性的同一性と性自認の一覧
本項では性的マイノリティ(性的少数者)、性的マジョリティー(性的多数者)の一覧をA~Zの順で解説していく。[備考 1]
なお、それを表現する適切な語が存在しない指向も存在する。
最低限の知識解説
- 性的指向(性的嗜好✕)
- 性的指向とは、簡単に言うと恋愛感情、性的感情がどのような性に向いているかを示すものである。例、性的マジョリティー(多数派)の男性の場合、恋愛感情は女性、性的感情は女性になる。
- 性自認(ジェンダー・アイデンティティ)
- 性自認とは、自分自身が思っている性別のこと。例、出生時の性別と性自認が同じ女性の場合、性自認は女性になる。
- 自分自身が他の人に見せる性別表現。例、服,仕草,声色,一人称,髪型など
- 主に恋愛感情の表現で使われる。
- セクシュアル(セクシュアリティー)
- 主に性的指向の表現で使われる。
- 性別(生物学的性,セックス)
- 出生児の身体的性別。基本、雄か雌
- LGBTs,LGBTQ+など
- レズビアンとゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーにくわえ、これらの枠組みに含まれない人々も含めた、性的マイノリティーの総称。なお、Qは、クエスチョニング(後述)またはクィアを指す。
- SOGI(そじ そぎ)
- SO(Sexual Orientation)が性的指向、GI(Gender Identity)が性自認を表すもの。主に日本語において用いられる。
- 「S」「G」「R」「M」「D」「SO」「GI」
- 左から、セクシュアリティー、ジェンダー、ロマンティック、マイノリティー、ダイバーシティー、性的指向、性自認。となっていて、これを組み合わせることで、自分のアイデンティティーを説明することができる。
- 例,「GSRM」→ジェンダーとセクシュアリティ(性的指向)、ロマンティック(恋愛指向)においてマイノリティとされる人
- 「SOGI」→上参照
- 「MSGI」→性的指向と性自認においてマイノリティとされる人
- 「S&G」→(さまざまな)性的指向と性自認など。
- 性的指向、恋愛的指向、性自認、性表現、性別の重複性
- アイデンティティーは性的指向、恋愛的指向、性自認、性表現が一つ一つ独立し、全てを合わせてその人のアイデンティティーになるというもの。表参照
指向 | 例 | ||||
---|---|---|---|---|---|
性別 | 雄 | 雌 | インターセックス | ・・・ | |
性自認 | シスジェンダー | トランスジェンダー | バイジェンダー | Xジェンダー | ・・・ |
性表現 | 男性 | 女性 | 中性 | 無性 | ・・・ |
性的指向 | ヘテロセクシュアル | レズビアン | ゲイ | アセクシュアル | ・・・ |
恋愛的指向 | ロマンティック | アロマンティック | デミロマンティック | リスロマンティック | ・・・ |
このような語を組み合わせることで、別のあるいはより詳細な指向性を表現することができる。例,「雄、トランスジェンダー、中性、レズビアン、ロマンティック」などや、「インターセックス、シスジェンダー、無性、アセクシャル、リスロマンティック」など。
一言で作られているものは、デミアンドロロマンティック(強く情緒的に結びついた男性に対してのみ恋愛感情をいだく指向性)や、グレーバイロマンティック(両性に対して恋愛感情をいだくが、その程度や頻度が高くない指向性)などがある。
表記
性的指向の場合
- 指向名〈マイノリティーは太字〉(英語表記)(別名) フラッグ(画像)
-
- (恋愛的指向(どのような性に),性的指向(どのような性に))[備考 2]
恋愛的指向の場合
- 指向名〈マイノリティーは太字〉(英語表記)(別名) フラッグ(画像)
-
- (恋愛的指向(どのような性に),性的指向(どのような性に))[備考 3]
性自認の場合
- 指向名〈マイノリティーは太字〉(英語表記)(別名) フラッグ(画像)
-
- (出生児性別,性自認)(性表現))[備考 4]
性表現の場合
- 指向名〈マイノリティーは太字〉(英語表記)(別名) フラッグ(画像)
-
- (出生児性別,性自認)(性表現))[備考 5]
