盲獣
江戸川乱歩による日本の小説
『盲獣』(もうじゅう)とは、江戸川乱歩の小説である。
概要
編集博文館の『朝日』に1931年2号から翌年の3月号まで連載された当時の乱歩が量産していた通俗もの作品である。乱歩自身は本作を失敗作としており、桃源社版「江戸川乱歩全集」刊行の際に後半の一部を削除している[1]。
あらすじ
編集浅草歌劇の踊り子である水木蘭子は、ある日恋人の使いと偽る自動車によってかどわかされ、見知らぬ地下室へと連れ込まれる。その薄暗い地下室で見たのは奇矯なオブジェの林であった。オブジェは女性のありとあらゆる部位をかたどり、色彩は奇妙だが手触りにおいては様々な器材を使った巧妙なもので、腕なら腕、唇なら唇とまとめて無数に並べられている。その地下室の主は蘭子の前に度々現れる「盲目の男」であった。
生まれながらの全盲である彼はそのなぐさみとして「触覚」の世界を見い出し、父の莫大な遺産を使ってそれを満足させる芸術を造らせ続けているという。やがてこの触覚の世界に没頭し、彼と共にこの地下室で暮らすようになる蘭子。しかし、蘭子に飽きはじめた男は、その本性を現し始める。
映画
編集1969年版
編集盲獣 | |
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監督 | 増村保造 |
脚本 | 白坂依志夫 |
原作 | 江戸川乱歩 |
出演者 |
船越英二 緑魔子 千石規子 |
音楽 | 林光 |
撮影 | 小林節雄 |
編集 | 中静達治 |
製作会社 | 大映 |
配給 | 大映 |
公開 | 1969年1月25日 |
上映時間 | 84分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
1969年に大映が制作、配給して公開された[2]。増村保造が監督して脚本(脚色)は白坂依志夫が担当しており、原作に比すると翻案に近く中盤以降はほぼ独自な展開である。
出演者
編集スタッフ
編集- 企画 - 仲野和正
- 原作 - 江戸川乱歩
- 脚本 - 白坂依志夫
- 撮影 - 小林節雄
- 録音 - 須田武雄
- 照明 - 渡辺長治
- 美術 - 間野重雄
- 音楽 - 林光
- 編集 - 中静達治
- 助監督 - 佐々木行雄
- 製作主任 - 薮本和男
盲獣vs一寸法師
編集2004年公開の映画。
→詳細は「盲獣vs一寸法師」を参照
テレビドラマ
編集収録作品
編集- 日本小説文庫『盲獣』、春陽堂、1932年
- 『盲獣』、文芸図書出版社、1952年
- 江戸川乱歩全集3『蜘蛛男・指・盲獣』、桃源社、1963年
- 江戸川乱歩文庫『十字路・盲獣』、春陽堂書店、1988年 ISBN 4394301300
- 江戸川乱歩推理文庫『盲獣』、講談社文庫、1988年 ISBN 4061952137
- 現代日本推理小説叢書『盲獣 - 乱歩傑作選 14』、創元推理文庫、1996年 ISBN 4488401147
- 『江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男』、光文社文庫、2005年 ISBN 4334738206
- 江戸川乱歩全集『蜘蛛男・指・盲獣』、沖積舎(桃源社版の覆刻版)、2007年 ISBN 4806066311
漫画
編集- 作画:久木田高明。2017年販売、電子書籍のみ。書き下ろし作品。
- 原作沿いながらも原作3人目の被害者、麗子が探偵役となり謎を解き明かす推理作品となっており漫画独自のストーリー展開を辿る。