「5.56x45mm NATO弾」の版間の差分
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5.56x45mm NATO弾のベースとなったのが[[:en:.223 Remington|.223レミントン弾]]で、その更にベースとなったのが[[:en:.222 Remington|.222レミントン弾]]であった{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。これは、[[レミントン・アームズ|レミントン]]社の[[:en:Remington Model 721|M722ライフル]]用の弾薬として同社が[[1950年]]に発売したもので、[[:en:.218 Bee|.218ビー弾]]と[[:en:.220 Swift|.218スウィフト弾]]の中間的な性格を備えた弾薬として、小動物狩猟や[[:en:Benchrest shooting|ベンチレスト射撃]]の用途で人気を博していた{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。[[1953年]]には、.222レミントン弾をもとに[[薬莢]]を33.5 mmにネックダウンして短くし、2.65 gの弾丸を用いた弾薬が試作された{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。これは[[.30カービン弾]]と同等の性能を備えてはいたものの、[[7.62x51mm NATO弾]]が標準弾薬として制定される直前であったこともあり、軍用小銃弾薬としては性能不足と見なされて、この時点では軍用としては導入されなかった{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。
[[1950年代]]後半、[[アメリカ陸軍]]の大陸陸軍コマンド(CONARC)が作成した要求事項に応じて、数社が小口径高速弾(SCHV)ライフルの開発をスタートさせた{{Efn2|歩兵委員会が策定した要求事項では、M1小銃から発射されるM2ボール弾と同様の弾道と精度を維持しつつ、[[.30カービン弾]]と同等以上の[[ストッピングパワー|殺傷能力]]、500ヤードの距離での[[戦闘用ヘルメット|鉄帽]]・[[ボディアーマー]]や0.135インチ厚の鋼板に対する貫通能力を備えることが求められた<ref>{{Cite web|first=Daniel E.|last=Watters|date=2004-01-03|title=A 5.56 X 45mm "Timeline"|website=The Gun Zone|url=http://www.thegunzone.com/556dw.html|archivedate=2004-02-09|archiveurl=https://web.archive.org/web/20040209030852/http://www.thegunzone.com/556dw.html|accessdate=2025-04-28}}</ref>。}}。.222レミントン弾はこの要求事項に近かったものの、完全には満たしていなかったため、発展型の開発が求められることになった{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。[[1957年]]、レミントン社はアーマライト社と共同で小口径高速弾の開発に着手し、『[[:en:Guns & Ammo|ガンズ・アンド・アモ]]』誌のロバート・ハットン編集長の設計による.222レミントン・スペシャル弾を開発した{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}{{Efn2|レミントン社は[[スプリングフィールド造兵廠]]とも弾薬の共同開発を行っており、これは.224スプリングフィールド弾として完成したが、後にスプリングフィールド造兵廠が開発から撤退したこともあって、[[1958年]]に市販された際の名称は[[:en:.222 Remington Magnum|.222レミントン・マグナム弾]]となった{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。}}。[[1957年]]5月には、[[陸軍歩兵学校 (アメリカ合衆国)|陸軍歩兵学校]]において、.222レミントン・スペシャル弾を使用する[[M16自動小銃#AR-15 (モデル601, 602)|AR-15小銃]]のデモンストレーション射撃が行われた{{Sfn|Rottman|2017|pp=11-14}}。
その後、.222レミントン・スペシャル弾は薬莢をわずかに延長した'''.223レミントン弾'''に発展した。そして[[1963年]]にアメリカ軍に採用されるにあたり、[[北大西洋条約機構]](NATO)の標準化協定に従ってミリメートル表示に改められ、5.56mm弾と称されるようになった{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。なお公称は.223口径だが、実測は.224口径であるため、最初期には5.64mm弾薬とも称されていた{{Sfn|Rottman|2017|pp=23-26}}。普通弾としては、AR-15を[[M16自動小銃#M16 (モデル604)|M16]]として導入した[[アメリカ空軍]]がMLU-26/Pを少数購入したのち、陸軍・[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]が[[M16自動小銃#XM16E1, M16A1 (モデル603)|M16A1]]を採用すると、'''M193'''が広く用いられるようになった{{Sfn|Rottman|2017|pp=123-129}}。ただし実包に充填される発射薬としては、開発段階では棒状の[[:en:Improved Military Rifle|IMR-4475]]火薬を使用していたのに対し、制式化されたM193普通弾では、設計陣の反対にもかかわらず7.62mm弾などと同じ粒状火薬が採用された{{Sfn|Rottman|2017|pp=46-52}}。この変更は、IMR-4475火薬では陸軍が[[要件]]で定めた[[初速]]にわずかに満たなかったためではあったが、この初速の要求自体が根拠不明瞭なものであり、IMR火薬を用いた弾薬は満足すべき成績を残していたことから、後々まで批判を受けることとなった<ref>{{Cite journal|url=https://www.theatlantic.com/magazine/archive/1981/06/m-16-a-bureaucratic-horror-story/545153/|title=M-16: A Bureaucratic Horror Story|author=[[:en:James Fallows|James Fallows]]|date=June 1981|journal=[[アトランティック (雑誌)|The Atlantic]]|issn=1072-7825}}</ref>。粒状火薬はIMR火薬よりも安い一方で燃えカスが多く、銃の動作不良の原因となったため、後にIMR火薬に変更した弾薬が導入されたが、粒状火薬を使用した弾薬の供給も続いていたため、本弾薬の不評の一因となった{{Sfn|Rottman|2017|pp=46-52}}。