性的指向 (Sexual Orientation)
- 〈マイノリティーなものは太字〉
- ロマンティック エイ(ア)セクシュアル(asexual) (Aセクシュアル,無性愛[フラッグ性的指向 1][1]
-
- (有,無)[備考 6]
- オートアンドロフィリア(和製英語)
-
- (有(自分),有(自分))[備考 7]
- オートガイネフィリア(Autogynephilia) (自己女性化愛好症)
-
- (有(自分),有(自分))[備考 8]
- バイセクシュアル(bisexual) (両性愛者)<[フラッグ性的指向 2][2]
-
- (有(男女),有(男女))[備考 9]
- ゲイ(gay)[フラッグ性的指向 3][3]
-
- (有(男性),有(男性))(性自認 男性)[備考 10]
- デミセクシャル(demisexual) (半性愛者)[フラッグ性的指向 4]
-
- (基本無,基本無)[備考 11]
- ヘテロフレキシブル(heteroflexible)[フラッグ性的指向 5]
-
- (有(基本異性),有(基本異性))[備考 12]
- ヘテロセクシュアル(heterosexual) (異性愛者)[フラッグ性的指向 6][4]
- (有(異性),有(異性))[備考 13]
- ホモフレキシブル(和製英語)
-
- (有(基本同性),有(基本同性))[備考 14]
- レズビアン(lesbian) (略語はレズ✕ ビアン○)[フラッグ性的指向 7][5]
-
- (有(女性),有(女性))(性自認,女性)[備考 15]
- リスセクシュアル(Lithsexual)[フラッグ性的指向 8]
-
- (不確定,有(異性))[備考 16]
- モノセクシャル(Monosexuality)[フラッグ性的指向 9]
-
- (有,有)[備考 17]
- オブジェクタムセクシュアル(Object sexuality)[6]
-
- (有(物),有(物))[備考 18]
- オムニセクシュアル(Omnisexual) (全性愛者)[フラッグ性的指向 10][7]
-
- (有(全),有(全))[備考 19]
- ポリアモラス(Polyamorous)[フラッグ性的指向 11][8](ポリアモリー)
-
- (有(全),有(全))[備考 20]
- パンセクシュアリティー(Pansexuality) (全性愛者,オムニセクシュアルとはすこし異なる)[フラッグ性的指向 12][フラッグ性的指向 13][9]
-
- (有(全),有(全))[備考 21]
- セクシュアルフルイディティ(sexualfluidity)(アブロセクシャル)[フラッグ性的指向 14][10]
-
- (流動,流動)[備考 22]
恋愛的指向(romantic orientation)
- 〈マイノリティーなものは太字〉
- アンドロロマンティック(Androromantic)
-
- (有(男性),不確定)[備考 24]
- エイ(ア)ロマンティック(Aromantic)[フラッグ恋愛的指向 1]
-
- (無,無)[備考 25]
- バイロマンティック(Biromantic)
- オートロマンティック(autosexuality)
- デミロマンティック(でみろまんてぃっく,demiromantic)[フラッグ恋愛的指向 2][15]
-
- (無,不確定)[備考 28]
- グレーロマンティック(Grayromantic)
-
- (少し有,不確定)[備考 29]
- ガイノ(ジノ)ロマンティック(Gynoromantic)(ガイネロマンティック(gyneromantic))
-
- (有(女性),不確定)[備考 30]
- ヘテロロマンティック(Heteroromantic)
- (有(男性),不確定)[備考 31]
- ホモロマンティック(Homoromantic)
-
- (有(同性),不確定)[備考 32]
- リスロマンティック(りすろまんてぃっく,Lithromantic) (アコイロマンティック(akoiromantic),アプロマンティック(apromantic))[16]
-
- (有(異性),不確定)[備考 33]
- パンロマンティック(Panromantic)
-
