メムピス[1]古希: Μέμφις, Memphis)は、ギリシア神話の女性である。メンピスメンフィスとも表記される[2]。主に、

が知られている。以下に説明する。

ネイロスの娘

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このメムピスは、ナイル川河神ネイロスの娘で、アンキノエー[3]アニッペー[4]エウリュッロエーエウローペーと姉妹[5]アルゴスの王女イーオーとゼウスの子[6]エパポスと結婚し、娘リビュエー[3]リューシアナッサを生んだ[7]。夫エパポスは妻の名前にちなんだ都市メンフィスを創建した[3]

娘のうちリビュエーはポセイドーンとの間に双生児アゲーノールベーロスを生み、アゲーノールはポイニーケーの王に、ベーロスはエジプトの王になった[3]。またリューシアナッサはポセイドーンとの間に暴虐なエジプト王ブーシーリスを生んだ[7]

なお、ヒュギーヌスによるとエパポスの妻はカッシオペイア[8]

ダナオスの妻

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このメムピスは、アルゴスの王ダナオスの妻の1人で、3人の娘クレイテー、ステネレー、クリューシッペーの母である。メムピスの娘たちはエジプト王アイギュプトスとテュリアーの3人の同名の息子クレイトスステネロスクリューシッポスと結婚したが、他の姉妹たちと同様、父の命にしたがって夫を殺した[9]

ウコレウスの娘

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このメムピスは、エジプトの王ウコレウスの娘である。シケリアのディオドーロスによると、メンフィス市はウコレウス王によって創建されたが[10]、その際に都市の名前を娘からとった。メムピスはまたナイル川の河神に恋され、牡牛となった河神との間にアイギュプトスを生んだ[11]

旧約聖書エゼキエル書30章では、「ノ、ノフ、オン、シン(新改訳第三版)」という都市が出てくるが、ノフはメンフィスを指したとされる。

脚注

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  1. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。ISBN 9784000800136 284頁。
  2. ^ 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。ISBN 9784876989256 1286頁。
  3. ^ a b c d アポロドーロス、2巻1・4。
  4. ^ プルタルコス『対比小話集』38”. Perseus Digital Library. 2022年6月25日閲覧。
  5. ^ ヨハネス・ツェツェース『キリアデス』7巻37”. Theoi Project. 2022年6月25日閲覧。
  6. ^ アポロドーロス、2巻1・3。
  7. ^ a b アポロドーロス、2巻5・11。
  8. ^ ヒュギーヌス、149話。
  9. ^ アポロドーロス、2巻1・5。
  10. ^ シケリアのディオドーロス、1巻50・3。
  11. ^ シケリアのディオドーロス、1巻51・3。

参考文献

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