平成10年台風第4号
平成10年台風第4号（へいせい10ねんたいふうだい4ごう、国際名：Rex）は、1998年（平成10年）8月25日に発生し、日本に接近した台風である[1]。日本列島には上陸はしなかったが、前線を刺激して各地に大雨の被害を出した[2][3]。
| 台風第4号（Rex、レックス） | |
|---|---|
| カテゴリー4の タイフーン （SSHWS） | |
 台風第4号 | |
| 発生期間 |
1998年8月25日 9:00 〜9月7日 9:00 |
| 寿命 | 13日 |
| 最低気圧 | 955 hPa |
| 最大風速 （日気象庁解析） | 40 m/s (75 knot) |
| 最大風速 （米海軍解析） | 115 knot |
| 被害総額 | － |
| 死傷者数 | 死者22名、行方不明者2名 |
| 被害地域 | 日本 |
| プロジェクト : 気象と気候／災害 | |
概要
編集
8月25日に沖縄近海で発生した台風4号は発達しながら日本の南海上を東進し、28日ごろからは向きを北寄りに変え、小笠原諸島に接近した[1][4]。本州付近に停滞していた前線に向かって、台風からの湿った気流が流れ込んだため積乱雲が発達し、東日本および中日本の一部では豪雨となった[2][3]。小笠原近海で台風の速度が遅くなったため、湿った気流の供給は長時間続くこととなり、大雨が長引くことになった[2][3][5]。この大雨は8月31日ごろまで続き、9月1日以降は次第に日本列島から弱まりながら遠ざかり9月7日に温帯低気圧に変わった[6][7]。
この台風は、台風4号としては統計史上最も遅い日時に発生した[8]。
影響
編集26日から31日にかけて、前線が本州付近に停滞していた[6]。一方、台風4号が日本の南海上をゆっくり北上した[9][6]。この間、日本の東の高気圧と台風の影響で、前線に向かって暖湿気流が流入したため、北日本から東日本にかけて断続的に大雨が降った[10]。 特に26日夜から27日朝にかけて、栃木県と福島県境付近に線状降水帯が形成されて豪雨となり、那須（栃木県那須町）で27日の日降水量607mm（期間降水量1,254mm）を観測するなど記録的な大雨となった[10]。栃木県と福島県を中心に、広い範囲で土砂崩れや浸水による被害があった[10][11][12][6]。
名称
編集この台風や前線等による一連の豪雨災害について、気象庁は正式に命名してはいないが、8月下旬に発生したことから「平成10年8月末豪雨」と呼ばれることが多く[13][14]、理科年表もこの名称を採用している[15]。そのほか、北関東と南東北で大雨となったことから「北関東・南東北豪雨」とも呼ばれており[16]、特に被害が大きかった栃木県では「那須豪雨」とも呼ばれている。
記録
編集被害
編集| 都道府県 | 人的被害 (人) | 住家被害 (棟) | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 死者 | 行方不明 | 負傷者 | 全壊 | 半壊 | 一部損壊 | 床上浸水 | 床下浸水 | ||
| 重傷 | 軽傷 | ||||||||
| 北海道 | 2 | 1 | 7 | 100 | |||||
| 青森県 | 1 | 15 | |||||||
| 岩手県 | 1 | 1 | 32 | 119 | 374 | ||||
| 宮城県 | 3 | 25 | 438 | ||||||
| 秋田県 | 1 | ||||||||
| 山形県 | 2 | ||||||||
| 福島県 | 11 | 9 | 13 | 48 | 74 | 153 | 1,106 | 2,645 | |
| 茨城県 | 5 | 420 | 490 | ||||||
| 栃木県 | 5 | 2 | 19 | 47 | 48 | 34 | 484 | 2,362 | |
| 群馬県 | 1 | 2 | 23 | 6 | 30 | 479 | |||
