東急は1950年代から1960年代にかけて伊豆半島(伊豆戦争)や箱根(箱根山戦争)で熾烈な観光開発競争を繰り広げていた同士であり、副都心線全線開業以降Fライナーをはじめとする副都心線経由での直通運転は行われていたものの、料金が必要となる列車の共同運行は初めての事例である。これについて、東急電鉄横浜駅の岸哲也駅長が運行開始当日の取材に「東急線を西武の列車が走るということは、昔は到底考えられなかった」「過去は過去。壁を乗り越えていかないと鉄道会社も生き残れない」と述べるなど、過去の確執を乗り越えての運行開始となった[5]。
列車種別の位置付けは、西武線内では特急列車(特急ちちぶ・むさし)より下位であるが、東急線と横浜高速鉄道線内では特急(通勤型車両を使用、料金不要)より上位となる。なお、有楽町線や副都心線に特急が設定されていない東京メトロ線内ではこの列車が最上位種別となる。
列車概況
全列車座席指定で運行され、座席指定券を別途購入する必要がある。西武線内では車掌が、東京メトロ線内ではメトロコマース所属の客室乗務員が、東急線内では「トレインクルー」と呼ばれる客室乗務員が、それぞれ車内での着席状況の確認などを行っている。
車両はロング/クロス転換シートを装備する西武40000系0番台をクロスシート状態で照明を電球色として使用する[注 2][注 3]。4ドア車のため各車両1ヶ所ずつの扉を開ける限定開扉を行っており、1号車は飯能寄り、2 - 10号車は豊洲、元町・中華街寄りのそれぞれ一ヶ所のみが開扉する。なお、元町・中華街駅と西武秩父駅での降車のみ全ての客室扉を開く。
平日
平日は通勤輸送に特化させた運行形態となり、小手指駅・所沢駅 - 豊洲駅間を西武池袋線・西武有楽町線・東京メトロ有楽町線で直通運転する。
運行本数は豊洲行き2本、小手指行きが5本である。豊洲行きは朝のみの運転であり、小手指行きは夕ラッシュ時の運転となる。
最大の特徴は、有楽町線や池袋線における大ターミナルであり、東京メトロの駅としても最大乗車人員を誇る池袋駅を通過することであり、このような列車が設定されるのは同駅としても初のことである。これは都心への通勤輸送に特化しているためである。また有楽町線内での通過運転は2010年に廃止された準急以来7年ぶりとなる。
西武線内は小手指駅(下り降車のみ)・西所沢駅(下り降車のみ)・所沢駅・保谷駅・石神井公園駅・練馬駅(下り降車のみ)、有楽町線内は飯田橋駅・有楽町駅・豊洲駅のみに停車し、上りは飯田橋駅 - 石神井公園駅間、下りは飯田橋駅 - 練馬駅を挟まない乗車は出来ない。
休日
土・休日は観光輸送に特化させた運行形態となり、西武秩父駅・飯能駅・所沢駅 - 元町・中華街駅間を西武秩父線・西武池袋線・西武有楽町線・東京メトロ副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線で直通運転する。平日の東京メトロ有楽町線系統とは異なり、池袋駅にも停車する(ただし降車のみである)。運行本数は上り元町・中華街行き2本(西武秩父発1本、飯能発1本)、下り所沢行き1本、飯能行き1本、西武秩父行き1本(全て元町・中華街発)である。
飯能発と西武秩父行きが朝の運転で、それ以外は夕方の運転となる。なお、西武秩父 - 元町・中華街間(営業キロは113.8km)は東京メトロ直通列車の最長距離を運転する列車となる。また、副都心線・東急東横線・みなとみらい線では初の座席指定列車となった。
みなとみらい線内・副都心線内のみの座席指定券は発売されない。
停車駅
| 会社名 | 西武鉄道 | 東京地下鉄 | 東急電鉄 | 横浜高速鉄道 | ||||||||||||||||
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| 路線名 | 西武秩父線・池袋線・西武有楽町線 | 有楽町線 | 副都心線 | 東横線 | みなとみらい線 | |||||||||||||||