- (有(全ての性,不確定)[備考 34]
性自認 (Gender Identity)
- 〈マイノリティーなものは太字〉
- バイジェンダー(bigender)[フラッグ性自認 1]
-
- (男性,男女 女性,男女)(個人差有り)[備考 35]
- シスジェンダー(Cisgender) (ストレート)[フラッグ性自認 2]
- (男性,男性 女性,女性)(男性は男性的,女性は女性的)[備考 36]
- ジェンダーフルイド(Gender fluid) (流動性トランスジェンダー)[フラッグ性自認 3][17]
-
- (男性,男性~女性 女性,女性~男性)(その時の性自認)[備考 37]
- インタージェンダー(intergender)[フラッグ性自認 4]
-
- (男女,中性)(基本中性)[備考 38]
- ニュートロイス(neutrois) (Aジェンダー)[フラッグ性自認 5]
-
- (男女,無性)(基本中性)[備考 39]
- トランスフェミニン(transfeminine)[フラッグ性自認 6][18]
-
- (男性,中性~女性)(基本女性的)[備考 40]
- トランスマスキュリン(trans masculine)[フラッグ性自認 7][19]
-
- (女性,中性~男性)(基本男性的)[備考 41]
- トランスジェンダー(transgender) (医学名、性同一性障害≠解離性同一性障害(多重人格))[フラッグ性自認 8][20][21]
- トランスジェンダー男性(Female to Male,FtM)
-
- (女性,男性)(基本男性)[備考 43]
- トランスジェンダー女性(male to female,MtF)
-
- (男性,女性)(女性)[備考 44]
- エックスジェンダー(和製英語) (Aジェンダー)[フラッグ性自認 9][23]
-
- (男女,男女以外)(中性,両性,不定性,無性など)
- 性自認が男女どちらかでない人。≒ ノンバイナリー,クィア
性表現(sexual expression)
- 〈マイノリティーなものは太字〉
その他
脚注
注釈
出典
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ ヘテロセクシュアルとは?【「あたりまえ」なんかじゃないよ、異性愛】
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ 対物性愛
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ パンセクシュアルとは?【当事者監修】
- ^ https://jobrainbow.jp/magazine/sexualfluidity
- ^ https://ameblo.jp/infection1985/entry-11496134529.html [4コマ] トラニーチェイサー | 俺の嫁ちゃん - Amebahttps://ameblo.jp › infection1985 › entry-11496134529
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- ^ 僕は性別モラトリアム(書籍)
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ ALLYになりたいわたしが出会ったLGBTQ+の人たち(書籍)
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ LGBTQQIAAPPO2Sの意味とは?意味をわかりやすく解説。性別には様々な形がある。
- ^ スペシャルQトな僕ら(書籍)
備考
- ^ ここでの「性的マイノリティー、マジョリティーは性的指向、恋愛的指向、性自認、性表現などをすべて含むものとする。」
- ^ マイノリティー説明
- ^ マイノリティー説明
- ^ マイノリティー説明
- ^ マイノリティー説明
- ^ 恋愛感情はあるが、性的感情がない人。
- ^ 自身を男性化させることで性的感情を抱く女性。(性自認は女性であることが多い)≠トランスジェンダー
- ^ 自身を女性化させることで性的感情を抱く男性。(性自認は男性であることが多い)↔オートアンドロフィリア
