リュイリエの定理: L'Huilier's theorem) とは、初等幾何学における三角形についての定理で、1809年[1]スイス数学者サイモン・アントワーヌ・ジャン・リュイリエによって提唱されたものである。

定理

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リュイリエの定理 ― 三角形内接円の半径を  、3つの傍接円の半径をそれぞれ   とすると、

 

証明

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面積S の三角形の3辺を a, b, c とする。

内接円の半径r の逆数は

 

3傍接円の半径 rA, rB, rC の逆数は

 
 
 

故に逆数和は

 

となる。

拡張

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リュイリエの定理は平面(2次元)の結果だが、 次元空間に拡張できる。

  単体(2次元では三角形、3次元では四面体)とする。 内接球は、 の内部から各面への距離が等しくなる点を中心とした、各面に接するとして定義できる。この半径を とする。同様に、 傍接球は、 の内部から一つの面に対してだけ反対側に行った領域から、各面への距離が等しくなる点を中心とした、各面に接するとして定義できる。  個の面を持つので、これらの半径を とする。このとき、

 

が成り立つ[2]。証明は線形代数を用いる。

この結果は日本経済学者戸田アレクシ哲が大学生のときに証明し、2014年に専門誌に掲載された[3]

派生項目

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リュイリエは、彼の著書 (Lhuilier, 1809) において

 

であることも示唆している。

これより

 

であるから、リュイリエの定理:

 

と辺々掛け合わせると

 

が得られる。ここで s△ABC半周長 (a + b + c)/2 である。この等式は、カール・フォイエルバッハ1822年に得たものである[1][4]

脚注

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  1. ^ a b 岩田至康『幾何学大辞典』 1巻、槙書店、1971年、15,193頁。 
  2. ^ Toda, Alexis Akira (2014). “Radii of the inscribed and escribed spheres of a simplex”. International Journal of Geometry 3 (2). https://ijgeometry.com/wp-content/uploads/2014/10/1.pdf.  Theorem 4.1
  3. ^ Alexis Akira Toda - Publications”. 2025年9月10日閲覧。
  4. ^ それよりも前にリュイリエが彼の著書 (Lhuilier, 1809) において全く同等の等式を示唆している(224頁)。

関連項目

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出典

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外部リンク

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