| 分類 | 方向 | 西武秩父 | 飯能 | 入間市 | 小手指 | 西所沢 | 所沢 | 保谷 | 石神井公園 | 練馬 | 飯田橋 | 有楽町 | 豊洲 | (副) 池袋 | 新宿三丁目 | 渋谷 | 自由が丘 | 横浜 | みなとみらい | 元町・中華街 |
| 休日 2017-現在 |
下り (←)[注 4] | ● | ● | ● | ― | ― | ● | ― | ● | ― | = | ◎ | ● | ● | ● | ○ | ○ | ● | ||
| 上り (→)[注 4] | ● | ● | ● | ― | ― | ● | ― | ● | ― | ◎ | ● | ● | ● | ◎ | ◎ | ● | ||||
| 平日 2017-2020 |
下り (←) | = | ● | ◎ | ◎ | ― | ○ | ○ | ● | = | ||||||||||
| 上り (→) | ● | ○ | ○ | ― | ◎ | ◎ | ● | |||||||||||||
| 平日 2020-現在 |
下り (←) | = | ● | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ● | |||||||||
| 上り (→) | = | ● | ○ | ○ | ― | ◎ | ◎ | ● | ||||||||||||
凡例
- ●:停車
- ○:停車(乗車専用)
- ◎:停車(降車専用)
- ―:通過(一部運転停車あり)
- =:経由なし
備考
- 方向の上り/下りは西武線内基準
- 運転上の都合で、練馬駅・小竹向原駅には全列車が運転停車する[注 5]
- 出典は西武時刻表各号
使用車両
- 西武40000系電車(0番台のみ)
座席指定券
平日・土休日とも乗車には通常の乗車券の他、座席指定券が必要となる。乗車した会社に応じて以下の金額(小児半額、10円未満切り上げ)を合算した金額で発売される[6]。前述の通り、横浜高速鉄道・東京メトロのみの指定券は発行されない。
- 西武 - 「(小竹向原・)石神井公園・所沢 - 西武秩父」間のみ500円、それ以外は300円
- 東京メトロ - 一律210円[7]
- 東急 - 一律350円(横浜高速鉄道と跨いで利用する場合は100円割引)[8]
- 横浜高速鉄道 - 一律100円
座席指定券は運転日の1か月前から、以下の駅で発売する。
- 西武 - 池袋線石神井公園駅以北及び秩父線の各駅窓口、停車駅の指定券券売機。および沿線以外の主要駅の駅窓口
- 東京メトロ - 池袋駅を除く停車駅の駅窓口・指定券券売機
- 東急・横浜高速鉄道 - 東横線・みなとみらい線各駅の自動券売機
また、西武鉄道のチケットレスサービス「Smooz」でも購入が可能。
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指定席券売機が停車駅に設置されている(副都心線・東横線渋谷駅ホーム)
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S-TRAIN座席指定券
沿革
- 2016年(平成28年)6月16日:4事業者による座席指定制直通列車の2017年春からの運行が発表された[2]。
- 2017年(平成29年)3月25日:ダイヤ改正にあわせ運行開始[3]。運行開始初日の一番列車に関しては元町・中華街駅と飯能駅で記念セレモニーが開かれた[9][10]。当初の運行本数は平日下り3本・上り4本、休日下り3本・上り2本(このうち平日の上りと休日の上下各1本は朝方、他は夕方以降の運転)。
- 2018年(平成30年)
- 3月10日:ダイヤ改正[11]。平日の列車を夕方以降に2往復増発。下りは18 - 22時台、上りは16 - 20時台が1時間ヘッドとなる。
- 3月28日・29日:かぞくみらいフェス帰宅者向けに一部車両を貸切る「ファミリー専用車両」を実施[12][13]。101号の3・4号車が対象とされた[12]。