- ^ 男性、女性の両性を好きになる人。(あくまで、男性と女性というだけなので、物やXジェンダーなどは対象外。)
- ^ 性自認が男性の同性愛者。
- ^ 強い精神的なつながりを持った人にだけ、恋愛、性的感情を持つ人
- ^ 通称は異性愛者であるものの、同性との恋愛、性的欲求を持つことがある人、持つのに抵抗のない人。↔ホモフレキシブル
- ^ 性自認が男性の場合女性、性自認が女性の場合男性に恋愛や性的思考を向ける人。
- ^ 通称は同性愛者ではあるものの、異性との恋愛、性的思考を持つことがある人、持つのに抵抗のない人。
- ^ 性自認が女性の同性愛者。
- ^ 自ら相手への性的思考はあるが、相手に性的思考を向けられると途端に相手への性的思考を失ってしまう人。また、性行為をすることが苦痛である人も使うことがある。
- ^ 一つの性別の人だけに恋愛感情、性的感情を向ける人。レズビアン、ゲイ、ヘテロセクシュアルはこの中に入る。
- ^ 人ではなく物に恋愛、性的感情を向ける人。
- ^ すべての人を性別を意識して好きになれる人。
- ^ 複数の人を同じように愛せる人。
- ^ すべての人を性別関係なく好きになれる人。(この場合はXジェンダーも)
- ^ 恋愛、性的感情を持つ性別が日や時間、気分によって変わる人。
- ^ 性別移行中のトランスジェンダーに対して性的、恋愛的思考を向ける人
- ^ 男性に対してのみ恋愛感情をいだくこと。
- ^ 誰に対しても恋愛感情をいだかない人。↔ロマンティック(Romantic)。
- ^ 主客が一致した指向、すなわち自分自身に恋愛的指向をもつこと
- ^ 両性に対して恋愛感情をいだくこと。
- ^ グレーロマンティックのうち、強く情緒的に結びついた相手に対してのみ恋愛感情をいだくこと。
- ^ エイロマンティックとロマンティックをスペクトラムと見做したとき、その中間にあることを意味する。恋愛感情は抱き得るが、その頻度ないし強度が高くないこと。
- ^ 女性に対してのみ恋愛感情をいだくこと。
- ^ 異性に対して恋愛感情をいだくこと。
- ^ 同性に対して恋愛感情をいだくこと。
- ^ 恋愛感情は抱くが、相手から恋愛感情を向けられることを望まない(もしくは必要としない)こと。相手と相互的な関係になると恋愛感情が失われる人もいれば、相互的な関係になっても恋愛感情は失われない人もいる。蛙化現象も参照。
- ^ 男性/女性の性の分類に適合しない人々も含め、あらゆる人々に恋愛感情をいだくこと。
- ^ 男性と女性の両方の性別を持っている人。
- ^ 出生時の性別と性自認が一致している人。男性は純男(すみお)、女性は純女(じゅんめ)とも呼ばれる。
- ^ 日にちや時間、その時の気持ち等によって性自認が異なる人。
- ^ 中性的なジェンダーを持つ人。
- ^ 性自認がない(無性)の人。
- ^ 性自認がどちらかと言うと女性の出生児男性。
- ^ 性自認がどちらかと言うと男性の出生児女性。
- ^ 出生時の性別と性自認が一致していない人。多くの人が思春期前(中学入学前)に自身の身体的性別や、社会的性別に違和感を感じる。中には、成人してから自認する人や、ゲームを通じて自認する当事者もいる。
- ^ 性別移行により男性になった元女性、性別以降中の元女性など。女性愛者の場合ヘテロセクシュアル、男性愛者の場合ゲイとなる。
- ^ 性別移行により女性になった元男性、性別以降中の元男性など。男性愛者の場合ヘテロセクシュアル、女性愛者の場合レズビアンとなる。
- ^ 性的マイノリティーの人たちの支援や援助をする人。性的マジョリティーの人のアライはストレートアライと呼ばれる。
- ^ 性的マイノリティや、男女の性の枠組みに入らない人。
- ^ 自身の性的、恋愛的指向や性自認、性表現がわからない、確定していない人。
フラッグ
性的同一性 | ||||
---|---|---|---|---|
性的指向 | 恋愛的指向 | 性自認 | 性表現 | その他 |
参考文献
- 性的マイノリティーサポートブック(書籍)
- 13歳から知っておきたいLGBT+(書籍)
関連項目
含まれる範囲