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これと並行して、口径は5.56mmのままで有効射程を延伸する試みも行われており、[[2002年]]には精密射撃用の'''Mk 262 mod 1/2'''長距離用普通弾もアメリカ軍制式に加えられた{{Sfn|Rottman|2017|pp=129-133}}。これは弾丸重量を{{Convert|77|gr|g|abbr=on}}に増して、射程を延伸するとともにストッピングパワーも向上させたもので、元々は[[特殊部隊]]の[[選抜射手]]用の[[M16自動小銃#SPR Mk12|特殊用途小銃(SPR)Mk.12]]のために開発されたが、M4A1カービンでも用いられるようになった{{Sfn|Rottman|2017|pp=129-133}}。ただし鋼製の弾芯が挿入されていないために貫通力が低く、また製造に手間がかかるため高価でもある{{Sfn|Rottman|2017|pp=129-133}}。
一方、[[2009年]]には'''Mk 318'''高性能普通弾が開発された{{Sfn|Rottman|2017|pp=129-133}}。これは[[アメリカ特殊作戦軍]]の要求に基づき、銃身が短い[[FN SCAR|SCAR-L]]でも性能を発揮できるように開発されたもので、弾丸重量はM855と同程度の{{Convert|62|gr|g|abbr=on}}だが、弾芯は、前半分が鉛製、後半分が銅製のペネトレーターとなっており、障害物に影響されにくく、跳弾になりにくい特性がある{{Sfn|Rottman|2017|pp=129-133}}。M16小銃やM4カービンで使用しても効果が高いことから、2010年にはアメリカ海兵隊でも採用
これに対し、アメリカ陸軍向けとしては、2010年に'''M855A1'''が開発された。これも弾丸重量は{{Convert|62|gr|g|abbr=on}}で、弾芯が2分割されているのも同様だが、こちらは前半部に硬化鋼製のペネトレーターを挿入し、後半部は[[ビスマス]]と[[スズ]]の[[合金]]製の弾芯が挿入されている{{Sfn|Rottman|2017|pp=129-133}}。
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[[陸上自衛隊]]は[[89式5.56mm小銃]]開発に伴い、SS109に準ずる'''89式5.56mm普通弾'''を開発し、旭精機工業株式会社が製造している。
平成5年度から使用されている'''89式5.56mm普通弾(B)'''は防衛庁の制式要綱においては「弾丸重量4g 発射薬量1.6g 全体重量12g、弾丸は鋼心、鉛心及び被甲から成る」と規定される。2013年12月23日、[[国際連合南スーダン派遣団|国連南スーダン派遣団(UNMISS)]]に参加している[[韓国軍]]に対し、陸上自衛隊の89式5.56mm普通弾(B)が1万発
2013年より量産・納入を開始した'''89式5.56mm普通弾(C)'''は、環境汚染と自衛官の健康被害軽減のため無鉛化を図り、弾心と雷管の無鉛化に成功している。米軍のM855A1弾は弾心材質にSn-Bi合金(改良版では銅)を用いる一方、旭精機の5.56mm普通弾(C)は鉄弾心を採用した。
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== 使用状況 ==
NATO加盟国での多くの小火器(特に[[アサルトライフル]])が5.56x45mm NATO弾を使用する。
* [[H&K HK416]] - {{NOR}}、{{FRA}}、{{LUX}}、{{DEU}}
* {{AUT}} - ステアー [[ステアーAUG|AUG]]▼
* [[H&K G36]] - {{SPA}}、{{LAT}}、{{LIT}}、{{MNE}}
*
* [[M4カービン]] - {{USA}}、{{EST}}
* [[Cz805]] - {{CZE}}、{{HUN}}
* [[FN SCAR]] - {{BEL}}、{{POR}}
* [[Kbs wz. 1996 ベリル]] - {{POL}}
* [[ベレッタ ARX160|ARX160]] - {{ITA}}
*
* [[Ak 5]] - {{SWE}}
* [[VHS (アサルトライフル)|VHS]] - {{CRO}}
* [[FN F2000]] - {{SLO}}
* [[L85]] - {{GBR}}
NATO加盟国以外では、以下の小火器で使われている。
▲* {{AUT}} - ステアー [[ステアーAUG|AUG]]
* {{JPN}} - [[89式5.56mm小銃|89式小銃]]、[[20式5.56mm小銃|20式小銃]]、[[ミニミ軽機関銃|MINIMI軽機関銃]]。89式5.56mm普通弾として国産化されている。
* {{RUS}} - [[AK-101]], AK-102, AK-201, AK-202, [[AK-12|AK-19]]
* {{KOR}} - 大宇 [[K2 (ライフル)|K2]]、[[K3 (分隊支援火器)|K3]]、DAR21、[[K11複合型小銃|K11]]
* {{ROC-TW}} - 第205兵站廠 [[65式歩槍|65式]]、[[91式歩槍|91式]]
* {{IND}} - [[INSAS小銃|INSAS]]
* {{ISR}} - IWI [[IMI ガリル|ガリル]]、[[IMI タボールAR21|タボール]]、[[IMI タボールAR21#X95.EF.BC.88MTAR-21.2F.E3.83.9E.E3.82.A4.E3.82.AF.E3.83.AD.E3.83.BB.E3.82.BF.E3.83.9C.E3.83.BC.E3.83.AB.EF.BC.89|X95]]、[[IMI ネゲヴ|ネゲヴ]]
* {{SGP}} - STエンジニアリング SAR80([[:en:SAR-80|en]])、SR88([[:en:SR-88|en]])、[[SAR21]]、[[CIS ウルティマックス100軽機関銃|ウルティマックス100]]
* {{RSA}} - ベクター R4、[[ベクター CR21|CR21]]
* {{IRN}} - DIO [[KH2002 "Khaybar"|KH2002カイバー]]、[[CQ 311|S-5.56]]
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