| 埼玉県 | 814 | 1,881 | |||||||
| 千葉県 | 2 | 25 | |||||||
| 東京都 | 12 | 143 | |||||||
| 神奈川県 | 1 | 1 | 65 | ||||||
| 富山県 | 10 | ||||||||
| 山梨県 | 4 | 1 | 16 | ||||||
| 岐阜県 | 37 | ||||||||
| 静岡県 | 2 | 3 | 3 | 6 | 10 | 14 | 213 | 450 | |
| 愛知県 | 1 | 6 | 122 | ||||||
| 滋賀県 | 15 | ||||||||
| 京都府 | 32 | ||||||||
| 奈良県 | 1 | 88 | 1,816 | ||||||
| 合計 | 22 | 2 | 13 | 42 | 101 | 156 | 249 | 3,329 | 11,518 |
関連項目
編集脚注
編集- ^ a b 『読売新聞』1998年8月25日 全国版 東京夕刊 夕2社14頁「沖縄・南大東島の海上に台風4号が発生」（読売新聞東京本社）
- ^ a b c 『読売新聞』1998年8月28日 全国版 東京夕刊 夕一面1頁「関東など豪雨で交通網が寸断 茨城・那珂川、一部はんらん 死者13人に」（読売新聞東京本社）
- ^ a b c 『朝日新聞』1998年8月28日 夕刊 1総1頁「不安定な状態続く 台風4号、前線刺激」（朝日新聞東京本社）
- ^ 『読売新聞』1998年8月27日 全国版 東京朝刊 2社38頁「関東甲信で大雨の恐れ 台風沿いに雨雲発達／気象庁」（読売新聞東京本社）
- ^ 『読売新聞』1998年8月29日 全国版 東京朝刊 一面1頁「東日本なお大雨の恐れ 被害20都道府県に拡大」（読売新聞東京本社）
- ^ a b c d e f 『読売新聞』1998年8月31日 全国版 東京朝刊 二面2頁「悪条件重なり記録的豪雨に 5日間で8か月分雨量も 南風合流、勢い増す」（読売新聞東京本社）
- ^ 『読売新聞』1998年9月1日 全国版 東京朝刊 2社34頁「台風4号、東に遠ざかる／気象庁」（読売新聞東京本社）
- ^ “デジタル台風：台風リスト”. agora.ex.nii.ac.jp. 2020年7月6日閲覧。
- ^ 『読売新聞』1998年8月30日 全国版 東京朝刊 2社38頁「台風4号、超スロー 1日にも最接近」（読売新聞東京本社）
- ^ a b c d e f “前線、台風第4号 平成10年（1998年）8月26日～8月31日”. www.data.jma.go.jp. 2020年6月13日閲覧。
- ^ 『朝日新聞』1998年8月27日 夕刊 1総1頁「豪雨で7人死亡6人不明 土砂、障害者施設に 栃木・福島」（朝日新聞東京本社）
- ^ 『朝日新聞』1998年8月28日 夕刊 1総1頁「豪雨で死者10人に 郡山で避難勧告 福島・栃木」（朝日新聞東京本社）
- ^ “平成10年8月末豪雨による被害状況”. ndlonline.ndl.go.jp. 建設省河川局防災海岸課災害対策室. 2022年12月9日閲覧。
- ^ 平成10年8月末豪雨による災害の被害状況について - 消防庁防災課
- ^ “デジタル台風：台風199804号 (REX) - 災害情報”. agora.ex.nii.ac.jp. 2022年12月11日閲覧。
- ^ “北関東・南東北豪雨（1998年8月27日） ｜ 災害カレンダー”. Yahoo!天気・災害. 2022年12月11日閲覧。
- ^ 『朝日新聞』1998年8月31日 朝刊 1総1頁「家屋・交通の被害拡大 台風北上、大雨続く恐れ 死者・不明19人に」（朝日新聞東京本社）
- ^ “被害状況”. www.data.jma.go.jp. 防災白書. 2022年12月11日閲覧。
外部リンク
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