キンレンカ(金蓮花)は南米原産のノウゼンハレン科の一年草。別名をノウゼンハレン(凌霄葉蓮)ともいう。美しい花を観賞するためや茎葉や花をハーブとして食用にするために栽培される。学名の「Tropaeolum」は、ギリシャ語でトロフィー(勝利の記念品)の意味[1]。2つの和名は黄色や橙色のノウゼンカズラに似て、ハスに似ることからつけられた。

キンレンカ
キンレンカ(Tropaeolum majus
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: アブラナ目 Brassicales
: ノウゼンハレン科 Tropaeolaceae
: ノウゼンハレン属 Tropaeolum
: キンレンカ T. majus
学名
Tropaeolum majus
L.
和名
キンレンカ(金蓮花)
ノウゼンハレン(凌霄葉蓮)
ナスタチウム
英名
Nasturtium
キンレンカを使ったサラダ

ナスタチウム(英語Nasturtium)とも呼ばれるが、この名は正式にはオランダガラシ(クレソン)属を指す学名であって、似た味をもつために転用された通称である。

葉にはかなりの辛味成分があり、他のアブラナ類の野菜と同じように辛子菜(カラシナ)と呼ばれることもある。

特徴

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アンデス山脈などの熱帯高地原産のため25度を越える暑さに弱く、寒さにも強くはない。葉はハスなどに似て円形で中央付近に葉柄がつく。花は左右相称、花弁が5枚あり、後ろに細長い漏斗状の距があってここに蜜がたまる。花期は5月から11月頃と長く、花色はオレンジピンク色など暖色系が中心。子房は3心皮からなり、果実は分果で3個に分かれ各1個の種子を含む。独特の香りはアブラムシを遠ざけるといわれ、コンパニオンプランツとして利用されることもある。

観賞用のほか食用品種(食用ナスタチウム)もある[2]。花や若葉はサラダなどに入れて食用にでき、わずかにクレソンを思わせる辛味がある。また未熟の種子を塩漬けにしてケッパーの代りに使うこともある。

キンレンカ属には中南米原産の約80種の草本があり、花を観賞するためにT. peregrinumT. speciosum などが栽培される。T. tuberosumいもを食用とするために栽培され、アンデス地方の一部ではMashuaと呼ばれる重要な作物である。

辛味成分

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キンレンカ(ナスタチウム)の辛味は、主としてベンジルイソチオシアネートbenzyl isothiocyanate, BITC)に由来する。BITCは、葉や種子に含まれるベンジル系グルコシノレートであるグルコトロペオリンbenzyl glucosinolate)が、組織損傷時に酵素ミロシナーゼmyrosinase)によって分解されることで生成する。これにより特有の刺激的な辛味が発現する。なお、加熱によりミロシナーゼ活性は低下するため、辛味は減弱する傾向がある。

栽培

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水はけのよい日なたで育てるが、暑さを嫌うので、真夏は明るい半日陰に移動させる。苗は春から秋にかけて流通するが、植えつけの適期は3月下旬から5月下旬ごろ。耐寒性は弱いため、種を秋にまいて育てた苗を購入した場合、冬には日当たりのよい室内に取り込む。

害虫は、ハダニが葉裏につく。発生すると葉に白い斑点がついてかすり状になる。また、ハモグリバエ(通称エカキムシ)が卵を生みつけると、幼虫が葉の中に潜り込んで内側の組織を食い荒らし、葉に曲がりくねった白い線が現れる。

増やす場合は、種蒔きとさし芽でふやすことができる。

種蒔きの適期は、3月下旬から4月中旬頃。種は硬実種子なので、一晩水につけてからポットなどにまき、覆土をする。さし芽の適期は6月頃。茎を3節ほどの長さで切り、下葉を落とすとともに摘心をして、ポットに水はけのよい用土を入れてさす。日陰で管理すると、10日ほどで発根する[3]

脚注

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  1. ^ 瀧井康勝『366日 誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、253頁。 
  2. ^ 食用花類 Edible flowers”. 農林水産省. 2022年2月23日閲覧。
  3. ^ ナスタチウム(キンレンカ)の育て方・栽培方法”. 植物図鑑|みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2025年9月6日閲覧。

関連項目ナスタチウム(キンレンカ)の育て方・栽培方法|植物図鑑

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