- 9月20日・21日:埼玉西武ライオンズ応援企画として、試合が行われるZOZOマリンスタジアムへのアクセス向上を図り、夕方の豊洲行きを新木場駅まで延長運転[14][15]。104号と106号が対象[注 6]で、豊洲から先は各駅停車新木場行きとして運転された。中吊り広告のない車両を使用し、スマイルビジョンにてライオンズの特別編集映像が放映された。
- 2019年(平成31年)3月16日:ダイヤ改正[16]。平日夕方以降の上り(所沢→豊洲)を廃止し朝に1本増発、また平日夕方以降の下りの緩急接続駅を保谷駅・所沢駅に統一。
- 2020年(令和2年)
脚注
注釈
- ^ 東京メトロ有楽町線・副都心線では、新木場・渋谷方面がA線、和光市方面がB線となるが、ここではA線を上り、B線を下りとして扱うものとする。東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線では上り・下りが逆転する。
- ^ 車端部はロングシート固定だが、この部分も使用される。
- ^ 一般営業列車としての運行時はロングシートとなる。
- ^ a b 飯能止まり・所沢止まり・飯能始発も存在。
- ^ 練馬は保安装置切換のため、小竹向原は乗務員交代のため。
- ^ なお、21日の104号はダイヤ乱れのため運休となった。
出典
- ^ “路線図” (PDF). 東急電鉄. 2020年2月7日閲覧。
- ^ a b “2017 年春 座席指定制の直通列車を導入します!” (PDF) (Press release). 西武鉄道. 16 June 2016. 2017年3月27日閲覧.
- ^ a b c “2017年3月25日(土)から「S-TRAIN」運行開始!”. 西武鉄道 (2017年1月10日). 2017年1月27日閲覧。
- ^ “西武「座れる通勤列車」の愛称は「S-TRAIN」”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2017年1月10日). 2017年3月27日閲覧。
- ^ “過去の壁を乗り越えて『S-TRAIN』運行開始…横浜から秩父へ”. Response.. (2017年3月25日) 2017年3月27日閲覧。
- ^ “買い方・乗り方”. S-TRAINスペシャルサイト. 西武鉄道. 2017年3月30日閲覧。
- ^ 東京地下鉄旅客営業規程 (PDF) 第70条の2第1項。
- ^ 東急 旅客営業規則(2020年1月31日現在) (PDF) 第139条の2。
- ^ 「S-TRAIN」出発進行! 通勤・行楽「変身」列車 元町・中華街~西武秩父間
- ^ 西武秩父―元町・中華街を結ぶ「S-TRAIN」運行開始 一番列車出迎え
- ^ 2018年3月10日(土)ダイヤ改正を実施します。
- ^ a b S-TRAINで「ファミリー専用車両」を実施します!(PDF) - 西武鉄道・東京メトロ リリースニュース 2018年2月20日掲載
- ^ https://railf.jp/event/2018/02/21/100000.html
- ^ 埼玉西武ライオンズ 目指せ優勝!!S-TRAINを新木場まで延長運転します!(PDF) - 西武鉄道リリースニュース 2018年9月18日掲載
- ^ “西武 S-TRAIN 豊洲~新木場間 延長運転”. 鉄道コム (2018年9月18日). 2019年3月21日閲覧。
- ^ 2019年3月16日(土)ダイヤ改正を実施します。
- ^ 2020年3月14日(土)ダイヤ改正を実施します
- ^ “土休日の特急列車の一部運休および「S-TRAIN」「拝島ライナー」の運休について”. 西武鉄道. 2020年4月23日閲覧。
- ^ “S-TRAIN(S トレイン)の運休について”. 東急電鉄. 2020年4月23日閲覧。
- ^ “S-TRAIN 運行再開について”. 東急電鉄. 2020年5月29日閲覧。