アスパラギン: asparagine)は、アミノ酸のひとつで、2-アミノ-3-カルバモイルプロピオン酸のこと。略号は N あるいは Asnアスパラガスからはじめて単離されたことによりこの名がついた。

l-アスパラギン
L-アスパラギンの骨格式
L-アスパラギンの骨格式
L-アスパラギン分子の双性イオン状態の球棒モデル
生理的状態でのL-アスパラギンの骨格式
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
DrugBank
ECHA InfoCard 100.019.565 ウィキデータを編集
EC番号
  • 200-735-9
KEGG
UNII
性質
C4H8N2O3
モル質量 132.12 g·mol−1
外観 白色の結晶
密度 1.543 g/cm3
融点 234 °C (453 °F; 507 K)
沸点 438 °C (820 °F; 711 K)
2.94 g/100 mL
溶解度 酸、塩基に溶ける。メタノール、エタノール、エーテル、ベンゼンにほとんど溶けない。
log POW −3.82
酸解離定数 pKa
  • 2.1 (カルボキシル基; 20 °C, H2O)
  • 8.80 (アミノ基; 20 °C, H2O)[1]
磁化率 −69.5·10−6 cm3/mol
構造
直方晶系
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −789.4 kJ/mol
危険性
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
NFPA 704 four-colored diamondHealth 1: Exposure would cause irritation but only minor residual injury. E.g. turpentineFlammability 0: Will not burn. E.g. waterInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
1
0
0
引火点 219 °C (426 °F; 492 K)
安全データシート (SDS) Sigma-Alrich
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
チェック verify (what is チェック ☒N ?)

中性極性側鎖アミノ酸に分類される。蛋白質構成アミノ酸のひとつで、非必須アミノ酸。グリコーゲン生産性を持つ。コドンはAAUまたはAACである。

歴史

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アスパラギンは1806年、フランスのルイ=ニコラ・ヴォークランピエール=ジャン・ロビケ(当時は助手)によりアスパラガスの汁から結晶として単離され、単離された最初のアミノ酸となった[2][3]

1809年、ピエール=ジャン・ロビケは甘草の根からもアスパラギン様物質を単離したが、1828年、それはアスパラギンであったことが確認された[4]

タンパク質内での機能

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アスパラギンの側鎖はペプチド骨格と水素結合を形成することができる。つまり、他のペプチド骨格の代わりに水素結合サイトを埋めることができる。そのため、この残基はαヘリックスの始点、終点、βシートターンで見られる。構造の類似したグルタミンは立体配座エントロピーが大きいため、このような機能は持たない。

また、アスパラギンはタンパクのN-グリコシル化の標的となる。

生合成

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生体内では、アスパラギン酸からアスパラギンシンテターゼにより生合成される。また、アスパラギナーゼによりアスパラギン酸とアンモニアに分解される。

 
オキサロ酢酸からのアスパラギン生合成

物性

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がんへの影響

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英科学誌「ネイチャー」に掲載された研究論文で、動物実験段階ではあるがアスパラギンが不足すると乳がん細胞の成長が妨げられることが分かった。実験の内容はがんにかかったマウスに低アスパラギンの食事やアスパラギンを阻害する薬を与えるというものである。通常、がんにかかったマウスだとがんが転移して2~3週間程度で亡くなるが、低アスパラギンの食事やアスパラギンを阻害する薬を与えたマウスでは転移が抑えられた[5]

出典

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  1. ^ CRC Handbook of Chemistry and Physics (97th ed.). CRC Press. (2016). pp. 5–89. ISBN 978-1498754286 
  2. ^ Vauquelin LN, Robiquet PJ (1806). “La découverte d'un nouveau principe végétal dans le suc des asperges”. Annales de Chimie 57: 88–93. 
  3. ^ R.H.A. Plimmer (1912) [1908]. R.H.A. Plimmer & F.G. Hopkins. ed. The chemical composition of the proteins. Monographs on biochemistry. Part I. Analysis (2nd ed.). London: Longmans, Green and Co.. p. 112. https://books.google.co.jp/books?id=7JM8AAAAIAAJ&pg=PA112&redir_esc=y&hl=ja 2010年1月18日閲覧。 
  4. ^ http://www.henriettesherbal.com/eclectic/kings/glycyrrhiza.html
  5. ^ がん進行・転移に食品が影響か=英研究”. BBC. 2018年2月9日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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