性的少数者は多様性に富んでいるが、性的指向と性自認の2つの観点から語られることが多い[1]。実際はさらに恋愛的指向やジェンダー表現なども加わって複雑で無数の組み合わせがあり、グラデーションのように幅(スペクトル)もあって流動的である[2][3][4]。
性的指向
性的指向とは、どんなジェンダーに性的な魅力を感じるか(もしくは感じないか)ということである[5][6]。
性的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである[1][注釈 1]。
- ゲイ(男性の同性愛)… 男性同士で惹かれ合う[注釈 2]。
- レズビアン(女性の同性愛)… 女性同士で惹かれ合う。
- バイセクシュアル(両性愛)… 2つ以上の性別に惹かれる[7][注釈 3]。
- パンセクシュアル(全性愛)… あらゆるジェンダーに惹かれる。
- アセクシュアル(無性愛)… どのジェンダーにも性的に惹かれない。総称としても用いられる[8]。
- オートセクシュアル … 自分自身に性的に惹かれる[11]。
「ゲイ」という言葉は、男性に限らず同性愛者含めたマイノリティな性的指向全般を総称して指すこともあるが、この用法を嫌う人もいる[12]。バイセクシュアルの人は、ゲイやレズビアンになる途中段階だと誤解されやすいが、明確な性的指向である[13]。
恋愛的指向
この記事は中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、議論中です。 (2022年7月) |
「性的なもの(性的指向)」と「ロマンチックなもの(恋愛的指向)」に分けて考える場合もあり[14][15]、これは「Split Attraction Model(SAM)」と呼ばれ、主にアセクシュアルのコミュニティでよく用いられている[16]。恋愛的指向も含めた性的マイノリティの総称として「GSRMs」[17][18]が使われることもある。具体的には、性的に誰にも惹かれない人を「アセクシュアル」というのに対して、恋愛的に誰にも惹かれないのは「アロマンティック」といった表現となる[19][16][20]。性的指向と恋愛的指向が一致しないことは「クロス・オリエンテーション(cross orientation)」と呼ばれる[21]。
指向が性的と恋愛的に分離できると考えるようになったのは、最近のことではない。例えば、1879年には、ドイツの性科学者で人権社会運動家でもあるカール・ハインリッヒ・ウルリッヒスがそうした考えを提唱していた[22]。1979年には、心理学者のドロシー・テノフが著作『Love and Limerence』の中で、ロマンティックな魅力からくる精神状態を「リメラント」と表現し、その状態がないことを「non-limerent」と位置付けた[23]。その後、2000年から2005年の間にアセクシュアル当事者の最大のオンラインコミュニティである「AVEN」が中心となって「Split Attraction Model」が定着し始めた[24]。現在では多くの団体や組織が性的指向と恋愛的指向を混同せずに分けて権利や平等を訴えている[25][26][27][28][29][14][30]。「AUREA(Aromantic-spectrum Union for Recognition, Education, and Advocacy)」というアロマンティックのコミュニティは毎年「アロマンティック・スペクトラム意識週間」(Aromantic Spectrum Awareness Week)を実施し、恋愛的指向の普及啓発に努めている[31]。
何を「恋愛」と受け止めるかは人によって異なる。例えばセックスを恋愛と関係ないとみなす人もいれば、恋愛と関係があると考える人もいる[5]。ある人に恋愛的に惹かれているからといって、性的にも惹かれているとは限らない[32]。性的指向と恋愛的指向は一般には区別されないことも多いが、当事者にとっては大切な自己認識のひとつである[5]。
恋愛的指向については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである[33][34]。
- ホモロマンティック … 同性同士で惹かれ合う。
- バイロマンティック … 2つ以上の性別に惹かれる。
- パンロマンティック … あらゆるジェンダーに惹かれる。
