メアリー・ローズ (バラ)

バラの園芸品種の1つ

メアリー・ローズは、バラ園芸品種の1つ。1983年イギリスで、デビッド・C.H.オースチンによって作出された[1][2][3]グラハム・トーマスとともに交配親として多く使われ、イングリッシュローズの基礎を作った品種である[2][4]。流通名は、ヘンリー8世時代の軍艦「メアリー・ローズ」から採られた[2]

メアリー・ローズ

四季咲き・シュラブのイングリッシュローズ[2][4][注 1]。作出国のイギリスでは、樹高が1.2m、株張りが120cmになる[3]日本では樹高1.5-1.7m、株張りが130cmにまで育つ[2][6]。交配種は、ワイフ・オブ・バス×The Miller[2][3]。花色はローズピンクで、咲き進むと色が濃くなる[3]。花型はロゼット咲きまたは丸弁カップ咲きで、花径は8-10cmの中大輪種[4][7][6]。花弁数は約50枚[7][6]。5輪前後の房咲きになる[2]。花付きは良く、シュートの元から先まで花を付ける[1][6]。特に春の花は長く楽しめる[2]。花の香りは強い[4]。香りの質は甘いダマスク香[2][注 2]。特に暖かい地方では、一層よく香る[2]。葉は半光沢性で緑色[3]。枝はよく分かれ、たくさんの小枝がある形のよいシュラブ状になる[2]。枝はしなやかで誘引しやすいが、大小の鋭い棘がある[1][2]。花枝は細目で短い[1]。樹勢は強い[1]。やせた土地でも良く育つ強健種だが、耐陰性は劣り、日照不足になると生育が悪くなる[4][5]。半日以上の日照が必要なようだと報告されている[5]。耐病性に優れる[4][注 3]。無農薬栽培では、うどん粉病には強いが、黒点病は発生しやすい[5]。一般的には定期的な薬剤散布が推奨される[1][7]。耐寒性が強く、最低気温が摂氏マイナス15度の土地でも耐える[3]。施肥は、窒素肥料を少なめに与えるとよい[7]

コテージ・ローズ

枝変わりに、花色が淡い桃色の「ルドゥーテ」、白色の「ウィンチェスター・キャシードラル」がある[1][2]。花色の違いを除けば、それ以外の性質はほぼ同じ[1]。ルドゥーテは枝が長く伸び、細かい棘が多い[8]。メアリー・ローズに、その親のワイフ・オブ・バスを再交配して作出した品種にコテージ・ローズがある[1]。大きさが一回り小さくなったような花を付けるが、特性はよく似ている[1]

脚注

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  1. ^ 返り咲きと書く本もある[5]
  2. ^ ただし、ミルラ香と書く本もある[5]。中程度のアニスの香りがすると書く本もある[1]
  3. ^ 耐病性は中程度と記す本もある[1]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l 河合伸志『美しく育てやすいバラ銘花図鑑』日本文芸社、2019年3月20日、91頁。ISBN 978-4-537-21667-7 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m NHK出版 編『別冊NHK趣味の園芸 バラ大百科 選ぶ、育てる、咲かせる』日本放送出版協会、2006年4月20日、251頁。ISBN 978-4-14-645776-8 
  3. ^ a b c d e f 英国王立園芸協会 編、英国王立園芸協会日本支部 訳『バラ図鑑300』日本ヴォーグ社、1996年11月10日、65頁。ISBN 4-529-02774-0 
  4. ^ a b c d e f 主婦の友社 編『バラ図鑑820』主婦の友社、2019年4月30日、37頁。ISBN 978-4-07-433816-0 
  5. ^ a b c d e 梶浦道成・小竹幸子 編『オーガニック・ローズ358』築地書店、2012年5月25日、209頁。ISBN 978-4-8067-1439-2 
  6. ^ a b c d 浜崎雅子『失敗しないバラの育て方』西東社、2004年3月16日、71頁。ISBN 4-7916-1000-8 
  7. ^ a b c d 田村正隆『美しい花を咲かせるためのはじめてのバラの育て方』ナツメ社、1999年11月17日、68頁。ISBN 4-8163-2700-2 
  8. ^ 梶浦・小竹『オーガニック・ローズ358』p.237.