付着生物(ふちゃくせいぶつ、英語:sessile organisms)とは、水中固形物に付着して生活する生物の総称。固着生物とも呼ぶ[1]

流向流速計英語版に付着したゼブラガイ英語版

一般に幼体は水中を移動するものの、着底後はほとんど、もしくは全くその場から移動しない。船舶堤防取水施設排水施設その他の人工物に付着してそれらの性能や機能を減じたり、水産物養殖の成長を阻害したりするため、有害生物とみなされることも多い。

付着する生物

編集

基物上に附着する生物は、付着して全く動かない固着性のもの、を掘って潜る穿孔性のもの、それに匍匐性のもの、あるいはそれらの中間的なものなどがある。たとえば巣穴を作ってそれを固定させるが、本体は自由に動ける端脚類ドロクダムシ科英語版のようなものもある。

いずれにせよ、特ににおいては様々な生物が基盤上に付着して暮らしており、そのような生物自体も基盤となってその上に生物が附着するという状況が見られる。

1952年にアメリカ海軍がウッズホール海洋研究所の協力で付着生物リストを制作し、約2000種の動植物をリストアップした[2]。2000年代のリストでは、 海洋付着生物の種類は世界的に見て約2000種、生物分類ではバクテリア・菌類50、珪藻類110、海藻450、動物各類計約1240である。そのうち基質に付着する固着生活種は動物類で合計824種、菌類等を合わせて約1500種である[3]

植物

編集

動物

編集

付着生物の研究

編集

生物学的な面はもとより、生物の付着が船舶の外殻や給・排水施設の性能に大きな影響を与えることから、工学的な必要性から付着生物の生態へアプローチも行われる。

人工物への付着生物対策

編集

有機スズ化合物は、付着生物を忌避するために船舶の塗装に用いられてきたが、2008年9月に発効した船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約英語版(通称:AFS条約)によって禁止された[4][5]。それ以降、毒性が低い酸化銅(I)(亜酸化銅)などが付着忌避物質となる防汚塗料英語版として使われている[6]

鮫皮は、フジツボなどが付着しにくいことから、生物構造を応用するバイオミメティックスが検討されている[5][7]。(バイオミメティックス防汚塗料英語版)

超音波による生物付着防止英語版、パルス放電[8]、パルスレーザー[9]、温水[10]などによる生物付着対策の研究されている。

生物への付着生物対策

編集

ウミガメなどの海洋生物に付着して、座礁させるため取り除く処置が行われる[11]

出典

編集
  1. ^ 固着生物https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BA%E7%9D%80%E7%94%9F%E7%89%A9  エラー: {{Cite Kotobank}}の使用で|access-date=が指定されていません。
  2. ^ 平野 升造「海洋の付着生物」『日本舶用機関学会誌』第16巻第3号、1981年、205–210頁、doi:10.5988/jime1966.16.205ISSN 0388-3051 
  3. ^ 花房, 元顕「海洋付着生物の一般的生態(<特集>海洋付着生物と防汚の現状)」2002年、doi:10.18949/jinnavi.154.0_20 
  4. ^ AFS条約https://kotobank.jp/word/AFS%E6%9D%A1%E7%B4%84  エラー: {{Cite Kotobank}}の使用で|access-date=が指定されていません。
  5. ^ a b 沖野, 龍文 (2008年9月2日). “船にフジツボをつけない技術(北海道大学大学院地球環境科学研究院平成20年度公開講座 ヒトと地球にやさしい化学技術. 第3回からの引用)”. 2024年5月1日閲覧。
  6. ^ 知ってた?タンカーの船底はなぜ赤い? 海運会社社長の解説が「こんなにくわしい説明は初めて」と話題” (Japanese). 神戸新聞NEXT (2023年1月10日). 2024年5月1日閲覧。
  7. ^ Nast, Condé (2005年3月15日). “船底への付着物を防ぐ「サメ皮」コーティング”. WIRED.jp. 2024年5月1日閲覧。
  8. ^ 水生生物の除去及び付着防止方法”. 2024年5月2日閲覧。
  9. ^ Nandakumar, Kanavillil; Obika, Hideki; Shinozaki, Tatsuya; Ooie, Toshihiko; Utsumi, Akihiro; Yano, Tetsuo (2003-05). “Pulsed laser irradiation impact on two marine diatoms Skeletonema costatum and Chaetoceros gracilis” (英語). Water Research 37 (10): 2311–2316. doi:10.1016/S0043-1354(03)00007-1. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0043135403000071. 
  10. ^ Sommerville, D. (1986). “Development of a Site Specific Biofouling Control Program for the Diablo Canyon Power Plant”. OCEANS '86 (IEEE). doi:10.1109/oceans.1986.1160543. http://dx.doi.org/10.1109/oceans.1986.1160543. 
  11. ^ フジツボや藻にまみれて座礁したウミガメ、1.5ポンドのフジツボを取り除いて順調に回復へ”. ハフポスト (2025年5月25日). 2025年6月1日閲覧。

関連項目

編集

外部リンク

編集