- アロマンティック … どのジェンダーにも恋愛的に惹かれない。総称としても用いられる[8]。
- デミロマンティック … 他者との情緒的なつながり(信頼関係)がある場合のみ、惹かれる。
- グレイロマンティック … ごく稀にしか惹かれない。
性的指向と恋愛的指向を組み合わせることで、例えば、「アセクシュアル・ホモロマンティック」「パンセクシュアル・グレイロマンティック」「ヘテロセクシュアル・バイロマンティック」といった表現が可能になる。アセクシュアルとアロマンティックは合わせて「a-spec(A spectrum)」と総称される[35]。自分が感じる魅力が性的であるかプラトニックであるかわからない、もしくはそもそも魅力を感じているのかもわからない人は「クワセクシュアル(クォイセクシュアル)」と呼ばれる[36]。
日本では「ノンセクシュアル」という用語が性的に誰にも惹かれないが恋愛はするという指向として使われることがある[36][37]。
性的魅力や恋愛的魅力以外にも魅力は存在し、例えば、セックスや恋愛とは無関係に人の外観を高く評価する「美的魅力(Aesthetic attraction)」や、セックスや恋愛とは無関係に人の感覚(主に触覚や嗅覚)に訴える「感覚的魅力(Sensual attraction)」などがある[9]。
性自認(性同一性)
生殖機能に基づいて分類する2つの主要な区分(男女・雄雌)は「生物学的な性(Sex)」と呼ばれるが、これらはあくまで社会的にラベル付けされた概念である[38]。人間の場合、染色体やホルモン、生殖器などを基準に「男」と「女」に出生時に分類されるが、典型的なパターンに一致しない人もおり、中には典型的なパターンに一致させるべく強制的に手術を受けさせられる人もいる(インターセックスなど)[39]。その「生物学的な性」に対して「ジェンダー(Gender)」とは、生物学的な特徴を越えて「自分が何者なのか」という感覚に基づいたものであり[40]、社会的に構築されている[41][42]。そのため、「生物学的な性」と「ジェンダー」が一致する人もいれば、一致しない人もいる[40]。
性自認とは、自分自身のジェンダーをどう理解し、どう振る舞い、どう見られたいのかを示す識別名である[40]。
性自認については、マイノリティとされている主なものは、以下のとおりである[1][43]。
- トランスジェンダー … 自分の認識しているジェンダーが出生時に割り当てられた性別と異なる。
- デミ … あるジェンダーに部分的に結びつきを感じている。デミガール、デミボーイ、デミガイ、デミノンバイナリーなどがある[44]。
ノンバイナリーの人たちの中には「enby(エンビー)」という俗語で自分を表現する者もいる[45]。ノンバイナリーと意味がよく似た用語として「ジェンダークィア」があり、重複している部分もあるが、使われ方が違っている場合もあり、実際は個人の意思が尊重される[46]。
日本では英語圏における「ノンバイナリー」とほぼ同様の意味で「Xジェンダー」という表現がよく用いられる[36]。
社会における男女二元論的な規範とは異なるかたちで自分を認識したり、表現したりする人の総称として「ジェンダー・ノンコンフォーミング」があり、ジェンダークィアと違ってアイデンティティとしてだけでなく特定のグループや表現、パターンを指すことが多い[45]。
「デミ」は、例えば「デミガール」であれば、自分は女性だと強く感じる面もありつつ、同時に女性ではないとも感じるといったアイデンティティを意味する[44]。たいていのデミガールは、出生時に決められた生物学的な性は女性である[47]。
「トランスセクシュアル(Transsexual)」という用語は古いもので、包括的な意味を持たないので使われなくなった[48]。
アイデンティティとして異性装をする人は「クロスドレッサー」や「ドラァグ」と呼ばれるが、これは性自認や性的指向とは必ずしも関係ない[49]。なお、そのような人たちを「トランスヴェスタイト(Transvestite)」と表現する場合もあるが、この言葉は蔑称とみなされることがある[49]。
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