セタノール (cetanol) は、アルコールの1種であり、中でも高級飽和脂肪族アルコールに分類される。セチルアルコール (cetyl alcohol)、パルミチルアルコール (palmityl alcohol) とも呼ばれる。IUPAC系統名は 1-ヘキサデカノール (1-hexadecanol)。

セタノール[1]
Skeletal formula
Skeletal formula
Space-filling model
Space-filling model
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.048.301 ウィキデータを編集
EC番号
  • 253-149-0
KEGG
UNII
性質
C16H34O
モル質量 242.45 g·mol−1
外観 白色の結晶またはフレーク状
匂い かすかに蝋のような
密度 0.811 g/cm3
融点 49.3 °C (120.7 °F; 322.4 K)
沸点 344 °C (651 °F; 617 K)
溶けない
溶解度 エーテル、ベンゼン、クロロホルムによく溶ける。
アセトンに溶ける。
エタノールにわずかに溶ける。
log POW 7.25[2]
酸解離定数 pKa 16.20
磁化率 −183.5·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.4283 (79 °C)
粘度 53 cP (75 °C)
危険性
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
NFPA 704 four-colored diamondHealth 1: Exposure would cause irritation but only minor residual injury. E.g. turpentineFlammability 1: Must be pre-heated before ignition can occur. Flash point over 93 °C (200 °F). E.g. canola oilInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
1
1
0
引火点 185 °C (365 °F; 458 K)
致死量または濃度 (LD, LC)
5000 mg/kg (ラット, 経口)
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
チェック verify (what is チェック ☒N ?)

性質

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に不溶で、アルコール特有の臭いがある。常圧(760 mmHg)において融点は 49 ℃ であり、沸点は344 ℃である[1]。したがって、常温常圧においては固体である。なお、参考までに15 (mmHg)まで減圧すると、沸点は 190 ℃まで低下する[1]

歴史

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セタノールは、フランスの化学者ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールによって1813年に発見された[1]鯨蝋を加熱して得られた脂肪分を水酸化カリウムと反応させ、冷却した後にセチルアルコールの薄片が残ったとされる。 セチル cetyl の名前の由来も、鯨によるものであり、くじら座を示すラテン語の Cetus である。ヘキサデカン (C16H34) の旧称 セタン はここから来ている。

現代では捕鯨禁止により、パーム油等の植物油を精製し製造されたものが代用されている。パルミチルアルコールという別名は、パーム (palm) 油に由来する。なお、パルミチン酸のカルボキシ基を還元して水酸基にしたものが、セタノール(パルミチルアルコール)である。

用途

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化粧品等の原料に利用されている。保湿クリームに乳化ワックスとして用いるほか、界面活性剤としてシャンプーに用いられる。増粘剤としても用いられる事もある。他に、機械のナットボルトへの潤滑剤(高級アルコール系潤滑剤など)の原料として使われる。

出典

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  1. ^ a b c d Merck Index, 11th Edition, 2020.
  2. ^ Hexadecan-1-ol_msds”. 2025年10月1日閲覧。

関連項目

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